【#89】愛知県・東栄町長選挙&町議会議員選挙レポート(2023 4.23)
私が最初にこの町を取材したのは、2021年8月。
町内の医療施設で人工透析の中止などの事態に町民グループがリコール署名を集め、成立するも町長が辞職→出直し選挙になったコトを取り上げた全国ニュースを見たのがキッカケでした。
実際に取材すると、山間部の小さな自治体を分断する異常な選挙模様に驚き、前職(辞職して出直しのため。 要はリコール喰らった現職町長)が当選となった選挙を少しでも多くの人に知ってもらいたいと魂込めて記事を書き、今でも私の中で思い入れの深い記事となっています。
統一地方選の取材範囲を長野県内に絞っていて他県の様子を把握していなかったせいでもありますが、2021年に町長選だったので次は2025年だと思い込んでしまい、実際は出直し選挙なので任期は変わらず4月に町長選が行われていると知ったのは投票日前日の14時。 行ったところで数時間しか取材出来ないのは分かっていましたが、それでも一昨年の出直し選挙を取材した者として、この選挙を見届けるのは「使命」であり「義務」だと考え、普段使わない高速をぶっ飛ばして16時半から取材を敢行しました。
やはり、行って良かったです。 この町の選挙は更に酷く、異常なものになっていました。
より多くの方に見ていただき、こんなにも異常な選挙が行われている現状を知ってほしいと判断し、無料でレポートをお届けします。 是非読んでいただいてこの選挙を知っていただき、そしてより多くの人に拡散して下さい。 合わせて、
2021年の出直し選挙レポートを、5/25~5/31の一週間、無料公開いたしますので、こちらもこの機会に読んでいただきたく。 宜しくお願いします。
◆概要
面積:123.38㎢(愛知県 第11/54位)
人口:2,835人(愛知県 第53/54位)※2023年4月30日現在
人口密度:22.9人/㎢(愛知県 第52/54位)※2023年4月30日現在
平均年齢:59.0歳(愛知県 第53/54位)※2018年9月1日現在
衆議院は愛知14区に属し、今枝宗一郎(自民 4期)氏を選出
◆町長選・立候補者
4選を目指す現職に新人2名が挑む選挙。 町長選挙に3名以上の候補が立候補したのは20年ぶりとなります。
◆前回(2019年)の選挙結果
4年前の町長選は、2015年の町長選を争った2名が現職と挑戦者の立場を替えて再選。 現職が前職を返り討ちにしました。
◆出直し選挙(2021年)の選挙結果
リコール署名成立を受けて町長が辞職し行われた出直し選挙も同じ顔ぶれで三度目の一騎打ちとなり、票差は詰まったものの前職が再選されました。
このように、現職は選挙に強い。 その強さの秘密を御紹介していきましょう。
◆現職町長、強さの秘密
①2期8年の実績
現職は前町長時代(2011~2015)に副町長に任命されたものの辞職し “飼い主の手を噛む” 形で立候補。 前職を「箱モノ行政だ!」と批判。 財政改革を打ち出したコトが多くの町民に支持され当選しました。 これにより財政が健全化された結果なのでしょうか、2015年に3,466人いた人口はこの8年で631人減と、約2割減少しており、愛知県の市町村別で見た2015~2020年の人口増減率では最も人口が減った自治体となっています。
②選挙に勝つための公約づくり
先述の通り2015年に財政改革を訴えて初当選した現職ですが、その後、保育園建設に5億円、防災行政無線のデジタル化(戸別受信器を原則廃止し、屋外スピーカーとスマホへの連絡に移行)に6億円、診療所と保健福祉センターなどが入る複合施設「東栄ひだまりプラザ」に12億円と大型事業を連発。
いずれも必要な施設なのでしょうが、「財政改革」とは程遠い政策を推進。 その結果、地方債は2017年で約33億円だったのが2021年には約40億円と順調に借金を増やしており、今後は町役場の建て替えなども行われるとの話もあるようです。 ちなみに2023年度の東栄町当初予算額は約34億円。 うち町税が約3億円となっています。
