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たかが紙切れ一枚、されど紙切れ一枚。

-What is your purpose of your visit?
- Holiday!
空港でのこんなやりとりから全てをメモし、練習を繰り返してむかった一人旅。
当時大学生だった私は夏休みに何かしたくて、教授に勧められるがままにフランスへ行った。もちろんフランス語はおろか、英語すら話せなかった。
そんな私でも公共交通機関使って、観光地でチケット買って、スーパーで日用品買って、ご飯食べて、無事に日本に帰ってきた。途中泊まっていたホテルでネズミに襲われて泣きながら高い通話料払って日本にいる母に電話したこともあった。
いま思いかえすと、私は日本に帰ってきてからすこしだけ強くなったと思う。

今回見た作品は『ターミナル』。舞台はニューヨークに位置する空港。
自国の内乱によってパスポートが無効になってしまい、アメリカにも入国できず、本国にも帰ることができなくなった主人公ビクター・ナボルスキー。
彼の9ヶ月の滞在にも及ぶ生きにくための戦いと、恋と、アメリカに意地でも入国しなければならない、ある理由。

同じ大学に通っていた私の彼は、教授がとにかくスティーヴン・スピルバーグ監督の作品が好きだったようで、授業中散々解説を聞きまくっていたらしい。
自ずと彼自身もスピルバーグ作品を好きになり、この作品はずっと勧められていた(1回流し見したこともあった気がするが、よく覚えていない)。

空港はそれだけで一つの国のようだ

トム・ハンクス演じるビクター・ナボルスキー。
完全独学の英語学習、空港の仕組みを利用した小遣い稼ぎ、そして工事現場の技術も備わっていたために、彼は空港で自分が生き抜くために子供のようにどんどん成長して、見事に自分の生活拠点を作り上げた。
かなり天然無垢な部分もあったが、きっと彼なら例えそこが無人島でも猛獣たちを従えながら生きていけるだろう。

スタンリー・トゥッチが演じた国境警備局主任フランク・ディクソン、彼の全く英語が話せない人に対して、それを全く理解しない英語ネイティブの人たちの態度はすっごくリアルで、かつて幾度と超えた国境間での緊張を思い出した。
ゆっくり話してくれても、私たち、そもそも単語がわかんないんですよね。

何よりもこの空港の一番の魅力はその登場人物たち。
それぞれの事情があってこの空港に流れ着き、生活するようにこの場所で仕事する登場人物たちは国の玄関口に新たな文化を作り出していた。

日本で有名なドキュメントバラエティ「YOUは何しに日本へ?」でも、取材の場所は"空港"。
空港には色んな事情を抱えた人たちが偶然にも同じ場所に居合わせ、時間を過ごし、それぞれの目的地へと旅立っていくのか。
それにしても彼ら、曲者すぎた。彼らみたいな同僚がいたら毎日の仕事も楽しいと思う。

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あきらめずに粘る姿勢

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執念すら感じる"待つ"という行動の先には愛した父との約束をはたし、愛する自国へ帰るためという彼のブレない信念がみえた。

一度は恋に落ちたアメリアとも結ばれなかった理由には、彼の想う帰る(待つ)場所が、お互いに本当は違うことがわかっていたからだろうとも思う。

【執念・しゅうねん】
ある一つのことを深く思いつめる心。執着してそこから動かない心。
<goo国語辞典>

空港には独特なルールが存在していて日々やってくる人たちを捌いている。
私たちは目的なくして国境を超えられない。


ターミナル
監督:スティーヴン・スピルバーグ

クラコウジアからニューヨークの空港に着いたナボルスキーは、祖国で起きたクーデターのためパスポートが無効になり入国を拒否される。彼にはどうしてもニューヨークで果たさなければならないある誓いがあった。
彼は入国を目指して空港内に住み着き、さまざまな人々と出会っていく。