【レポート #9】岐阜県知事選挙レポート(2021 1.24)
選挙取材を始めて初の県知事選挙取材。 選挙戦終盤にでも取材に行こうかと悠長に構えていたところ岐阜県が1月9日に独自の緊急事態宣言を発令するというニュースが9日の寝起きに飛び込んできてパニック!
発令されたら候補者の選挙活動も制限されるだろうし、何より本職として選挙ウォッチャーをやっていないので “趣味” といわれても仕方が無い私の立場では緊急事態宣言が発令された地域に入るコトは本職の影響が出るため、出来ません。 なので9日に取材しないとマズいと気づいて、下調べも無いまま慌てて家を出て、取材では滅多に使わない(経費がかかるため使用を控えている)高速道路を走って現地入りしました。 経費がハネ上がった取材となってしまいましたが、それを補って余りある取材が出来たと自負しております。
保守王国の岐阜には珍しく55年ぶりの「保守分裂選挙」となった今回。 “選挙活動をしない” という “最強の選挙活動” をする現職に対して、官僚を辞して岐阜県に帰ってきた新人候補は、いったい何者なのか? 各候補のコロナに対する取り組み方も合わせて、レポートします。
◆概要
(写真:美濃市「うだつが上がる町並み」の「うだつ」)
・面積:10,621.17㎢(都道府県 第7位)県内の地域は県庁所在地の岐阜市を中心とし利便性の高い岐阜地域、その西側に位置し大垣市を中心にIT関連産業が盛んな西濃地域、県の中央に位置し美濃市や郡上市がある有る中濃地域、東部の中津川市や土岐市がある東濃地域、下呂市・高山市・飛騨市があり大部分が標高3,000m級の飛騨山脈をはじめとする山岳地帯で自然豊かな飛騨地域の5つに分けられる
・人口:1,974,142人(都道府県 第17位)※2020年10月現在
・平野や盆地の地区は最高気温が高いことで有名。美濃や金山(41.0℃ 歴代3位)や多治見(40.9℃ 歴代6位)などがランキング常連として名前が挙がる。
・県庁所在地の岐阜市は中核市に指定されている
・高山市は国内市町村で面積第一位(2,177.67㎢、東京都とほぼ同じ面積)
・選出国会議員は下記の通り(敬称略)
岐阜1区(岐阜市の大部分)野田聖子(自民 9期)
岐阜2区(大垣市などの西濃地区)棚橋泰文(自民 8期)
岐阜3区(岐阜地方と一部の中濃地方)武藤容治(自民 4期)
岐阜4区(大部分の中濃地方と飛騨地方)金子俊平(自民 1期)
※同区では今井雅人(立憲 4期)が比例復活
岐阜5区(東濃地方)古屋圭司(自民 10期)
参議院岐阜選挙区:渡辺猛之(自民 2期) 大野泰正(自民 2期)
◆立候補者
江崎 禎英 (56) 新 岐阜大学学長特別参与客員教授
稲垣 豊子 (69) 新 新日本婦人の会県本部会長(共産党推薦)
新田 雄司 (36) 新 薬剤師
古田 肇 (73) 現 5期目を目指す
・江崎 禎英(えさき よしひで)候補
江崎禎英候補は山県市(旧美山町)出身。 東京大学教養学部教養学科卒業後通産省に入省、岐阜県庁に出向した4年間を挟んで経産省や内閣府(生物化学産業課長 等)で役職を歴任。 昨年11月に退職し今回の選挙に向けて準備を進めてきました。「LIFE SHIFT」を旗印に初当選を狙います。
・稲垣 豊子(いながき とよこ)候補
稲垣豊子候補は岐阜市在住。 岐阜大学を卒業後、2011年まで小中学校の教師を務め、岐阜県教職員組合執行委員などを歴任。 現在は新日本婦人の会県本部会長を務めています。 「だれ一人とりのこさない」県政を目指して知事の座を狙います。 なお、日本共産党が推薦を出しています。
・新田 雄司(にった ゆうじ)候補
(※ポスターの写真が見つからず、本人のTwitterからお借りしています)