また、かつて東三河地域の医療を担っていた東栄病院が利用者減による収入減で「診療所」に移行する計画が上がる中で行われた2019年の町長選では「(診療所に移行しても)病院機能は維持する」と公約に掲げ当選しますが、その後、診療所化に伴い病床を40床から19床に削減し救急診察も廃止。 公約とは真逆の対応をとっていきます。
更に2020年、冒頭に書いた通り1987年から続いていた東栄医療センター内の人工透析病床を中止し、それに反対する町民がリコール署名を集め始めたのですが、その際、
全く関係の無い愛知県知事リコール署名偽造問題を引用したチラシを町内に配布し「署名すると危険(かも?)」という “印象操作” を展開。 その甲斐なくリコール署名が集まり2021年の出直し選挙に繋がりますが、その際も、
新診療所に移行しても「診療所は24時間・365日対応」と断言。 更に新施設で人工透析を再開するコトを「検討する」と掲げます。
当時のHPにもこのように「再開に努力」と掲げていましたが、当選後に人工透析が再開されるコトは無く、更に入院19床も廃止。 公約で「24時間・365日対応」と掲げていた医療体制も診療所は土日休診となっており、公約は果たされていないように見えますが、「努力する」「検討する」というエクスキューズが付いているので「検討して努力したけど、断念した」というコトになるのでしょう。
ただ、ここまで “公約のちゃぶ台返し” が続いているにもかかわらず毎度毎度騙されている町民が一定数いるのも事実で、そこは有権者が学習しなければならない点だとも言えます。
③徹底した多数派工作
2021年の出直し選挙の際、「リコール運動は共産党町議が先導し・・・」という言葉で953人もの署名者を糾弾。 人口3千人にも満たない町を “敵” と “味方” に分けて選挙戦を展開します。 更に、
個人演説会の際には対立候補を支援する町民の方をわざわざ見て「(私のコトを)信用されないのでしょうか。 哀しい想いでいっぱいです」と言い自身の支持者の同情をかいつつ反町長派の町民を晒すという荒業を展開。 これにより「町長に逆らってはいけない」というムードを作り出すコトに成功したからか、リコールを喰らったにもかかわらず出直し選挙に当選となったのです。
このように、盤石の強さを誇る現職。 これを崩すのは容易ではなさそうです。 果たしてどのような選挙戦が展開されたのか、見ていきましょう。
※なお、東栄町は選挙公報を出さない自治体のため、皆様に提供する資料が少ない旨、御了承いただきたく。 「配布する人員が足りないから」という話も聞きましたが、そーいう問題じゃねーだろー!、と。 選挙公報は最も公平に候補者の訴えを有権者に示すコトができるものなのだから、職員は徹夜してでも配りやがれ!、と私は思いますが・・・
◆山本 典式(やまもと のりじ)候補
山本候補は元々町職員として役場に入り、2002年から10年間副町長を務めました。 その後、町議を2期8年務めましたが、今回町長選に立候補しています。
詳しくは町議選の部分で触れますが、定数8に対して “町長派” は6人と、ここでも多数派を形成し町政を運営。 町長、町政に異を唱える町議は山本候補を含む2人と少数の中ですが、敢えて町議から離れて町長選に出馬したのです。
選挙カーで事務所から出発直前の山本候補をキャッチし取材。 演説の予定が迫っていたため本人にはあまり話を伺うコトは出来ませんでしたが、町議時代の2期8年は現職町政と丸かぶり。 その間、医療体制が縮小し人口も減少、そして町民が分断されてきた様を見てきて「今、町民がひとつにならないと東栄町は消えてしまう」と語り、強い危機感をもって立候補したコトが伝わりました。
演説に向かった山本候補を見送り、追いかけようと思ったところ、事務所の留守番をしていたスタッフの方に話しかけられ、コチラの話も聞いてみようと着座し向き合ったら、そこから1時間にわたり東栄町の様々な話を聞き、
と、時に涙を浮かべながら私に訴えるスタッフの姿は胸に来るものがありました(とはいえその方も、出直し選挙直後に現職が「人工透析再開に努力する」とコメントした時は「リコール運動の成果だ!」と “ぬか喜び” し、結局騙されたようですが・・・)。
