■新田(仮名)くんのはなし episode 2
10年程前。
僕は、深い眠りから目覚める。天井が高い?どこ、ここ?ビジネスホテル?昨日の出来事を思い出そうとするが、頭が猛烈に痛い。完全な二日酔いだ。気持ち悪い。
クラクラしながら室内を見渡す。広すぎる。隣にベッドもある。裸の人が寝てる…
サイドテーブルのメガネをとり、もう一度隣のベッドを見る。裸の人は、女性ではなく、男性だった。やれやれ。また、おまえか…(引)
会社の後輩、新田(仮名)くんが裸で眠っている。案の定、以上だ。泥酔→訳の分からないビジネスホテルで目覚める→隣に裸の新田くん。このパターンは、3度目で、全く驚きはない。
確かに、昨日、彼と呑んでいた。いつもと違ったのは、そこに我が社の社長♀もいたことだ。そう、青山で3人で浴びるように酒を呑んでいたのだ。3人で楽しく呑んでいたのだが、途中、新田くんは泥酔し、社長の目の前で寝出した(引) あり得ねー(引)
…そこからの記憶がない。どこだ、ここ?青山??
「新田くん!」取り敢えず、彼を起こしてみる。
「あ、羊さん…おはよう…ございます…頭、痛…」
「おはよ。頭、痛いよね…念の為聞くんだけど、ここどこだか分かる?」
「分からないす。」
彼は起き上がり、窓を開けて辺りを見渡す。
「どこでしょう?さっぱり分からないですね…」
僕はフロントに電話しホテルの所在地を尋ねた。赤坂だった。
「俺ら、昨日、青山で呑んでたよね?何で赤坂にいるんだろ?二軒目行ったっけ?」
「分からないす…覚えてるのは、青山の店を出て、気持ち悪くて、歩きながらゲロを吐いて自分のまっさらな靴にかかったことぐらいです。」歩きながらゲロを吐けるのか…斬新だな(引)
そういえば、店を出て3人で歩いていた気がする。大通りに出て、社長をタクシーに乗せ、その後、僕らもタクシーに乗ったんだ。たぶん。で、何故、赤坂なんだ??
「新田くんさ、今までに赤坂のビジネスホテルに泊まったことある?」
「ないですね。」
「だよね。俺もない。何でわざわざ赤坂なんだろ?」
「あれじゃないですか。社長が手配してくれたとか?」
「お、確かに!あり得る!てか、それだ!赤坂は、社長の庭だし。」
昨日の全容が明らかになり、少しは気が楽になった。
「あ、そういや、新田くん。昨日、社長の目の前で寝てたよ。あれは、あかんで。」
「え。マジすか…やばいな…」、お、珍しく反省してる?
「じゃ、シャワー浴びてきます!」と新田くんは、颯爽とバスルームに消えていった。全く懲りてない模様。メンタル強いな。
新田くんがシャワーを浴びている間に、僕は、社長に昨日のお礼の電話をしておこうと考えた。時刻は9時になろうとしていたが、社長は低血圧で朝が極端に弱い。起きてるだろうか…社長の携帯にかけてみる。プルル…
「はい。南(仮名)です。」繋がった。
「おはようございます。朝早くすみません、羊です。少し、お時間宜しいでしょうか。」
「んー。どしたー?」
「昨日は、有難うございました。なんか赤坂のホテルまで手配して頂いたようで…すみません。」
「ん?してないよ。」
「え。てっきり南さんが手配してくれたのかと…何で、僕、赤坂に居るんですかね?」
「知らないわよ。」
「ですよね…あ、昨日、食事中に新田くん寝てしまって、すみませんでした。」
「あんたも寝てたわよ。」
え。