新田雄司候補は多治見市出身。 岐阜薬科大学卒業後、昨年3月まで県職員を務め環境問題等を担当。 退職後はドラッグストアで薬剤師として働いています。 県職員として現場を見てきた経験を活かし「住みよいまち岐阜」を目指して立候補を決意しました。
・古田 肇(ふるた はじめ)候補
古田肇候補は岐阜市出身。 東京大学卒業後、通産省に入省。 羽田内閣や村山内閣で首相秘書官を務めました。 外務省出向を経て2005年、知事選挙に初当選し4期16年務めています。 これまでの実績を掲げコロナ禍における県政の継続を訴え、今回5期目を狙います。
◆前回(2017年)の選挙結果
前回の知事選は「多党相乗りの現職vs共産の新人」という、やる前から結果が見えているような選挙で当然現職が4選を飾りました。
それにしても投票率が33%は、低いなぁ・・・
◆POINT 55年ぶりの保守分裂選挙
概要に書いた「現職国会議員の顔ぶれ」で分かる通り岐阜県は自民王国なのですが、今回、実に55年ぶりとなる保守分裂選挙となってしまいました。
(※朝日新聞DIGITALよりお借りしています)
対立しているのは野田聖子自民岐阜県連会長と岐阜県議を13期も務めている “岐阜のドン” 猫田孝県会議員(自民・県政自由クラブ)です。両者は元々仲が良く、かつて野田氏が郵政民営化法案に反対したため党の公認が得られず、加えて小泉純一郎総裁(当時)の刺客として送りこまれた佐藤ゆかり氏と無所属として闘うことになった2005年の総選挙において自民県連の中心として野田氏を支えて当選に導いた過去が有り、野田氏は「父のように」猫田氏を慕っていたといいます。
ところが今回、猫田氏が古田候補の多選を批判し江崎候補を担ぎ出したことに野田氏が「多選批判に加えて(古田候補が)言うことを聞かないという理由で替えようとした。昭和の長老政治だ」と猫田氏を批判。 猫田氏も「培ってきた友情が吹っ飛ぶ」と反論し県議を今季限りで引退するという形で退路を断ち、大野泰正参院議員も加わって江崎候補と共に闘うことになりました(以上、読売新聞を中心に引用)。
ただ、そもそも2005年に外務省経済協力局長だった古田氏を知事選に担ぎ出したのは他でもない猫田氏であり、じゃあ何故今回猫田氏は反古田派になったかというと、多選を重ねるうちに古田知事の「トップダウン」な手腕が目立つようになり、猫田氏は「この16年間、古田氏から誘われた会食は一度もなかった」とこぼすようになったようです。
というコトで、多選批判もありますがどうやら古田知事と猫田氏を始めとする県連は充分なコミュニケーションがとれなくなったようでして、それが55年ぶりの保守分裂選挙を招いてしまった模様です。
(何とも小さい理由ですなぁ・・・)
そのため自民岐阜県連としては推薦を出せず、県議会最大会派の県政自民クラブが両候補に推薦を出し31人の自民県議を半数に分けて両候補をそれぞれ支援しているようです。 更に古田知事批判はこれだけに収まらず、県職員組合及び県職員OB会も新人の江崎候補に推薦状を出しています。 多選による政権の腐敗というものは往々にして良くあるコトですが、岐阜県の場合は古田知事が何事も自分で決定する方で、そうなると段々と議会や県職員と協議する機会が減っていまい、それが結果として県職員側の江崎候補推薦に繋がったようです。 加えて江崎候補には岐阜県医師会と岐阜県歯科医師会も推薦も出しています。
一方、古田候補には、UAゼンセン、JAM東海、基幹労連、自動車総連、JEC連合などが推薦を出しており、大野参院議員を除く5名の岐阜県選出自民党国会議員が応援しています。 そして稲垣候補には日本共産党の推薦に加えて「県民が主人公の岐阜県政をつくる会」と政策協定書を交わし、加盟団体である岐阜県労働組合総連合や岐阜県教職員組合から推薦を受けています。
そして、立憲民主党、国民民主党、公明党などの政党は自主投票となっております。
(そういうトコだぞ、立憲・・・)
