毛の話
毛って不思議だよね。
髪の毛、眉毛、睫毛、髭、胸毛、等々、人体のあちらこちらにある身近な存在。我々の外見的特徴を形成したり、急所を保護したり、何もない場所を賑やかしたりするために存在する彼らだが、歓迎されるものとそうでないものがいる。後者なんて「ムダ毛」呼ばわりだけど、肝心な部分に生えてなかったら「この〇ゲー!」ってどやされちゃったり。
それに、例えば「サラサラな髪の毛」や「長い睫毛」のように、かつてどんなに素敵だと褒めそやされていても、指定の場所から外れたその瞬間に「抜け毛」になってごみ扱いだ。
特にウェーブがかった奇抜な形をした抜け毛の一群がいるが、彼らに至っては、久々に開いた本の間とか、冷蔵庫の上とかで発見されると、発見者をとんでもなくブルーな気持ちにさせる力を持っている。きっと彼らは進化の過程においてテレポテーションを獲得したに違いない。今後の研究が待たれるところである。
そんな毛にまつわる私のジンクスについて。
お宝と大仏さまと努力義務
宝毛ってご存じだろうか。福毛とも呼ばれるらしい。
みんな大好きwikipedia大先生を引いてみると…
となっている。
余談だが、大仏の眉間にある黒子。
あれは黒子ではなくて、正確には『白毫(びゃくごう)』と呼ばれるもので、約4.5メートルに達する長い宝毛を巻き付けたものなのだという。
だから、眉間に黒子があるだけで「大仏君」とあだ名をつけていた子供たちを見かけたら、我々見識ある大人は「大仏の眉間にあるのは白毫であるからして、大仏君と呼ぶのはいささか異なると思うよ」と懇切丁寧に説明する義務があるということである。
ただし、私が言ったことを鵜呑みにしてしまって子供の保護者達に通報でもされたら困るので、努力義務という形でお茶を濁す私を許してほしい。仏の顔に免じて。
話が逸れたが、私にもあるのだ、宝毛が。
アイツとの馴れ初め
多分、社会人になったある日のこと。
右耳にガサガサと違和感を感じたことがあった。
とても嫌な予感がした。
学生時代の終わりごろ、左耳が突発性難聴的なものになったことがあったためだ。
こうやって書くとちょっとアーティスト的なサムシングが感じられてかっこいいのだが、私のそれは何のことはないただのストレスが原因だったのであって、音楽への情熱とか、メンバーとの音楽性の違いだとか、受け入れがたい社会への反発心だとか、天才が故の葛藤だとかそういうことは一切ないのでこの話はここで終わりにする。
とりあえず、また難聴になったらいやだなぁくらいのモヤモヤとした気持ちが立ちこめるでのだった。が、何かそれとは違うことが分かった。
耳の中、そんなに深くないところに何かいるのだ。
何かがガサガサ言っているようだ。
え、虫じゃないよね?と思ってみたが、耳の中に虫が入ったこともないし、一人暮らしなので、誰も返事をしてくれる人もおらず、ただただ、右耳周辺を触るとガサガサ音が鳴る。
そうして格闘すること数分。(ちなみにこの数分の格闘の結果、私の耳、特に耳の穴を塞ぐように出っ張っている部分の裏側が、相当毛深いことが分かったが、N数が足りないので有意な結果かは今後の研究が待たれる。左右の有意差は乏しく、いずれも毛深かった。少々恥ずかしかったためここに記して供養しておく。皆さんの調査結果を募集しております。)
遂に、ガサガサの正体が分かった。
異常に長い毛が生えている。耳の中から。
鏡を見ても、白髪というか限りなく透明なので良くわからないが、おそらく5㎝以上はあろうかという長さがある。指で摘まんで引っ張ると、耳の中にも音が響いているので間違いない。
それが、アイツとの出会いだった。
そして当時の私はやっぱり大好きwiki先生の助けを借り、医学的異常ではないことを認めて安堵すると同時に、この長さでそこそこ感動しているのに「数メートルの白毫ってどうなってんだよ」と突っ込みを入れるが、やっぱり一人暮らしの部屋では誰も応じてくれなかったのである。
咳をしても一人。
白毫を嘆いても一人。である。
宝毛と私のジンクス
結局なんであるのかはよくわかっていないとwiki先生も宣っているが、「伝承」の欄には以下のように書かれている。
ということで、何かとラッキーなことが起きるらしい。
ただ、これがあるからって身長が5センチ以上伸びて、宝くじに当たって、彼女も出来て、人生バラ色みたいなことが起こるわけでは一切ない。いや、もしかしたらこれから起きるかもしれないので断言は避けておこう。
ただ、個人的にはなんだか嬉しいのだ。
私の仕事が人の話をよく聞く仕事だということもあって、耳に出来るというのはちょっと成果のように感じてしまう。もしかしたら耳が疲れて老化して意味の分からない毛を生成してしまっているだけかもしれないけれど、でも、あぁ、よく働いたんだなぁと自分で自分を褒めたくなるのだ。
ちなみにラッキーなことはないと言ったが、意外とそんなこともない。
仕事が上手くいっている時にアイツは良く現れる気がするし、今回見つかったのは年末でちょうどこれを書いていた時期。
ご覧の通りなかなかのスキを頂いたことも嬉しい出来事だったし、記事の中で書いた転職も実は上手くいって、4月からの勤務先も決まってお気楽な年末年始を過ごせたのだった。あれ、実は結構凄い?
さて、カンの良い読者の皆様ならお気づきかもしれないが、コイツはあの時のアイツではない。
はい、私にはそんな丁寧な管理は出来ないため、定期的に切れてしまいます。植物の管理はコマメに出来るくせに自分の宝毛の1本守れない私なのでありました。
ただ、守るって言ってもなかなか難しいというのが実際のところ。右耳だけ異様に不潔になっていく自分に耐えられますか?耳毛の濃い私には恥ずかしいので無理です。
それから、間違ってなくなっても、忘れた頃に意外と再生している生命力の強い宝毛を手に入れたようなのです。定期的に節目に現れてくれるため「あぁ、また会ったね、もうそんな時期かー」と再会を喜べるので、これはこれで愛着が湧いて悪くないなと思っているのでした。
そんな愛すべき毛の話。