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【ボスゴリラーの野望X#DX】獺祭関係の論文を読み漁ってまとめてみた/前編

こんにちはボスゴリラーこと井口です🦍🦍🦍

私は、IT企業:株式会社Mountain Gorilla(*以降、MG)の社長をしながら、今年4月から滋賀大学大学院データサイエンス研究科に通って勉強と研究をおこなっています。

株式会社Mountain Gorilla


滋賀大学

大学院ではざっくりと言うと、DXで美味しいクラフトビールをつくる研究をしたいと考えています。現在は、一旦研究テーマを決めて関連する文献を読み漁り始めているという感じです。

研究構想や選定の背景は別でまた書きたいと考えています。あとは研究の進捗や成果などは、大学や教授に情報発信出来る範囲を確認した上で、出来る限り発信していきたいと思います。

ここでは、その研究の参考になるかな?!と考えて、獺祭まわりの文献を読んでみましたので、まとめてみたいと思います。

クラフトビールと日本酒の共通点、獺祭のいけてるところ(DX視点、経営視点)などを以下の構成でまとめてみました。気になるところだけ、飛ばし読みでも読み易いように書きたいと思います。
前編では下記について


後編部分で
4.経営の優れているところのまとめ
5.   全体のまとめ。特に製造業が参考になるところ
の2部に分けて書いていこうと思います。

クラフトビール「ゴリラービール」
獺祭

1.どの文献を読んだか?その整理と所感


まずは今回まとめるにあたって読み漁った文献を以下に挙げてみたいと思います。
論文を中心に結構読んだなぁー。という印象です。その中で傾向やキーポイントなど所感をまとめたいと思います。それぞれの文献に可能なものはリンクを貼っていますので、直接飛んで読んでください。

以下のまとめについて、
・経営視点とは、主に経営的に優れた点という視点で書かれた文献
・DX視点とは、主にデジタル技術やデータ活用による変革という視点で書かれた文献
としてあげています。

<今回ボスゴリラーが読んだ文献(動画)>

・DX視点

・経営視点

・その他

まずは様々な文献を読んで所感を一言で、
”旭酒造さんは日本の製造業の星” と言えると思います。

失われた30年とも言われる日本経済の中核を担ってきた製造業が、現在苦戦を強いられています。その中でも特に市場が大きく縮小している日本酒製造の業界で、逆に大きく売上を拡大して、グローバルにも市場展開している旭酒造さんは、まさに日本の製造業の期待の星と言えると思います。また、これからの製造業にもまだまだ可能性を感じます。

その期待から、様々な人が旭酒造さんに注目をして、その成功の考察をして多くの文献に残していると言うのが実態だと思います。以降ではこれをDX視点(前半)と経営視点(後半)で2回に分けて深掘りしていきたいと思います。

2.なぜ獺祭まわりの文献を読むのか?クラフトビールとの共通点


DXと経営視点それぞれで深掘りする前に、何故獺祭まわりの文献に着目しているのか?について触れておきたいと思います。
獺祭の取り組みは、経営者としても興味がありますが、それ以上に研究として興味があります。上でお話した通り、私はDXで美味しいクラフトビールをつくる研究をしています。そして、日本酒とクラフトビールは非常に共通点が多いので、これは獺祭周りの文献を一通り読んでおかなくっちゃね。という感じです。
以下にその2つの共通点を簡単に整理してあげたいと思います。

<日本酒とクラフトビール(ビール)の共通点>

製造視点で見ると良く似ていますよね?私がクラフトビール醸造に出会って感じたのは、意外に製造期間が短いなぁーという事です。約1ヶ月間はびっくりしますよね?!そして、日本酒も少しビールより長くて2ヶ月ぐらいです。

製造期間は短いけど、ワインの様に熟成期間をもつお酒があって、そのあたりがお酒の製造って時間かかるイメージを持つのかもしれません。
製造方法も同じ醸造酒に分類されて似ています。厳密には醸造酒の中でも細かく別れているのですが、材料として生物を扱うワインと違い、乾燥された材料を使った醸造酒として日本酒とクラフトビールは似ていると言えます。

上の理由で「絶対、私の研究にも役立つはず!」と思って獺祭周りの文献を調べています。

引用元:SGS総合栄養学院より

(おまけに)
私は歴史にも興味があるので、ビールと日本酒の発祥についても調べてみました。ビールは江戸時代にオランダ人が長崎の出島で醸造したのが始まりですが、本格的に醸造が始まったのは明治初期からの様です。それに比べて日本酒の発祥は不明です。どこを調べても正確な誕生は明記されていませんが、中国から日本への稲作の伝来と共に、米由来のお酒の醸造技術も持ち込まれたとする説が一般的で、紀元前200-300年頃の説が有力です。同じ様な製法で作られる醸造酒にも関わらず、その材料や歴史的な背景で発祥が違うのが面白いと思いました。また、何処かでこの二つのお酒の歴史についても深ぼって調べたいと思います。

3.DXの取り組みと優れているところのまとめ


さてここからは、本題の獺祭(旭酒造さん)のDXについて書きたいと思います。
まず最初に取り上げたいのはYouTube動画の以下のワンシーン

引用元:旭酒造株式㑹社YouTube

アナログかー! 