このように「保守分裂選挙」と「コロナ対応」という題目が目立ちすぎて、本来は争点として挙がってくるであろうリニア開業の件や人口減少の件などは争点化されておらず、このふたつが大きな争点となってしまっています。 ここまで「保守分裂選挙」について書いてきたのでここからは「コロナ対応」を中心とした視点で各候補を見ていきます。
◆江崎禎英候補の演説を聞く
西濃地方の大垣市のお寺で行われた演説会をしました。 江崎陣営は新聞に載せる当日のスケジュールに具体的な場所まで明記していない中、美濃市でたまたま出会った江崎候補支持の岐阜県議に場所を教えていただいたおかげで取材するコトが出来ました。 ラッキーです。 本当にラッキーでした(後述)。
たすきをスタッフに持たせて自らは使わないという斬新なスタイルで喋り続けます(スタッフさん、肩こって大変だったろうなぁ・・・)。
新型コロナ対策で戸を開けて換気をしながら(=この時期なので結構寒い)マウスシールドで口元を覆う形での演説でした。 ちなみに写真左下に立てられている本は、
自らの著書「社会は変えられる」という本のようです。
官僚時代に岐阜県池田町に「世界最大のワクチン工場を作る」ことに尽力するなど医療や社会福祉の関係で仕事をし、官僚を辞める直前は「科学技術の責任者」としてコロナ対策チームのメンバーに入っていたそうです。
その経験を活かし、観衆に対してコロナ対策を、
と、「世界一詳しく」(江崎候補 談)伝えていました。 そして著書にも書かれているように、人生100年時代がやってきて老いてもイキイキと生きられる時代が来ているので「コロナの先にある未来は素晴らしい」と訴えられていました。 観衆の方も「変えなきゃ、変わらない」を掲げる江崎候補から繰り出される斬新で初めて聞く話や提案を熱心に聞かれているようでした。
ただ、「コロナ対策チームのメンバー」で「世界一詳しく」説明できる人が、名刺を素手で観衆に手渡しするってのは如何なものかと。
マウスシールドやフェイスシールドは不織布製を始めとするマスクに比べて自らが吐き出す飛沫を防御する効果が薄いことが証明されています。 マイクを手に喋るということは吐き出した飛沫が手に付着していることも充分に考えられます。 にもかかわらず演説後に手の消毒もせずにいきなり名刺を取り出し観衆に手渡しするという光景を見て、
「この人は本当に新型コロナに詳しいのだろうか?」
と、疑問に思ったのが正直な感想です。
選挙公報はこちら(クリックで拡大してご覧ください)。 コロナを抜きにして最も訴えたいのは、やはり「人生100年時代」を迎えるための新しい社会作りのための提案なようです。
◆稲垣豊子候補の演説を聞く
中濃地方の御嵩町に有るショッピングモールの一角で行われた演説会を取材できました。
マイクやお立ち台が備わっている選挙カーを待つ間、取材クルーや観衆の方と明るく談笑されていて候補者のきさくな人柄が感じられます(できればマウスシールドではなくマスクをしていてほしかったけど・・・)
選挙カーの上に乗って演説をする “クラシカルスタイル” です。 イメージカラーのピンクが際立ちます。
江崎候補のキャッチフレーズ「変えなきゃ、変わらない」を引用しながら「国の政策のためにではなく、大企業のためにではなく、県民の命と暮らしを守るために変える選挙である」と訴えます。
観衆の方は道路を挟んで反対側の歩道に陣取り、稲垣候補の主張に「そうだー!」と応えながら聞いていました。
「女性や子どもたち、高齢者といった弱者の声を拾い上げて「だれ一人とりのこさない」公平な政治を目指します!」と力強く訴えました。
演説後は再度下に降りて観衆の方とエアタッチで触れ合っていました。 マウスシールドが気にならなくも無いですが、エアタッチという配慮をしている分、まだ良いのかなぁ・・・と(一応、野外だし)。