人工透析の再開、給食費や保育料の無償化などを訴える山本候補。 それは当然必要なコトで、給食無償化なら年間433万円で出来るそうですが、如何せん前述の通り町税が約3億円の東栄町では町税の1%超にあたる予算になるので必ずしも容易だとは言えません。 また、箱モノ行政の転換等による財政改革や予算の組み替えによって公約を実現する訴えているようですが、組み替えても結局地方債が更に膨れ上がるコトが想像でき、掲げた公約が達成できるかは難しそうに見えます。 ただ、それでも方向性は間違っていないし何より、町民を分断し続ける現職を替えるコトこそが東栄町にとって最も必要であるため、町の未来のために今度こそ勝たなければなりません。
◆八幡 久夫(やわた ひさお)候補
八幡候補は町内で「食事茶屋 作太郎」を営み、2019年からは日帰り温泉施設に併設された道の駅的施設「ふれあい交流館」内に移転して営業する一方、8年前にNPO法人「北設楽福祉支援センター」を設立し、高齢者を雇用してのしいたけ栽培や配食サービス、買い物支援などで高齢者を支援してきました。 今回、従業員や顧客からの声を受けて立候補を決意したようです。
選挙カーで走っているところを先回りして声をかけ取材。 町長になって最も取り組みたい政策として「ドクターカー導入による訪問医療の実現」を挙げました。 現在「ひだまりプラザ」内の診療所へのアクセスは(自家用車を除けば)町営バスが主な手段となっています。
隣町の設楽町・豊根村を結ぶ形で運行されており予約バスのシステムもあるようですが、結局は診療所に「来てもらう」という形が基本で、高齢者などの移動もままならない方にとっては大きな負担です。 現職が出直し選挙で訴えていた「訪問診療」が当然の如く実現していない状況下で、高齢者支援に携わってきた八幡候補は「ドクターカー」という形で訪問診療を実現させたいと訴えました。
東栄町長選に “第三の候補” が出ているコトを知った時、私が真っ先に思ったのは「これ、現職の多数派工作じゃねーの?」でした。 実際、2021年のリコールに全く関わっていなかったという八幡候補が突然町長選に絡んできたコトに対する疑問の声を町内で聞きました(裏どりできていないので詳細は書きませんが)。 ただ、現職は町役場職員から副町長を経て町長になり、山本候補も前町議。 更に尾林前町長も元町議で、その前の町長は2011年の町長選に敗れたあと2015年になんと町議に当選し2期務めました(今回の町議選には出馬せず)。
上記リンク先(演説部分から見られるように頭出ししています)から公開討論会の模様が見られますが、原稿ガン見で話し「〇✖討論」で質問に対し『〇』と『✖』の両方を掲げ質問から逃げる現職と、同じく原稿ガン見で制限時間を守れない場面が有った山本候補に対し、原稿を見ずに顔を観衆に向け自らの言葉で語る八幡候補を見て、東栄町衰退の原因は、こういった「町議」「役場職員」といった方が長年に渡りトップを務めてきて思考が硬直化したコトも一因ではないかと思えてきました。
現職によって町が二分される中、その構造自体に疑問を持つ人が登場しても不思議ではなく、何でもかんでも「民間の・・・」というつもりはないですが、行政出身ではない “新しい血” をトップから導入するコトもアリだなと私は考えます。 ただしそれが八幡候補なのかどうかは分かりかねますが・・・
◆町長選・選挙結果
相変わらず投票率が高い東栄町。 2021年の出直し町長選からは減らしたものの2019年のダブル選挙からはプラスに転じた中、現職がいつもと変わらぬ票をキープし勝利。 落選2候補の票を足しても届かないため「圧勝」といって良いでしょう。
それでは、今回現職はどのように戦ったのか、見ていきましょうか。
◆現職の戦い(2023Ver)
