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ベネディクト・カンバーバッチがプロデュース! 「モーリタニアン黒塗りの記録」グアンタナモの闇を伝える。

今週観に行った映画を紹介したいと思います。現在全国の映画館で公開中です。
「モーリタニアン 黒塗りの記録」(英、米 2021年)
イギリス🇬🇧のドラマ「シャーロック」の主人公で有名なベネディクト・カンバーバッチがプロデュースかつ助演をしている作品です。


今年は2001年9月11日の米同時多発テロから20年でした。
この映画は、このテロの直後故郷アフリカモーリタニアから、米同時多発テロ事件の首謀者の一人と見なされ、グアンタナモ収容所に連行され、14年あまり収容されたアラブ系青年の手記をベースに映画化されたのです。


グアンタナモ収容所とは、アメリカがテロリストの容疑者を収容する目的で設けられた施設。彼らに対して司法手続きなしでの厳しい尋問や拷問、長期拘禁を行なっています。人権侵害として国際社会から非難されています。
現在も閉鎖はされておらず、たくさんの人々が収容中。

映画のあらすじ
主人公の名前は、モハメドゥ・ウルド・スラヒ。モーリタニアの遊牧民の家系に生まれ、奨学金を得てドイツに留学していました。彼はかつて、ソ連侵攻時、アフガニスタンでアルカイダの戦闘訓練に参加したことがありました。

2005年、ニューメキシコ州アルバカーキ在住の人権派弁護士ナンシー・ホランダーはスラヒが一度も裁判が開かれることなくグアンタナモに拘禁されていることを知り、無償奉仕活動として弁護をかってでます。

時を同じくして、米軍法務官スチュアート・カウチ中佐は、政府が死刑第一号にと望むスラヒの起訴を命じられます。

ナンシーは助手のテリーと共にスラヒに会いにグアンタナモに向かいます。スラヒに面会し、スラヒのユーモアと人間味に溢れた人柄に惹かれます。
そして、拘束されてからのすべてを手記に書くよう説得します。次々と届く手記を読むと同時に、政府に軍の調査資料を請求しますが、すべて黒く塗りつぶされていました。

起訴する側のスチュアート中佐のもとに届く資料もなぜか不完全なものでした。これでは証拠が不十分で起訴できないと中佐も機密扱いの資料の提供を上層部に求めます。

そして弁護側、検察側双方に明らかになった真実とは、70日間にわたるスラヒへの拷問の記録でした。暴行、水責め、睡眠剥奪、女性尋問官による強制性交、母を暴行するとの脅迫などおぞましいものでした。・・・


2008年、黒く塗り潰された資料のさらなる情報公開をワシントンの連邦地方裁判所に請求したナンシーたちは、「9.11を忘れるな」と叫ぶ民衆に囲まれ危険を感じます。
3000人を殺した犯人の共犯者をなぜ助けるのか周囲からも冷たい眼で見られます。

でも、ナンシーは言います。
「有罪、無罪にかかわらず、誰にとっても、正当な理由なく拘束されることは人権侵害であり、すべての人に公正な裁判を受ける権利がある。その権利を守ることが、自分やあなたの権利を守ることにつながるのです。」
 


9月11日のテロの後、アメリカ社会は、怒り、恨み、恐怖などのために感情的になり、憲法が保障する手続きを無視して、アラブ系の容疑者を片端から連行してグアンタナモに送りました。
その数は少なくとも子ども15人を含む約780人。そのほとんどが証拠もなく無実の冤罪でした。

映画の中で、情報公開した資料が真っ黒に塗りつぶされているシーンがあるのですが、これは日本の入管施設で最近起きたウイシュマさんの事件の時と同じです。
そもそも、ウイシュマさんも、裁判所の関与なく、無期限に拘束され、医療を受けさせてもらえないという虐待を受け亡くなってしまいました。


誰かの人権が侵害されているときはわたしたちの人権も侵害されているのです。

 ナンシー役のジョディー・フォスターからのメッセージ
「この作品は、世界の人々に人間の精神の適応力を見せてくれる。私たちは、人間性でもって残酷さや非人道的行為と戦い、乗り越えていくことができる。剣を持ち出す必要はない。不正に対する最高の治療薬は公正な世界である。」
(映画のパンフレットより)
 
公正な世界を求めて声をあげることが、誰もが人として尊重される社会の実現へとつながります‼️🕊


主人公スラヒさんの手記はこちら。


今年出版されたのもあります。


執筆者、ゆこりん

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