選挙公報はこちら。 ジェンダーや子育てに対する公約を大きく掲げているのが特徴ですが、ところどころに岐阜県知事選の範囲を超えた、国政レベルの案件を公約に取り上げているのが気になりますが・・・
◆新田雄司候補の主張を見る
新田候補については取材日の選挙運動スケジュールが見えなかったのと、やはり他候補に比べて注目度が劣る状況が有り、限られた取材時間の中で追うことが出来ませんでした。 ので、選挙公報や新田候補の唯一の情報発信源であるTwitterから主張を見ていきます。
「3つの柱」の第一に子育てを掲げていたり県職員時代に担当していた環境問題や防災対策を大きく取り上げていたりと岐阜県の事情に向き合った公約を掲げていることが伺えます。 Twitterでも活動報告や政策を真面目に書いていて、決しておふざけで立候補したわけでも人間性が「アレ」なわけでも無いようです。 しっかりとした支持基盤と強い発信力が有れば訴えが浸透するのかもしれません。
が、如何せん選挙公報や政見放送以外の独自の発信手段がTwitterだけでは・・・
◆古田肇候補の「実績」と「コロナ対応」を見る
古田候補は今回の選挙戦にあたり、現職知事としてコロナ対策に専念するために一切の遊説を取りやめました。
そう、東京都知事選における小池百合子氏と同じ手法です。
このコロナ禍においてこの手法が現職だけが使え得る最強のカード。 “選挙活動をしない”ということが最も効果的な選挙活動になるのです。 なんというパラドックス。
ただし古田候補を支持する県議等が各地で演説しており、古田候補もリモートという形で短いながらも参加しています。
取材に向かったのですが如何せん岐阜県は広く、到着した時には演説会が終わった直後でした・・・(涙) またYouTubeでは、
このようにどの候補よりも多く動画を出していて、全く選挙活動をしていないわけではないようです。
選挙公報はこのようになっていますが、ここでは古田知事のコロナ対応を検証していくことにします。 県のHPからピックアップしますと、
と、まぁ他の都道府県でもやっているような対策が並んでいますが、古田候補は実績として、
などを掲げています。 ただ正直なところ、これだけでは実績として弱いなと思っていたところ、ある岐阜県民の方から指摘を受け気づいた点が有ります。 それは今月14日に一都三県から拡大された緊急事態宣言の対象区域に含まれたことです。
こちらは患者数に対する病床数を色別で示した「新型コロナウイルス対策ダッシュボード」の、1月13日時点のものです。 黒色は病床数が足りない(医療崩壊を起こしているといえる)自治体です。 ただご覧のように緊急事態宣言対象区域のうち岐阜県と兵庫県は未だ病床数が足りている状況ですが、今回対象区域に入りました(逆に宮崎県は1月13日だと病床数が足りないにもかかわらず対象区域に入っていない)。 そして兵庫県はキャパオーバー寸前(病床使用率:95%以上)を示す濃い赤色ですが岐阜県はそれよりも1段階薄い赤色(病床使用率:約60%)で、他の対象区域に比べてそこまで切迫している状況では有りません。 にもかかわらず対象区域に “入れてもらえた” のは、キャパオーバーを起こしている愛知県と隣接して人の往来も多いとはいえ、常に愛知県と歩調を合わせて(三重県を合わせた)共同緊急メッセージを発表したりしていたことが功を奏したとも言え、4期16年の実績と経験は伊達ではないなと感じます。
コロナ対策のために一切の選挙活動を取りやめた古田候補。 その手法に賛否は有るでしょうが実際に状況は日に日に緊迫感を増しており「緊急事態宣言対象区域に加わる」という形で実際にコロナ対策のために動いていることを県民に示したという点で、やはり “最強の選挙活動” を展開しているといえるでしょう。
◆選挙結果
55年ぶりの保守分裂選挙、そしてコロナ禍という異例づくしの選挙戦を制したのは、果たして・・・!
