【ボールを歓迎すること】2025 J1 #3 鹿島アントラーズ×アルビレックス新潟

今回は図解無し+(当社比で)短文となっております。

目次
ハイプレス
対4-4-2、パスの出し入れ
和輝から組み立てる時

ハイプレス

先ずは全体の陣形を整える。これによって全体で前から行くための事前準備を済ませる事、かつ相手ボランチ(真ん中)へのパスコースを塞いだ事を確認して、FWのスイッチから片側のサイドに追い込んでいく新潟のハイプレス。

ただ、今節は(特に前半)元希-矢村の前線2枚が若干急ぎすぎて、全体の準備ができていないのに2人だけ先に前から行ってしまう。そうなると相手ボランチに対して宮本-星の追従が間に合わず、簡単に真ん中を通されてプレス回避されるシーンが目立ちました。

吉本ヘッドコーチが中心となって構築された新潟の守備組織。その代表例となるハイプレスでは何でもかんでも前から行けば良い訳ではなくて、寧ろ奪いにいく前の準備次第でその後の景色が良い方にも悪い方にも転びます。開幕戦、そして清水戦では問題なく観れていたポイントでしたが、その一方で今節ではあれれ?と思うシーンが散見されて少し気になったのでここで取り上げました。

ただ、全体的に守備時のアプローチは問題なかったと認識しています。1失点目も流れの中からの被弾とはいえ、形自体を防ぐよりは濃野に対して入ってきたボールの処理に目を向けるべきかなと思いました。横幅を広く使ってくる相手に対して、一時的に最終ラインを5枚気味にして守るシーンは試合中の必ず何処かで訪れますからね。

奥村としては最低限のリスクマネジメントとして外側にに弾き返したかった。痛い授業料ですが、カシマで完済できたのだと前向きに捉えます。

(被セットプレーの対応は要修正ですね)


対4-4-2、ボールの出し入れ

守備時4-4-2の相手に対しては比較的出口を作りやすい物だと認識しています。図解が無いと分かりにくいと思いますが、例えば引用したポストのようなイメージ。

動画なら下記のようなシーン。

このシーンでは鹿島SHを務めた松村の意識を稲村が引き付ける事で、大外の堀米がフリー気味(広義的には安西に対して2vs1)となる状況を作ることができました。

このように、FWの脇から運び出すことでSHの意識を引きつける、最終的に大外でフリー(SBに対して2vs1)を作る仕組みが対4-4-2の一つの有効策となります。

紹介したシーン(後者は未遂に終わったけど)、そして得点シーンに繋がった太田の裏抜けも大体似たような文脈が起因して発生しています。

樹森体制では「背後」がビルドアップの出口として強調されていますが、その背後を取りやすいのは相手が最も警戒する中央ではなくサイドのエリア。そういった前提を考えると、サイドで優位性を取ることを優先してボールを進めていきたいのかなと思います(ハーフタイム中の樹森監督のコーチングを踏まえると尚更そう思う)

こういったシーンを意図的に作り出すために重要となるのがボランチ↔︎CBのパスラインによってプレスのターゲットを分散させること。DF同士のパス交換を続けると外→外の展開が続いてしまい、相手からすると何処かで狙いを絞って勢いよくプレスに向かうことが可能となります。

樹森体制では新たなエッセンスを取り入れている最中ですが、新潟としてはこれまでに引き続きパスを回しながら相手のマインドを振り回す作業も丁寧に行っていくべきだと思います。外→外の繋がりに「中」を織り交ぜる、こうして相手の矢印を分散させながら最終的にフリーにしたい選手を解放する。実際に太田(モバゼコ)からも近いニュアンスの言質がとれています。

清水戦で良いなと思ったシーンもCBとボランチの間でボールを繋ぎながら、エスパルスのFWにプレスの的を絞らせず稲村をオープンに運ばせてチャンスメーカーがフリーになるようにボールを届けられました。

そういったパスルートを構築するために、ボランチには怖がらずボールに関わり続けること・それもプレッシャーから逃げない位置(基本的に相手FW-MF間)でプレーすることを意識してほしいです。

