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【18禁】【暴力行為あり】

趣味の妄想を小説にしたものです。

不快と思われる方は読まれないようお願いいたします。

また、このコンテンツは、犯罪行為を助長・推奨するものではありません。



どのくらい車に揺られただろうか。
景色が見えないばかりかほぼ暗闇の状態では時間の経過が全くわからなかった。

何も見えない状態で、しかも手足を拘束されている状況では体のバランスを取るのが難しく、トランクの中で左右に揺られた。
トランクの側面や床面に当たると痛いのはもちろんだが、ちょっとした動きで手首や足首に結束バンドがより食い込み、痛い。

さらに暗闇で口を塞がれると言うのはなんとも息苦しかった。
自然と呼吸が速くなる。


パニックになりそうなのを必死で堪える。

恐怖感は変わらないが、車が進むにつれ先ほどのショックは少し軽快しつつあった。

このまま男の目的地についたら、私はどうなってしまうのだろう。

男は暴力を振るうことになんの抵抗もないように見えた。
自分への気遣いのようなものは微塵も感じられない。
先ほどの痛みを思い出すと、殴られた箇所が脈打つように疼いた。


実家は裕福なわけではない。
したがって、金銭目的の誘拐とは考えにくい。

強姦目的だろうか。
美人とは言えないが、自分も一応妙齢の女性。
その理由なら嬉しくはないが納得できる。

だとすれば、大人しく従っておいて、満足すれば解放されるかもしれない。
社会人2年目の24歳ともなれば、すでに処女ではない。
家に、生きて帰ることのほうが、正直重要だ。


でもー
頭の端に何かが引っ掛かる。

強姦目的の割には手が混みすぎている。

1時間も車を走らせてどこへつれて行かれるのだろうか。
強姦目的なら、人気の少ないところまで行けばそれで済む話だ。

なぜ遠くまで移動する必要があるのか。
どこかの国にでも拉致される?
怖い人たちに売られる?
山奥で殺されて埋められる?


悪いイメージばかりが思い浮かぶ。
ショックが和らいだと思っていたのに、悪いイメージのせいでまた恐怖心が押し寄せてきた。

死にたくない。
とにかく逃げなくては。

もがくが、手足を拘束しているものが緩まる気配はない。

目隠しと口を塞ぐテープを取ろうと、必死に床に顔を擦り付ける。
ざらざらした床が擦れて痛いが、そんなことには構っていられない。

その間にも車はどんどん進んでいく。
左右上下に揺られることが多くなり、止まることも少なくなった。


目隠しの布が外れた。
トランクから見える景色はほとんど暗闇で、時折木々の影が見えた。

口元のテープを外れかけている感覚がある。
そこを床に擦り付けると少しずつテープが剥がれ、なんとか口の中の布を吐き出すことができた。

「っは…」

口で大きく息を吸う。
でも静かに。

目が見え、口で息ができることに感謝する。

男は目隠しと口のテープを剥がしたことには気づいていないようだ。
車は進み続ける。


手の拘束は取れる気がしなかった。
少し動かすだけでズキズキと痛む。

足だけでも動かせるようになればー。

海老反りのような姿勢になると、足首の拘束になんとか触れることができた。
だが、引っ張っても切れる気配はなく、伸びてゆとりができる気配もない。

幸いバンドは細い。
爪で切れないかと擦ってみる。

無理な姿勢と恐怖で息が切れる。
でもここで逃げられなければ、自分がどうなってしまうのかを想像すると、限られた可動範囲で足掻くしかなかった。


どんなに爪で擦っても引っ張っても、バンドが切れる気配はなかった。
怖い。
焦るし、苦しい。

そんな胸中とは裏腹に、車は砂利道に入り、やがて停車した。
窓からは木々の影しか見えない。

目的地に着いてしまったのだろうか。
耳を澄ませるが男以外に人の気配はなく、自分の心音がやけに耳に響く。


男が車を降りる。
砂利の上を歩く音がするが、足音は遠ざかっていくようだ。

なんとか体を起こし、あたりを見渡す。

山の中なのか、見渡す限り木々しかない。
が、ぱっと明かりがつき、家があることがわかった。
男があかりをつけたのだろう。
やはり他に人はいないようだ。

今なら逃げられるー。

自分を奮い立たせる。

トランクのドアは内側から開けられそうにない。
後部座席を乗り越えるようにしてなんとか移動する。

無理な体勢と、拘束に構わず動かしたせいで、体のあちらこちらが痛む。
でもそんなことには構っていられない。

後部座席を這うように移動し、後ろ手でドアに手をかける。
鍵は開いたままだ。

開けられる…!


ドアに寄りかかっていたせいで、開くと同時に地面に投げ出された。
土と葉っぱの匂いが立ち込めている。

痛みはあったが、出ることができた喜びが胸に込み上げる。

このまま暗闇に紛れて、人のいる道まで出られればー

そう思い顔をあげる。

顔をあげると、すぐ目の前に、男の足があった。


血の気が引く。
今までもそう言う経験はあるが、全身が、指先まですーっと冷たくなるのを感じた。

「それで逃げられると思ってるの?どう頑張っても無理でしょ」

男がちらりとトランクを見る。

「目隠しとテープ、よく外したね。頑張った頑張った。それ以上は体力の無駄だからやめときなよ」

そう言って、男は私を担ごうとする。
動けないなりに、その手から逃れようと身を捩る。

「いやっ、触らないで!誰かー!」

必死に声を出す。
恐怖で喉が締め付けられ、思うように大きな声が出ない。
それでも、必死に声を上げるしかない。

また殴られるかも、と頭の片隅で思うが、意外なことに男は笑っていた。

「惨めでいいね。逃げるのに必死でさ。もっと頑張れば誰か来てくれるかもよ?ほらもっと大きい声で叫べよ」

その言葉に絶望感を覚える。
声が聞こえる範囲には誰もいないと、男は私に伝えている。

涙が溢れ、余計に喉が締め付けられる。

「っだ…だれかっ…助けてください!!」

必死に叫ぶ。
誰にも届かないとうすうす感じているが、そんなこと、認めたらおしまいだ。

男はそれを静かに見下ろしていた。


「お、お願い…誰かっ…」

口を塞がれる。
片手だが、自分より大きな手で簡単に顎まで抑えられ、呻くことしかできなくなった。

男はしゃがみ込み、笑ったまま顔を覗き込んでくる。

「あーぁ、可哀想。誰にも聞こえないのに、叫ぶしかできないし、それもこうやって簡単に止められちゃうし。自分が無力だってわかった?」

肯定も否定もできず、ただ涙を流す。
男の言うように、逃げるどころか動くことさえできず、片手で簡単に唯一できることを奪われてしまうのは、逃げなくてはという気持ちを折るのに十分だった。

私がただ泣いているのを、肯定と受け取ったらしい。
男は満足げに笑い、私を担ぎ上げる。

「今日からここがお家だからね。しばらくは外の空気吸えなくなるから沢山吸っておきなよ。せっかく、口のやつ外せたんだし」

男は家に近づいていく。

玄関に続く階段を登る。

扉が開けられる。


木々の隙間の奥に月が見えて、それはすぐに男が閉めた扉に遮られた。

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