「やりとげます!! 未来につなぐ責任のために」という言葉を掲げた今回。 そもそも何をやりとげるのかが意味不明ですがポスターに載せられる情報なんてそんなもの。 公約を無理矢理ポスターにギュウギュウ積めで載せる候補は大体「アレ」な人なので、このぐらいが丁度イイです。 それを補う役目を果たすのが選挙公報なのですが、先述の通りこの町は選挙公報を作らない・・・ それは現職になってからという話でも無いようですが、他自治体が出来てるコトを出来ないってのはその時点で「無能」と言われても仕方ありません。
公約もイロイロ掲げていたようですが、過去の実績から見てどーせ実現しないので取り上げる必要も有りません。 ただ、山本候補が「給食費の無償化」を掲げたコトを受けて当然の如く「無償化を検討する」と言い出したようです。 こちらもまた、今までと同様「検討する」というエクスキューズがついているので、これも実行しないでしょう。 これこそが現職の常套手段「選挙に勝つための公約」です。
また、東栄町には4月9日投開票の「愛知県議選・新城市及び北設楽郡選挙区」に共産党公認で立候補した浅尾大輔さんが住んでいるのですが、
画像を見ると確かに演説に適したスペースが有るとはいえ、わざわざ浅尾さん宅の向かいに町議候補と引退する町議に、現職の「ボス」として知られる峰野修県議を伴って陣取り、浅尾さん宅に向かって街宣をするという嫌がらせを敢行。 現職は「住民訴訟、浅尾大輔さんが原告です」とマイクで晒すという、最近の右翼でもしないような卑劣な行為をしたようで、またしても町民を分断しやがりました。 ちなみに、ここでいう「住民訴訟」とは、
新診療所の建設にあたり、得られたハズの「国民健康保険調整交付金」1億4227万円の交付が受けられなかった結果、4,260万円の町負担が発生したのは現職の落ち度だとして現職個人を訴えた訴訟です。 コチラはその後、
今年の3月22日に国が愛知県経由で1億8264万5000円の交付を決定したため訴訟を取り下げています。 訴訟を起こして問題を指摘した成果だと言えますし、ちゃんと自治体が県や国と事前に話し合えばスムーズに交付されたであろうコトが証明され、やはり現職の落ち度だと言われても仕方ないでしょう。
話を町長選に戻しますが、更に念には念を入れてなのか、
町内18か所あった投票所の3分の1にあたる6か所を廃止して選挙に行きにくい環境を作り上げました。 中山間部の町でただでさえアクセスが悪い中でこんなコトするなんて、有り得ない。 勿論コレが選挙対策だけのためだとは思っていませんし、きっと予算や人員の関係で削減したのでしょうが、選挙公報の件も然りで民主主義の根幹を揺るがしかねないコトをしているという自覚が無いのでしょうね、きっと。
そんなこんなで4選を果たした現職。 さぞかし今回も「うまくいった」と思っているコトでしょう。 よかったですね(棒)
・・・それにしても東栄町は、いつまで現職の嘘にまみれた公約に付き合い続けるのでしょうか。 きっと投票した方には現職に投票した方が得られる “旨味” が大きいのかもしれませんが、何度も言いますが、その旨味は年間僅か3億円の町税から生み出されるものであり、そしてそれは町が衰退していくほどパイが小さくなっていきます。 今のままでは段々と食い扶持が減っていくというコトに気づくべきです。
再来年には三遠南信自動車道の東栄インターチェンジと鳳来峡インターチェンジ間が開通し、新東名自動車道と繋がるコトで観光や移住の大チャンスが訪れる、のですが、この調子だとそれもひとつ北のインターチェンジがある浜松市佐久間地区に奪われてしまうでしょうね。 そっちの方が大きい病院も有るし。
と、先に忠告しておきます。 言いましたからね、私は。
以上、町長選レポートでした。
続きまして町議選。 相変わらずの結果となった町長選と違い、コチラには変化の兆しが見えてきました。 お伝えしていきましょう。
◆町議選・立候補者(定数8/10名)
候補者の半数が新人、40代と30代が2名ずつの4名と、過去3回に渡って同じ顔ぶれで町長選が行われた町だとは思えないほどにフレッシュな顔ぶれとなり、どういう結果になろうとも改選後の景色が一変するコトは既に明らかです。
◆前回(2019年)の選挙結果(定数8/9名)