そんなこんなを考えると、ビルドアップ中に全体で変形する際はSBを降ろして3枚を作る、それに伴ってボランチには高い位置でプレーしてもらう方が色々と都合良いんじゃないかな?と思っています。あとは新井泰貴をスタートから観てみたいな。今こそ彼が必要でしょ。


和輝から組み立てる時

GKから開始するビルドアップが中々上手くいきません。

和輝に対して良くない意味で思うのは、プレッシャーを掛けられた際に相手の出す矢印そのままにボールを離してしまうこと。(少し要求が高すぎるかもしれませんが)カシマでいうと56:18〜のシーンとかは気になりました。

体の向きで敢えて相手にパスコースを予測させることで、その矢印の逆側に出して味方をプレッシャーから解放させたり、出し所を絞らせないボールの置き所で「どっちに出すのか?」と相手を迷わせたり。

こういった工夫が無いので相手が誘導する方向にそのまま出すしかない、良くも悪くもプレーが正直すぎるのかなと思いました。これでは味方にただボールを渡すだけになって、そこに時間とスペースを乗せることができませんね。これにより、受け手となる機会が多かった稲村はレオセアラが出す強烈な矢印から逃れられず、可能性の低い選択肢に尽く行きついてしまいました。

相手が前から来る際、GKは11人vs10人の優位性を作るべく「最後尾のフィールドプレイヤー」としてボールに触れる機会が必然的に多くなるポジションです。

ボールを大切にする新潟のプレースタイルを体現する上で、新潟のGKには「プレスを怖がらずにボールを扱える・要求できる」「味方に時間とスペースを配る」ような側面をどうしても求めたくなりますし、そこに物足りなさを感じる中で田代の名前が挙がってくるのも自然な流れだと思います。次節の人選には結構注目ですね。

和輝も絡めながらの(故に相手が前から来ている)ビルドアップでは62:27〜のシーンも気になりました。

GK-CBのパス交換で優磨-レオセアラのプレスを超えたい中、ボールホルダーの稲村にせっかく時間が生まれたのにボランチが受け手となれるポジションに居ないのでパスコースが生まれず、結局やり直して藤田が長い球を蹴るハメになりました。レオセアラの意識は完全に稲村に向いていたので宮本としては動き次第でフリーでボールを引き取れる場面。なんとも勿体無かった。

今節は稲村や和輝が真ん中に差し込んだショートパスを奪われて幾度もあわやという機会が生まれてしまいました。勿論よく認知せずに出した彼らの責任もありますが、それと同等くらいに真ん中のエリアでボールを引き受ける意識が希薄だったボランチにも不満を抱いてしまうのが正直なところです。

ボランチには相手FW-MF間で立つ・プレスを牽制してCBに時間を作るだけでなく、自らが受け手となる意識ももう少し強めて欲しいですね。すぐ降りるけど秋山なんかは比較的この意識が強い選手だと思ってます。相手FWのカバーシャドーが緩いと見るやパスコースに顔を出してくれる。

彼らに繋ぐだけで相手の1stラインを超えて手前から繋いでいけますし、仮に相手ボランチが新潟ボランチの所までケアに走ったら、我々としてはライン間が空いてくる訳です。そこに一つ飛ばしで楔を打ち込めばターン・レイオフなど様々ある手段から前向きの選手を作って敵陣に侵入できることでしょう。

ここまで書くと「所詮机上の空論だろ!」とツッコミが入りそうですが、いずれも前監督の下で実践してきた事なんだから、監督が変わろうとそこは継続して欲しいし実際に出来ると思います。

何よりFWと中盤以下のパスネットワークが殆ど開通していないのは何とも寂しい事実。ボランチは直接的・間接的を問わずに前と後ろを繋いでいこう。

おわりに


全体的にボールを受ける事を歓迎する意識がもっと強く働いてもいいのではと思いました。何気ないように見えるショートパスが相手を動かすきっかけになったり、太田の言う通り奪いに行く意欲を相手から削っていく事にも繋がるわけです。

新潟らしくボールと共にプレーする中で、ほんの少しの意識だったり或いは人を変えるだけで現状は変わってくる物だと認識しています。
鹿島戦を改めて観直すと「まだまだこれからだな」という感想に行き着きましたが、その「これから」が出来る限り短い期間で済むように、今週末のホーム開幕戦では変わった姿を見せてほしいなと思います。頑張ろう新潟。

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