このコロナ禍、しかも投票日は生憎の雨模様という悪条件が重なりながら、“55年ぶりの保守分裂選挙” で関心は高かったか期日前投票が伸び、投票率は前回比でプラス11.65ポイントと大きく増加し、それが江崎候補に有利に働いたものの結果は古田候補が5選となりました。 古田知事が県議や県職員から支持されていないのはコミュニケーション不足が原因だと書きましたが、何事も自分で決定してしまう方なので、単純に面倒くさかったからコミュニケーションを取らなくなったのかもしれません。 そうだとしたら5期目の県政でサスガに次は出ないだろう(渡辺参院議員が後継として出馬するとの噂アリ)から、有終の美を飾るために積極的に県議や県職員と連絡を取り、新型コロナから岐阜県民を守っていただきたいと思います。 そして何より、ご自身もご高齢なのですから、どうかコロナにかからないように気をつけて下さいませ・・・
さて、私の記事では恒例となっております「落選候補者の敗因分析」と参りますか。 今回の取材は2候補しか追えず充分な取材量とは言えませんが、落選候補に対し思うところが有るのでガッツリ書いていきます。 ここからが、本番です。
◆新田候補と稲垣候補の敗因を分析する
まず新田候補については、あまりにも書くコトが無いせいで既に前段でも触れていましたが、圧倒的に知名度が足りないし支持基盤も発信力も弱すぎる。 そして何より県職員経験が有るとはいえ政治経験も知名度も無い人間が市議も県議も飛び越してイキナリ知事になろうとは、あまりにも虫が良すぎるかと。 自らの政策を実現したいのなら市議あたりから着実に実績を積み重ねるコトが大切ではないでしょうか。 まだ30代と若く訴えてる主張も決して間違っていないのですし、圧倒的に劣る知名度と選挙活動量の中でこれだけの票が取れたというのは自身を持ってイイと思います。 どうか、ひとつひとつ階段を上がるコトから始めてほしいと願います。
次に稲垣候補。 自民王国の岐阜県において今回の「55年ぶりの保守分裂選挙」というのは千載一遇の大チャンスで、非自民票をまとめられれば当選も不可能ではなかったかもしれません。 にもかかわらず保守系2候補の話題に埋没して存在感を発揮できず、立憲の支持も得られず(求めず?)共産党からの推薦のみで選挙戦を戦った結果、いかにも “共産党の選挙” という形にしかなれなかったというのが残念でなりません。
それは前段に載せた演説会に集まった観衆を見ても明らかで、稲垣候補は「ジェンダー平等」を公約に掲げていましたが、
と、観衆の9割以上が女性でした。 例えば江崎候補の演説会だと、
男女比がほぼ半々(若干女性が多いかな?)という感じでした。 果たしてどちらがジェンダー平等でしょうか?
「女性の地位向上」という課題に取り組むのは大事なコトだし、女性候補として率先して取り組むべきテーマであるコトも確かでしょう。 しかし、それを叶えるためには男性に理解してもらい協力してもらうコトが不可欠です。 翻って稲垣候補の演説風景を見れば集まっているのは女性ばかりで、男性に支持が広がっていない様子が容易に見てとれます。 女性ばかり集まって内輪ノリ全開で盛り上がっているグループの輪に男性はなかなか入りづらいものです。
ここでいえばピンクだらけの配色だとかプラカードとかがそれにあたります。 もし支持者の女性が支援の輪を広げようと誰かに声をかけるならば、きっと男性ではなく女性に声をかけるでしょう。 そうして女性だけの集まりによる内輪ノリが加速し、更に男性が入りづらくなる環境が出来上がるです。
また、政治の関心が薄い “無党派層” の女性は稲垣候補のような「女性の地位向上をー!」と声高に訴える人を毛嫌いする傾向が有ります。 選挙に勝つためには男女関係なく支持を広げ票を獲得しなければなりません。 もっとスタンダードな選挙戦略を取るコトは出来なかったのでしょうか?