前回は新人候補が2名立候補した “定数プラス1” の選挙で、今回も立候補している村本候補が落選しました。 また、全候補が200票台でまとまっており接戦であったろうコトが伺えます。
この中で “反町長派” は今回の町長選で落選した山本議員と共産の浅尾議員の2名。 しかし “多勢に無勢” だったようで、残りの伊藤(真)議員、原田議員、伊藤(芳)議員、加藤議員、森田議員、伊藤(紋)議員が “町長派” だとされています。
が、今回、このうち3議員が引退したため、改選後は議会の景色がが大きく変わるのは確実と言えます。
◆公開討論会から各候補の主張を見る
先程も貼った公開討論会のリンクですが、町長選の討論会と同時に町議選候補の討論会(演説部分から見られるように頭出ししています)も行われており、そこで各候補の主張や「〇✖討論」がチェックできます。 選挙公報が無い中で貴重な資料です。 そこで各候補、特に新人をチェックして見ますれば、
岡田 浩二(おかだ こうじ)候補は「公共事業に頼らない街づくりを」という問いに『✖』、「デジタル技術を行政主導で」という問いに『〇』を出すなど行政のチカラを強く行使しようとする姿勢を見せる一方、「人口減少は止められない」という問いに “町長派” 候補が総じて『〇』を出す中で『✖』を出しており、バランスの取れた候補のように見えます。
佐々木 一也(ささき かずや)候補は全15問の問いに対し11問に『✖』を出し、とにかく「変えたい」キモチが先走っている候補に見えますが、Twitterを見ると自民党の今枝衆院議員と藤川政人参院議員から為書きが贈られており、行く行くは町長派になるのでは? と私には見えます。
桜井 孝憲(さくらい たかのり)候補は岡田候補同様バランスの取れた主張をしていますが、討論会の様子を見ると後述する “反町長派” と思われる新人候補と会話をする様子が見受けられ、議案によっては町長と意を異にする可能性が有るかも、と見えました。
西谷 賢治(にしたに けんじ)候補は2021年のリコール署名運動に携わったと公言し議会のあり方を変えたいと立候補した方なので、当選したら町長選に落選した山本氏の代わりに “反町長派” にまわるであろうと思われますが、人工透析中止に反対するリコール運動に参加したのに「人口減少は止められない」に『〇』を出したり、「地域の健康は向上している」という問いに『〇』を出したりと、肝心なところで反町長派の現職・浅尾候補と意見が異なっているのが気になります。
木村 圭太(きむら けいた)候補は15問中6問に「〇✖」を出すなど曖昧な姿勢が見受けられます。 それと個人のスピーチでは何故か感極まって涙声になるなど、結構な 「アレ」候補 に見えます。
QRコードから選挙ビラを見ると(メールアドレスが書かれているので載せるのは控えます。 気になる方は各自読み込んでください)、理念をアレコレこねくり返していますが具体的な公約や取り組みたい政策が見当たらず、ポスターのデザインも含めて「独立系候補」の域を出ない方だろうと私は捉えています。
以上を考慮し、全候補を私なりに色分けさせていただくと、
ではないかと私は見立てました。
それでは取材の模様をお届け、しますが、冒頭に書いた通りの限られた取材時間で町長選取材を優先した結果、取材できた候補は1名のみです。 ただ私が最もお会いしたかった候補であり、且つ活動や主張を事前に把握している唯一の候補だったため、それで充分でもありました。
◆浅尾 もと子(あさお もとこ)候補
浅尾候補は2016年に東栄町に移住し、2019年の町議選に共産党公認で立候補し初当選。 東栄町では16年ぶりの共産党町議が誕生しました。 今回「入院・透析の再開を!」と訴え2期目を目指します。
まず注目していただきたいのが、このポスター。 お気づきでしょうか、今回の統一地方選に出た多くの共産党候補ポスターに書かれていた「大軍拡・大増税にNO!」や「岸田政権にNO!」といった文言が見当たりません。 地方選挙においても国政と同様の主張をしてしまうコトを私は「共産しぐさ」と呼んでいますが、同候補のチラシを見ても国政についての記述は無く、主張の全てが東栄町に特化したもの。 「共産しぐさ」をする隙が無いほどに、この町には問題が山積しているのです。
