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京都の底

全てがここに落ちて来る気がした。

星も月もなんだって。

ここに来ると安心した。夜人気のないここでいつも空を眺めていた。周りには何もないのに、音があった。

音だけがここには迫って来た。
光も人も隔絶されたこの場所だけが。

今の時代にあって、普通に生活をしていたら人からは逃れられない、絶対に。そうやって街の仕組みができている。

だからたまに逃れたくなる。誰もいない、見えない場所へ。

それが僕に取ってはこの場所だった。

夜、人気のない御所だけが。

たまにパトロールの車が通る。
その時になって、ハッとする。そうだここにいたのだと。

それまでのベンチに腰掛けてからの何分かは、まるでそこに溶けたように、ただそこにあるだけだった。

僕という存在が消えてしまったかのようにさえ感じる。感じるのは後になってからで、溶けている時は何も感じない。

ここは京の底だと思う。全てがここに落ちてくる。皆がここに引き込まれて行く。惹かれてゆく。

これが引力かぁ…なんて呟いて、
一人で空を眺めていた。

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