そして観衆が持っていたプラカードも問題で、
「軍事費削減」も「日本学術会議 6名の任命拒否」も「核兵器禁止条約の批准」も重要な問題です。 ですか、岐阜県知事選挙に直接的に関係のある問題では有りません。 この、“地方選挙でも国政の問題を訴えてしまう” コトを私は「共産しぐさ」と呼んでいますが、このような選挙戦略を取っている限り絶対に勝てません。 現に地方選挙における日本共産党の衰退は顕著で今年に入って千葉県の大多喜町議選(定数12/立候補18)や沖縄県の嘉手納町議選(16/18)において唯一の共産党候補者が落選して議席を失っています。 地方自治体における選挙はあくまでその自治体に寄り添った政策を掲げなければなりません。 そして候補者に抜群の知名度が無いのであれば政策とは逆に強い組織(「政党」など)によるバックアップが不可欠です。
もう一度書きますが「55年ぶりの保守分裂選挙」という千載一遇のチャンスであるにもかかわらず非自民勢力を結集できず、存在感を殆ど示せないまま “ゲロ吐きそうなほど” 僅かな票しか取れず敗れたというのは失策以外の何物でも有りません。 非自民票を集められない候補者を出した共産党と、知らん顔して自主投票で逃げた立憲民主党には強く反省していただきたいと思います。
(岐阜新聞より引用)
事前調査ですが、立憲支持層の約6割が江崎候補、約3割が古田候補を支持し合わせて約9割が自民系候補を支持。 対して稲垣候補への支持は僅か1.7%という・・・
(そういうトコだぞ、立憲・・・)
◆江崎候補の敗因を分析する
さて、江崎候補の敗因分析を他候補と別にしたのには理由が有ります。 この人についてお伝えするべきコトが圧倒的に多く、これから書く内容がこの記事のメインだからです。
取材前に江崎候補について調べた感想は、きっと本人や陣営がポンコツなんだろうな、と思っていました。
Twitter担当が選挙とは直接関係ない、的外れなツイートをしていたり、
「元応援団長の息子さんがエールを送る」なんて動画を出していたので、選挙戦のあいだにボロが出て負けるだろうな、と。
実際に取材して演説を聞いたり江崎候補について深堀りしていくと確かに実態が出てきたのですが、それはポンコツでもボロでもなく、
サイコパス でした。
例えば彼が選挙公報でも著書でも挙げている「人生100年時代の幸せの形を作る」という件。 高齢化が進む社会で高齢者が生きがいをみつけて活き活きと生きられる時代を作る、という意味らしく「高齢者でも働ける環境作りが必要」だと語っていますが、それって要は「高齢者も働かされる社会」というコトですよね?
彼のYouTubeでパワポを使って自説を説いているのですが、65歳以上を高齢者と定義しているのは国連らしく高齢化が進み且つ長寿な日本ではこの基準はそぐわないと言うのです。棒グラフのオレンジ色が高齢者で青色が労働層のようですが次のパワポで、
高齢者の基準を75歳以上にし、労働層を無理矢理増やしたグラフを出して「結構いい時代が来ると思いません?」と嬉しそうに語るのは、ちょっと怖く感じます。 しかもグラフはこれで終わらず、
高齢者の基準を更に85歳以上にまで引き上げたグラフを出して「これ実はすごいことで」なんて言い出す始末・・・ ちなみに2019年の日本の平均寿命は女性が87.45歳、男性は81.41歳なので、男性の半数以上が高齢者になる前に死んでしまうコトになります。 私個人としては「高齢者は体は元気だが仕事を辞めて生きがいを失ったせいで痴呆が進む」という話は理解できますし、私自身が遠くない将来に65歳を迎える現状を鑑みると高齢者になっても働ける環境は必要だと思っています。 が、彼のような「人と違うコトを言って注目を集めたい」タイプの人が言うと高齢者が働かされる社会を作り社会保障を削ろうとしているように感じるし、竹中平蔵氏や日本維新の会が目指す「小さな政府」との共通項を感じてしまいます。 高齢者の介護環境や労働環境というものは議論しなければならない課題ですが、彼のような人間をこの問題を取り扱うのは、危険です。
江崎候補の演説内容はパっと聞くと強い主張が有るように聞こえますが、しっかり聞けば中身が何も無いコトが分かります。 例えば前段に書いた新型コロナ対策についての主張、
にしても、新型コロナについてアレコレ説明していましたが有権者が最も聞きたい「江崎候補が当選したらどういう対応をとるのか?」については「自粛一辺倒ではない対策が取れることを岐阜県で実証する」というだけでじゃあどうすれば自粛しなくても対策が取れるのか、肝心の中身を一切言っていないのですよね。 ぺらっぺらです。 しかも上記①の証明として新型コロナとインフルエンザを比較して、