浅尾候補は私が書いた2021年の出直し町長選の記事に気づいてくれたのか、私のTwitterをフォローしてくれていたおかげで浅尾候補の主張は事前に把握していました。 他の現職がSNS発信を全くしていないため私が知りうる東栄町議選の情報は浅尾候補のみ。 投票日前日の土曜日に取材したため役場も閉まっており選挙管理委員会で候補者の事務所を聞くコトも出来ず、そんな乏しい情報で取材が可能なのか、不安を抱きながら東栄町に入ったところ、、、
町中心部の交差点で演説をする浅尾候補に遭遇! 街宣スケジュールまでは発信されていない中、最初にお会いできたのは奇跡です。 いきなりクルマを停めておもむろに写真を撮る私は存分に怪しかったでしょうが、演説終了後に名刺を渡したところ名前に気づいてくれて、しかも私が3月に “ドクターストップ” で治療療養していたコトも知っていて体調を気遣う言葉までいただき、恐縮したりして。
現在の町政や選挙情勢、更に町長選に出ている山本候補の選挙事務所の場所も教えていただき、前述の通り山本候補のスタッフから更に詳しい話を聞けたおかげで短い時間ながらも充分な取材が出来ました。 有難う御座います。
しかし、浅尾候補を、というより、共産党候補を妨害しようと、“奴ら” が東栄町にやって来たのです。 町長派とかそんな小さな話ではない、昨年から再び世間を騒がせている、“奴ら” が・・・
◆国際勝共連合、来襲!!
4月13日の中日新聞に、このような記事が載りました。 有料記事のため全ては読めませんが、今まで自民党候補を応援してきた統一教会が今回の統一地方選では事務所に顔を出すコトすら断られ、活動する場所を失った怒りの矛先が何故か共産党に向けられているという記事です。
最近、統一教会の関連団体である国際勝共連合名義で共産党を批判するチラシが撒かれたというツイートを見かけますが、それが東栄町にも来たようでして、
車を見ていただければ中日新聞に載っているものと同じであるコトが分かります。
ご覧の通り東栄町を含む北設楽郡には統一教会の施設は見つからず、車の看板には「国際勝共連合 愛知県支部 三河の会」となっています。 三河地区からわざわざ東栄町にやって来たようです。
しかも、統一地方選なので近隣自治体でも選挙が行われ共産候補が立候補していますが、そちらには目もくれず東栄町を “狙い撃ち” したようです。 その証拠に、
このように、東栄町を出る時には上部の看板を丁寧に隠し、一般市民の体で三河に戻って行ったようです。 姑息極まりない・・・
しかし、国際勝共連合は何故、東栄町だけを狙ってきたのか。
奴らにとっては共産党全てが敵であり、それならば同じく共産党候補が立候補している隣町の設楽町議選も狙って然るべきです。 だって三河地域から北設楽郡に行くのは結構な時間と労力を要するため、最大の効果を得るためには近隣自治体まとめて活動するのが当然でしょう。 それなのに、何故・・・
この疑問は、国際勝共連合が自主的に「来た」のではなく「呼ばれた」、という方程式を立てれば全て解けるのですが、それ以上の詮索はやめておきます。
まさか、そんなコトはないでしょう・・・
まさか、そこまではしないでしょう・・・
◆町議選・選挙結果
前回落選した村本候補がトップ当選でリベンジ達成。 新人候補が上位で当選し “反町長派” と見られる浅尾・西谷候補が続き、“町長派” の現職2名が下位に甘んじるという結果に! 恐らく有権者は町長選で現職に入れ続ける一方、議会には “新しい風” を期待して新人候補に票を投じたものと思われます。
これにより、議会の平均年齢は62.3歳から56.8歳と若返り、改選前は8名中7名が “還暦越え” だったのが、改選後は半数が50代未満という、若々しい議会に生まれ変わる結果となりました。
一方、独立系(「アレ」)候補の木村氏が次点。 そして、最下位は、まさかまさかの現職でした。
◆議長が最下位落選!
