【どうして】最近の松橋新潟に思う3つの事 【こうなった】
9月の第30節湘南戦以来、7戦2分5敗4得点16失点の17位、降格圏の一つ上。全く良い所が無いまま最後の最後で不本意な大一番を迎える事となりました。この間にクラブ史上初の3大タイトルが懸かったルヴァンカップを挟んでいたものの、トーナメント戦という仕様上、取り組み方もモチベーションも異なるコンペティションは例外として考えていいと思います。継続的な強さが問われるリーグ戦では散々たる戦績を残し続けて最終節にJ2降格の可能性を残してしまう事となりました。どうしてこうなった。
特に直近2試合の柏-G大阪戦ではそもそもの自分達の強みであるボール保持から殆ど有効打が生まれず、次第に試合の主導権すら失っていく不本意な内容・結果を記録してしまいました。そこで様々な意味を内包するFinalを前に、現状の新潟が抱える課題を自分なりに整理していこうと思います。
ビルドアップの選択肢
小島から球出しをスタートする、稲村/舞行龍がボールを持つ、パスコースを必死に探してるな…、そんな狭い所を選ぶの!?、奪われた!
ここ2試合を観戦した方からすると、上述したような流れは具体的なシーンを提示しなくとも簡単に想像できる筈です。松橋体制、更に遡るならアルベルト体制から続く新潟の強みであったビルドアップに対して明確に機能不全を強いられている、それが大きな壁となっていると認識しています。
それでは何処に問題を抱えているのか、それは決して一つではなく、一つの事象が幾つもの事象を連鎖して巻き起こしていると思っています。
分かりやすい所から話すと、先ずCBがボールを持つ・ボールを運んでもパスの出し所がありません。それも相手に消されている、明確に対策を打たれてしまったというより、自分達から選択肢を作れていないと見ています。
柏もガンバもそして浦和も、基本的には4-4-2からなるミドルブロックで構えた所からそれぞれのトリガーを踏んでハイプレスに移行する戦い方を敷いてきます。守備でも積極的に向かってくる相手とは違い、多少は楽に新潟がボールを持つ、特にGK-CBの選手達には選択肢を伺う時間が与えられる傾向にあります。
この2試合では稲村/舞行龍が務めているCBですが、彼らは基本的に相手2topの脇から運び出して、自分と殆ど同じレーンに立つハーフスペースの選手、ライン際で待つSB、背後を伺うFWと最低でも3択のパスコースが提示されている事が理想だと思っています。しかし、現状の新潟ではたった一つ、ライン際で待つSB位しか選択肢が用意されていません。
直近2試合でもそれぞれ相手のアプローチが若干違えど、ピッチ上から可視化される課題は共通していたと思います。
ガンバ戦の例を簡単に説明すると、秋山/星がそれぞれ相手FWにカバーシャドーで無効化されてビルドアップの選択肢になれず、そうなると鈴木徳真/ダワンは自分達側のライン間を警戒しておけばいいので最終ラインと協力してコンパクトな陣形を作る。そうなると新潟としてはライン間の選択肢も消されて、背後を覗いても以前よりアタッカーのアクションが少ない(=小野/元希コンビは相手DFの手前側を優先しがち)のでボールを逃がす手段にはなり得ない。稲村/舞行龍からすると「どうすればいいんだよ!」という状況が続いてしまいました。
そこで無理矢理ライン間に差し込もうとしてもCB-CHの包囲網に遭ってしまう、かえってボールロストから相手にカウンターを発動するきっかけを与える事となってしまいます。最近稲村がイマイチだな、パスが通らないなと思う方もいるかもしれませんが、それは決して本人の調子やスキルに大きな原因がある訳ではなく、失う確率の高い所に刺すしかないチームの未整備が大きな原因としてあると考えています。
(勿論以前よりコンディションが落ちたかなという節はあります)(ここまで使い続ける、しかもプロの世界でも一層重圧が懸かるシチュエーションを連続して経験しているので当たり前に調子落とすはず)
ビルドアップから前線まで時間の貯金を与えられない、しかも確率の高い選択を繰り返す事でボールロストの起因となり不用意にトランジションを発生させてしまう。良くない事が連鎖的に繋がってしまい、90分間のコントロールを失ってしまう。とにかくビルドアップをこの最終盤に強みに変えないと問題解決の糸口を辿る事ができません。
とはいえ51:43~、55:03~、79:41~など、ガンバ戦では上述した課題をクリアするかのように前進してラスト30mまで辿り着いたシーンがありましたし(そこだけでもDAZNで観てほしいです!)(言及した点とセットで「なぜボールが進んでいくのか」と考えてみると結構楽しいし要因が必ず詰まっています!)、柏戦後半でも同様の流れを創り出せていました。