と語っています。 元朝日新聞記者の杉本裕明氏のFacebookによると、この数字は厚生労働省の「インフルエンザの発生状況について」(2021年1月7日プレスリリース)の数字をもとにしたものだと推察されるようですが、杉本氏によるとこれは全国の医療機関のうち約5000を抽出し、そこで発生した罹患者数が70人だということのようです。 ちなみに日本の医療機関は約10万、全国の医療機関の5%からの発生数をさも日本全国の発生数かのように言って新型コロナと比較しインフルエンザが「ほぼ撲滅」したと言うのは如何なものかと。
もし彼の言うようにインフルエンザが撲滅出来ていたとしましょう。 じゃあ何故撲滅出来たかと考えれば新型コロナ対策でマスク着用と手洗いやアルコールによる手指消毒を心がけたからでしょう? それでも感染拡大が止まらない新型コロナの対策をどうするか? と彼に問うても上記②→③の流れとなり結局マスクと手指消毒に繋がるワケなので、彼の論理は破綻しているのです。
しかも演説で「(日中マスクを着け続けても)最後に呑み屋さんに行ってマスクを外して喋っちゃって唾が飛んでしまう」と飲食店で感染する原因を話していますが、当の本人が、
食べ物屋さんでマスク外して喋って飛沫飛ばしてるじゃねーか!! これでは彼がマスク着用を呼び掛けても説得力、ゼロです。
では一体、彼がいう新型コロナ対策とは何なのか? 調べたところ彼のFacebookで見つけました。 現在は削除されているようなのですがスクショを撮っていたので助かりました。 江崎候補の著書の作成に携わった方が彼との会話を書いた文章です。江崎候補が(一時的にとはいえ)シェアしたものなので、本人の発言と捉えても問題ないでしょう。 ご覧下さい。
要約すると、
まず①については(確実に効く)ワクチンの供給体制が完了しない限りこういった議論は、論外です。 ただ④については「トリアージ」というセンシティブなワードが目につきますが「一般的には、重要で最初に扱うべき者を選別(および決定)すること」(Wikipediaより)という意味も有り、
私が通っている病院でも「患者の区別をつける」という意味で「トリアージ」という単語を使っているのでこの場では批判することは避けますが、③・⑤・⑥の発言を見ると彼の新型コロナ対策は “集団免疫” のようです。 スウェーデンやイギリスが一時目指すも挫折し、日本も(そうしたいだろうけど)踏み切れないでいる「集団免疫によるコロナ対策」を岐阜県で目指すと言っているのです。
バカなのかな? この人・・・
こういう考え方の人だから同じ周波数の人を引きつけて、
こうやって “コロナはただの風邪” を主張する人が賛同ツイートしちゃうのでしょうね。 最悪です。
もう既に新型コロナ対策に何が有効かは既にニュージーランドと台湾が証明しています。
これしか無いのです。 世界各国を見れば何をすべきか分かりきっている中で、このやり方では無い「岐阜モデル」なんて、機能するワケがありません。
そもそも彼は東大の教養学部を卒業し通産省に入った人なので、医療畑の人ではないのです。 だから「科学技術の責任者」なんてなれるワケがありません。 まぁこの国は経済再生担当大臣に新型コロナ担当大臣を兼務させる間抜けな国なので、彼が「新型コロナに詳しい」と発言するのはアリになっちゃうのでしょうね・・・
そんな彼が官僚時代にどんなコロナ対応に携わっていたのか? 調べたところ出てきたのが、
厚生労働委員会で福島瑞穂議員からの「マスクの事務費輸送費はどこが負担するのか? 」という問いに答える「経済産業省 統括調整官」時代の江崎候補。 と、いうコトは・・・
おめーがやったコトって、「アベノマスク」を配布したコトかよ!!!
あんな何の足しにもならないガーゼマスク2枚配って260億とも466億ともいわれる多額の税金を無駄遣いした政策を担当した人間が「世界一詳しく」なんてエラそうに説明してんじゃねーよ! しかもまともに回答できずに厚生労働省の局長に助け舟を出されているし・・・
ちなみにもうひとつ携わっていたらしい新型コロナ対応というのが、
そう、あの悪名高き「横浜ベイスターズ試合観客80%入場の実証実験」。 “人体実験” とも言われたアレを主導したのが、彼のよーです。 そりゃ “集団免疫” 論者なら率先してやるわなぁ・・・ しかも「飛沫感染=唾だから下に落ちて上に行ったものは感染力が殆どない」って言ってますが、ウイルスと飛沫の質量って関係あったっけ? どうやら彼の頭の中に「エアロゾル感染」という言葉は存在しないようです。
さて、ここまで長々と彼の実態を書いて参りましたが、実は最も皆様に伝えなければならないコトが、もうひとつ有ります。 岐阜県知事選をTwitterで調べてもこの件に触れている人はなく、この発言の現場に当たったのがラッキーであり、私が演説を聞いて最も衝撃を受け、彼が無能だと断定した部分です。
演説で新型コロナの説明が終わったアト、「コロナのおかげで世界は救われた」と語りだし、
と話したのですが・・・
はて、“去年の8月にアメリカと中国のどちらかがミサイルを撃つ” という話、私は聞いたコト無いのですが、皆様は聞いたコト有りますか?