最下位となった、原田 安生(はらだ やすお)候補は当選6回と断トツの実績を誇る候補で、改選前の議会では議長を務めていましたが、まさかの最下位落選でした。
町長選の山本候補のスタッフからは原田候補が議長として現職町長をガッチリとサポートし反対意見を妨げてきた話を聞かされましたが、それは一方から得た情報で、それを以て原田候補の評価とするワケにはいかないでしょうし、何より町長選で圧勝した現職の右腕として働いているのならば同様に票を獲って然るべきでしょう。 それでも最下位落選となったのは、既にお気づきかもしれませんが、
この、ふざけまくったポスターが原因だとしか思えません。 SNS発信もしていなくて選挙公報も無いため原田候補がマジシャンなのかマジックが趣味なのか特技なのか分かりませんし、過去の選挙ポスターも検索かけまくりましたが出て来なかったため、コレが毎度のコトなのか今回特別にやらかしたのかも分かりません。 ただ、人口3千人弱の小さな自治体の選挙において、このような突飛なポスターが受け入れられるハズもなく、かといって大きな自治体でウケるようなデザインでもない、どこからどう見ても滑ってるポスターのせいで落選したのだろうと。
これまで90本近い選挙を取材しポスターも数多く見てきましたが、ここまで滑ってるポスターは初めて見ました。 何でこんなコトしようと思ったんだろう・・・
◆取材を終えて
先述の通り、町長選の山本候補の選挙事務所でスタッフの方から約1時間にわたって話を伺ったのですが、気がつくと事務所と道を挟んだ歩道に年配の男性が立っていて、コチラの様子を観察していました。 気味悪さを感じつつ取材を続けたのですが、その男性が今度はスマホでコチラを撮影し始めたのです!
サスガにアタマに来て、私から突撃して何してるのか取材してやろうかとも思いましたが、男性がどこの誰であるかをスタッフの方が把握しており、他県から来たフリーライターである私が下手に暴れるコトでスタッフに迷惑をかけるワケにはいかないと思い、放っておかざるを得ませんでした。
ただ、今でもアタマに来ているのは撮影しやがった男性ではなく、町民が町民を監視するようになってしまった東栄町の現状であり、その空気を2015年の初当選時から創り上げやがった、現職町長に対してです。
私はよそから来たフリーライターで東栄町の当事者ではありません。 冷たい言い方になりますが、例えば船が沈没しようとしている時、船が沈没しないように水をかきだしたりするのではなく、岸から船が沈没する様をお伝えするのが私の仕事であり立場です。 だから東栄町が今後発展しようが沈もうが私の “ネタ” になるので、どちらでも構わないというのが正直なキモチです。
ただ、人口3千人にも満たない町で住民が分断され、少数にされた側が虐げられている現状は、絶対に許せない! 選挙によって選ばれた首長は投票してくれた側だけではなく、意見を異にする少数派も汲み入れなければならない。 それが「民主主義」であり、町を“敵” と “味方” に分断する現職町政は「権威主義」そのもの。 繰り返しになりますが、それだけは絶対に許せないのです。
この町の現状を多くの方に知ってほしくて無料公開した、このレポート。 私のような無名の者の筆が持つ影響力なんて僅かだというコトは承知しています。 それでもネットに載せておけば、いつか誰かが見てくれるハズ。 そう願ってレポートを締めさせていただくと同時に、私の小さな小さな抵抗として、現職町長の名前を(候補者一覧と選挙結果を除いて)一切書かなかったコトを付け加えておきます。
弱小ライターといえど、こちとらプライド持って、命懸けでやってるんだ。 その記事を町長の名を書いて汚すコトは、どうしても出来ませんでした。 お許しください。
最後までご覧いただき有難う御座いました
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