大事なのはこれらを前半から見せていく事、ボール保持から試合のリズムを作っていく事だと思っています。疲労等で相手の事情が起因して上述したシーンに繋がった…というよりは自分達がやるべき事をやっていれば問題なくクリアできるはずです。
それに新潟のサッカーというのは先制点の行方によって大きくモメンタムが左右される物であり、特にビハインド側に回った際の立ち振る舞いには本当に苦労します。相手からすれば「やるべき事」が明確となり、重心を低くしてカウンターを伺っていればいいのだから。来週末の対戦相手だってそのような展開を大いに狙ってくる事でしょう。
勝ち点1だとか失点しない事だとか、他会場によって様々な状況が想定される最終戦ですが、結局は普段通りのサッカーを突き詰めていく事が一番望ましい筈です。これまでもボール保持を放棄した試合は殆どありませんし、それに新潟は守りに徹して守り切れるチームでは決してありません。相手FWにを簡単にドフリーにしてしまい気持ちよく頭を振らせてしまうチームに「この試合ではとにかく守備を固めます!」と言われても何の説得力もありません。先制点、更にはゲームの主導権を獲得すべく、今こそボール保持に焦点を当てて、勝ち点の可能性を高めるべくトレーニングに臨んでほしいと思います。
崩しの形が無い?
シュートは撃つけどGKを脅かすまでには至らない。ガンバ戦の公式記録を見るとシュートは計10本。しかし「こんなに撃ったっけ?」と違和感を覚えてしまう事実が現状を物語っています。
今季のデータでは1試合当たりのシュート数が10位、攻撃回数(ボールを保持してから奪われるorファウルやボールアウトで試合が止まるまでの間)が18位、ゴール数が13位、チャンス構築率(シュート数÷攻撃回数、保持の時間が長い=攻撃回数が少ないのでそりゃ高い)が5位となっています。可もなく不可もなくといった所でしょうか。
データを見ると案外悪くない印象を受けますが、直近2試合ではハイライトシーンを殆ど作り出せず、このチームでは再現性ある攻撃は不可能なのか?という疑念を抱いてしまいます。
(当然ビルドアップの機能不全とも関わってくる話ではありますが..)
再現性を求めると対策された際に手詰まりになってしまう。だからその場その場で個々の感覚を擦り合わせる、いわゆる即興でアイディアを出していく事が日本-Jリーグ内では是とされていると認識していますし、2018年に新潟が招聘した鈴木政一監督の下では実際にそういったサッカーを志して結果的に散ってしまいました。
過去に書いた通り、当時の国内最高級の選手達を揃えに揃えてようやく成り立たせた磐田黄金期のようなサッカーがそのまま新潟に適用できるかと言われれば答えはNo、不可能だと断言できます。
直近の2試合ではどうやって相手陣内まで辿り着くのかというビルドアップの課題に、相手を押し込んだ際に誰にどうやって足を振らせるのかとファイナルサードでの課題が重なった結果、「崩しの形がない」「アイディアに任せている」という声が聞こえてくるのかなと思います。
ただ、後者については新潟のみならずどのクラブも直面する永久的なテーマであって、視点を大きく広げればマンチェスターシティやアーセナルのようなメガクラブでさえ各種マネジメントにおいて試行錯誤を重ねた末にようやく成果が表れる程。特にシティは2022年夏にホーランドを獲得して、強大な武器から逆算する事で細かい最終設計に着手しています。このように自陣に籠る相手にはボールを供給する・される両方の選手に一定以上の質が担保されて、その上でようやく形の設計に着手できると認識しており、それもリソース面でリーグ内で優位に立てるチームでないと上述したような戦略を採れません。
リーグ最下位付近の人件費である新潟としては当然強力なアタッカーを揃えるのは難しいため、相手に守備を固められると「個」から逆算したフィニッシュへのルートを見つけるのは難しく、2022年~23年序盤の武器であったグループ単位での突破も鳴りを潜めており、そうなると相手を崩そうにも中々に難しいというのが現実だと思います。
とはいえゴール前でのディティールが甘いと思ってしまう節は確かにあります。例えばガンバ戦のあるシーンではビルドアップのミスを突いて速攻を仕掛けますが、相手が埋めきれなかったマイナス-バイタルエリアに誰も顔を出さず、結果的に安牌なクロスに終わり決定的な物になりきらなかった一幕がありました。
