Tiffany×ゼクシィ『ティファニーブルー』はなぜ幸せの絶頂を描かないのか #4
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【シロウトからみた広告の世界】
広告代理店に新卒入社した、社会人1年目のシロウトが
広告をみて感じたあれこれを
真面目に、楽しく、時に生意気に綴っていくシリーズ。
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川村元気×ティファニー×ゼクシィ
これは私が最も好きな広告である『ティファニー・ブルー』シリーズの
第3弾の動画。
どの回も素敵ですが、初めて目にした第2弾が最もお気に入り。だけど第2弾だけ公式が出している動画が削除されてしまっている。。。とても悲しい。
どうやら期間限定公開の動画だった模様。もう一度観たいなあ。
さて。
このシリーズは、ティファニーとゼクシィのコラボ企画で、
『世界から猫が消えたなら』などを手掛けた川村元気さんが脚本を担当。
日常のなかでカップルが結婚を決める瞬間をリアルに描くショートフィルムです。
第3弾のテーマは「近距離恋愛」。
付き合って3年になる同棲中のカップル。お互いの距離が近すぎるがゆえなかなか結婚のきっかけをつかめず、知らず知らずのうちに思いがすれ違っていく。
そんな中迎えた、付き合って3年の記念日。
これまで彼女がどれだけ自分のことを思い、支えてきてくれたかを改めて思いだした彼氏は彼女にプロポーズし、2人は結婚することを決意する。
このストーリー、あなたはどう思いますか。
映像も、音楽も、展開もすごく素敵。
でもこれを実際に観た方の中には、「え、この彼と結婚決めていいの?」と少し心に浮かんだ方もいるのではないでしょうか。
そう。
この『ティファニーブルー』シリーズは、
幸せの絶頂で結婚を決めるわけではない、というのが特徴です。
これは、現代だからこその”結婚”の見せ方なのではないかと感じたので、
自分なりに考察していきたいと思います。
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「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」
これは2017年のゼクシィCMでのコピーです。
このコピーは多くの人々の共感を得ました。また、「結婚」を生業としているゼクシィがこのコピーを使用したという点で衝撃的でもありました。
このコピーが生まれた背景には、ゼクシィからの
「普段結婚を意識していない人にも、結婚したいと思えるCMを」というオーダーがあったといいます。
(アドタイのインタビュー記事はこちら↓)
https://www.advertimes.com/20171207/article262533/
お見合い結婚が一般的だった時代もありますが、
だんだんと自由恋愛からの結婚が主流になっていった。
大企業に入れば一生安泰、という時代は過ぎ
「個人の力」が問われるようになっていった。
頑張らないと、自立しないと、生きていけない。
恋愛するほど暇じゃない。
それでも現代には楽しいことがたくさんあります。
スマホを見るだけで誰かと繋がれるからそこまで寂しくもないし、1人の方がなんだかんだ気楽。
恋愛しなくても、別に幸せ。
こうして、いつしか「恋愛」は
「時間もお金もかかる、コスパの悪い嗜好品」というカテゴリに追いやられてしまったのではないか。
そして、「とはいえ結婚はできた方がいいよね」という価値観だけが残り、
段階がひとつすっぽ抜けたような、なんだか筋の通らない世の中の風潮に
みんながひそかに苦しんでいたのではないか、と感じます。
でも、結婚は
幸せになるための、ひとつの「手段」に過ぎない。
だから、自分が幸せになる方法は自分で決めよう。
そんなゼクシィの思いが、このコピーには込められているのではないでしょうか。
一方、『ティファニーブルー』シリーズとゼクシィのこの広告コピーが出るずっと前の2013年に、ティファニーのキャッチコピーはこう言っています。
ひとりで生きていけるふたりが、それでも一緒にいるのが夫婦だと思う。
そして翌年の2018年から『ティファニーブルー』シリーズが開始されたのです。
なぜ『ティファニーブルー』では、幸せの絶頂ではなく、むしろ厳しい状況で結婚を決める様子を描くのか。
それは、
結婚とは、幸せのゴールではなく
幸せになるための手段であり、2人の決意だからではないでしょうか。
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最後に。
この脚本を担当した川村元気さんは、このように言っています。
誰もが最高の関係の時に結婚を決めるわけではないと思っています。厳しい状況の時に結婚を決める。そこから二人で一緒に上がっていく。そんな人間関係も素敵だなと思い、この物語を書きました。
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