とかなり突っ込みたくなるシーンですが、分析室と呼ばれる部屋ではグラフを手書きでプロットしています。おそらく、計測した成分量なのか何らかの値を記入してるんだと思います。興味のある方は、動画開始から5分あたりにそのシーンがありますので、是非みてみてください。

次に着目したのは、このシーンですね。ちょっと戻って3分30秒あたりにあります。

中央の少し左ぐらいに小さい機器みたいなものがあるのわかりますか?この部分はデジタルですね。おんどとりと呼ばれるIoT温度計を使って、リアルタイムで温度データを収集して、(おそらく)エクセルで分析をしています。詳しいデジタル化の様子がわかる写真があったので掲載します。

引用元:日経経済新聞

私もリアルタイムで温度データ収集するなら、この”おんどとり”を使うかな?!と思います。機能、精度と価格のバランスが良いです。写真をみる限り、旭酒造さんで使われてる商品は、”RTR-502”という無線を使ってデータ収集出来るタイプで、価格は1万5,000円ほどです。

興味がある方は、下記の詳しいメーカーのカタログのページをご確認ください。

上記写真と全く同じ商品は現在は廃番して、後継機が出ていますので、その点注意ください。

上の写真をみると”K-12”という番号がテプラの様なものが貼られています。おそらくそれぞれの機器に採番して、設置する場所やタンクや仕込んでる日本酒と紐付ける為に使われていると思います。結構たくさんの機器数になると思いますが、それを全てIoT温度計に変えて自動収集にしていると予想できます。醸造において温度のデータはとても貴重で、仕上がりに直結します。従来の日本酒造でいうと定点的に(例えば、1時間おきにとか)蔵を巡回して温度測定して、それをノートに書き込むことをしていると思います。少し進んだ会社さんで、それをエクセルなどで集計したり、少し分析しているレベルでしょうか?旭酒造さんは、全ての樽の温度をリアルタイムで自動で収集している点がまず、凄いと思いました。

そして、紙でプロットしているのは恐らく、比重やアルコール度数など比較的に自動収集の難易度が高い値なのでは?と予測します。これらの専門的なIoT機器は、非常に高価(もしくは存在しない)なことが予想されますので、この部分は人が測定して、人が紙にプロットしているのだと思います。

結局は、人だろうがIoT機器だろうがデータを収集している事に違いはありません。それを割り切って、明確に決めてるところが美味いです!
・温度:汎用的に安価なIoT機器があり、機器購入の投資をしても効率化も含めて十分投資回収出来る
・アルコール度数, 比重など:専門的でIoT機器が高価(もしくは存在しない)、機器購入するよりは人がやった方がコストメリットが出せる
と判断していると思います。勿論他の諸条件もあると思いますが、人がやるべきところとデジタル機器がやるべき所はきっちりと判断して、投資と会社運営をされている印象を持ちました。

あとは紙を使ったグラフ化(可視化)も美味いなぁーと思いました。最近でいうとBIツールと呼ばれるデジタルな可視化ツールもありますが、自社に合ったカタチの可視化はお金も時間もかかります。それであれば、旭酒造さんの様にまずは人の手と紙で、人件費がかかっても可視化を実現する。そして、ある程度見たい値や可視化のビジュアルが決まったら、それをシステム開発会社などに開発の依頼して、デジタル化するアプローチが無理なく進められる方法として良いと思います。その辺り、もしかしたら旭酒造さんも一部紙でしていた可視化がデジタルに既に置き換わっているかもしれないと思います。

参考:BIツールまとめサイト

これらのアプローチから分かることは、データを収集・一元管理して美味しい獺祭をつくることに再現性を持たせてるという事です。それは、仕込み毎に味のバラツキが出ないという再現性もそうですが、それ以上に匠(杜氏)に依存しない再現性が重要だと思います。特定の人に依存することなく、美味しい日本酒づくりを標準化して、ある程度訓練された人であれば誰でもその美味しさを再現できることにデータ活用の強みを感じました。

一方で、DXを”デジタル技術とデータを活用して企業活動を変革する”と定義するならば、今回の文献からは、旭酒造さんですらその領域にまでは達していないのではないか?と感じました(偉そうなことを言ってすいません)。理化学研究所と東大との共同研究の”Inference-assisted intelligent crystallography based on preliminary data”という論文発表もDXの定義の1つである”変革”と域には達してなくて、企業活動での成果はまだまだこれからだと段階だと予想しています。

まとめると規模の小さい日本酒メーカーさんがデジタル化やデータ活用の投資を工夫しながら進めており、大企業にも負けないレベルのデータ収集と管理、標準化による高いレベルのものづくりを実現している事が本当に凄いことだと感じましたし、他の製造業にも参考になる部分が多いなぁーと感じました。業界で先駆けてDXに取り組むことによって周りからの期待も上がりますし、色々なリソーセス(お金、情報、人)が集まって更にDXの取り組みが進む好循環が生まれていると感じています。特に人の部分は大きいですね。産学連携で大学や研究所と取り組みを進められるところが大きな強みの1つに感じました。

最後まで読んでくれて有り難う御座います🦍🦍

後編、”4.経営の優れているところのまとめ” に続きます。
後編は、23年9月28日頃に配信予定です。

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