もしこの話が本当だとしたら、どこにも漏れていない国家機密レベルの情報を自らの選挙のために寺の境内で暴露するという口の軽さを露呈した形になり、逆にこの話がウソだとしたら、自らが選挙に勝つためには偽の情報を流すことも平気な大ウソつき野郎となり、どちらにしても、無能です。
このような “無能の証明” はコレだけに留まらず(次の件はご存知の方も多いかと思いますが)新型コロナ関係でもしっかり示してくれていて、
と、西村康稔新型コロナ担当大臣に頼まれたと発言しています。 もし西村大臣がこの発言が本当に言ったとするならば、西村大臣から「Face to Faceで」と言われた約束を破って演説会で堂々とオンマイクで喋るという口の軽さが無能だし、逆にこの発言がウソだとすれば同じく大ウソつき野郎で無能だというコトです。 ちなみに西村大臣はTwitterで、
こんな発言はしていないと否定しています。 それを受けて江崎候補は慌てて、
と「Face to Faceで向かい合った時だけ伝えられると思うんだけれども」という言葉は西村大臣のものではない。 つまり、江崎候補が捏造した言葉であると認めました。 というコトで彼は、大ウソつき野郎であり、無能なのです。
彼の見た目のスマートさや優しい語り口に騙される有権者が増えたら、もしかすると・・・? と思ったりしたのですが、選挙戦が進むにつれ彼のヤバさに気づいた有権者がSNS等で警鐘を鳴らし、
著名人や新聞が取り上げて拡散してくれたおかげでサイコパスっぷりがバレて、無事に落選しました。 良かったです。 岐阜県民は(当選者が誰であれ)彼を落としたという点で素晴らしい選択をしたと思います。
今回江崎候補は落選しましたが、一旦神輿となり政治家から担がれたからには今後も何かしらの選挙に出る可能性が有ります。 今回だってコロナ禍が無ければ彼の無能な点が露呈すること無く古田候補と大接戦に持ち込めたかもしれませんが、改めて申し上げますと決してこのような人を政治家にしてはいけません。 警鐘を鳴らす意味を込めて長文となりましたが持ち得る情報を書き記しました。 もし立候補してきたらこの情報を持って全力でカウンターをぶつけるつもりです。
◆取材を終えて
緊急事態宣言発令前にと取材せねばと高速道路を走り、帰りは大雪と道路凍結に怯えながら運転するという結構ハードなスケジュールでしたが、取材出来て良かったです。 初の知事選挙の取材でしたが良い経験が出来ました。
これまでの取材を通して何度か書いていますが、知事でも何でも、組織のトップに立つ人間が最もやるべき仕事は「後継者を育てること」だと思っているので、それが出来ずに4選、5選と重ねる政治家は無能だと考えます。 なので本来は古田候補を徹底的に叩くところなのですが、他の候補が「無名の薬剤師」と「非自民勢力を結集できない内輪ノリ候補」と「無能なサイコパス」では、古田候補を選ぶコトが決してベストだとは言いませんが、ベターな選択だったのはないでしょうか。
4年後はきっと古田知事は引退し、新たな知事を選ぶ選挙になるでしょうが、今回のような政局ばかり注目が集まる選挙ではなく、政策を争う選挙になってほしいなと、願うばかりです。
ご購入いただいた皆様、最後までお読みいただき有難う御座いました。
もし宜しければサポートをいただけると大変嬉しいです! いただいたサポートは今後の取材費として使わせていただきます。