組み立てのミスを突いたり自分達の疑似カウンターが刺さったり、90分も過ごすと相手が守備ブロックを整えきれていない中でフィニッシュのチャンスが最低2,3回は巡り込んでくるものですが、そういった機会でオンザボール/オフザボール共に相手を脅かす事ができないのは以前から続く新潟の課題だと認識しています。特にクロスへの入り方や狙い所では他チームに比べると事細かに突き詰めていないのかなと思わせる節があり、「隙を突く」事を信条としている筈の松橋体制において、決してあってはならない事ではないでしょうか。
固められた中で崩しの形が見えないのは仕方のない事だと、ある程度は現実も見て割り切る必要がありますが、「固められた中で」という条件を外すのならそこにエクスキューズは存在しません。セットプレー/被セットプレーもそうですし、トレーニングの時間が有限に用意されている訳ではないにせよ、試合で訪れると想定できるシチュエーションに対してはチーム内で方法論を突き詰めてほしかったと思います。
勝負に拘るとは
最終節の浦和戦では勝ち点を1でも積めば残留決定、更に言うなら負けても残留決定となるケースも想定されます。浦和とのスコアがどうなるにせよ、12/8に与えられたミッションはJ1残留であり、それが揺らぐ事は絶対にあってはなりません。
とはいえ幾度も逃げ切りに失敗した/試合前コメントとは裏腹に情けないパフォーマンスで大一番を落とし続けた今季のリーグ戦だったり、体制発足時から観測される選手起用の傾向等を鑑みると、果たして松橋新潟が残留を達成してくれる事を心の底から信じられるかと言われると言葉に詰まってしまいます。
松橋さんにはよく「勝負に拘れない」「選手やチーム(≠クラブ)の未来を優先する」といった趣旨の指摘を度々目にする事があり、個人的にもそういった印象は拭えません。
ただ、今季をよく振り返ってみると淡々と落とし続けた試合がある一方で、17節町田戦、26節京都戦、更に遡ると昨季33節マリノス戦など、スカウティングを徹底してゲームプランに落とし込む事で最終的に勝ち点獲得を遂行した実績も思い浮かべる事ができます。
結局はそういった相手に合わせる姿勢が可視化されるかされにくいかで勝負に拘っているか否かの印象が決定されると思っていて、上述した試合では枕詞のようにスタイルを表現できる程度には相手の特徴がはっきりしていて、そこに合わせるプランを遂行すれば自ずと「勝つためにしっかり練習してきたな!」と思わせるに値するパフォーマンスだと印象付けられるのだと思います。
直近の対戦相手である柏-ガンバは攻撃や守備にそれぞれ大きな特徴を持つというより比較的攻守にニュートラルに戦うチームであって、そうなると新潟も極端に針を振るよりは普段通りの姿勢を保ってその上で相手を上回る工夫をピッチで表現する、その為の準備を聖篭で積み上げる必要があります。
話をややこしくしているのは松橋さんも準備段階から実直に取り組んでいる事。
様々な理由があると思いますが、「久しぶりにやった」という星の言葉を正面から受け止めるなら現状で足りていない箇所だと認識しているから取り組んだという事であって、柏戦の内容とガンバ戦への想定を踏まえると確かにビルドアップの向上に着手するのは納得感があります。
しかし今回言及した通り、まるで課題が改善されていない姿が11月最終日のビッグスワンにありました。監督以下スタッフ陣に修正能力が無いというより、そもそも現状の問題点をどう解釈しているのかなと疑問に思ってしまいます。
そんな事から松橋新潟に対しては当然勝負に拘って勝ち点獲得に全力を尽くすけど、肝心のその手段と原因の選定に何かしらの問題を抱えているのではないか?と解釈しています。負ける事を許さない人物である事は就任当初から理解しているし、常人では届かないような屈強なメンタリティの持ち主でもあります。だからといって選手達も理想通りに勝っていけるかはまた別問題で、姿勢は信頼するけど勝利に導くための手腕には懐疑的な目線を持たざるを得ないというのが率直な想いです。
ただ、最終戦はいよいよどんな言い訳も許されません。最後に残る結果が全てです。現状の選手起用,ゲームプランでは機能不全に陥る箇所が残っており、それを野放しに、或いは当日の成功に確信を持てないまま埼玉スタジアムに乗り込む事は非常に危険だと思います。
それでもこれまで採用し続けた方法論を信じて託すのか、確実に計算できる選択肢を抜擢するのか、新潟の指揮官として非常に重大な決断を迫られています。姿勢だけではなく、結果として勝負に拘ったと言い切れるのかどうか。新潟をJ1に残す為の采配に期待しています。