マンション投資のウソ・ホント その2 「節税になる」「生命保険代わり」編

前回に引き続き、マンション投資の実際のところを書いていく。

※当記事は、過去に私自身が「GAGAZINE(ガガジン)」に投稿したものを
 加筆修正したものです。

なおこれはあくまでフィクション? である。
不動産屋のいう事は信じてはならないのだ。

2.節税効果について

 そもそも「節税」とはなんぞや。マンション投資における「節税」とは、いわんや所得税のことである。
 所得とは、収入から支出を引いた最終的な手取り額のこと。所得税とは、その所得にかかる税金。所得の金額が大きいほど所得税額は増える

 誤解を恐れず言えば、
「僕は個人事業主として年収800万円でしたが、仕事の経費として300万円使ったので、所得税額は年収500万円で計算してください!」
 ということである。つまり、領収書をたくさん集めてそれらを経費としてをたくさん計上すれば、所得を減らすことができ、結果的に所得税として持っていかれる金額を減らせるのだ。

 ではマンション投資で何が経費となるのか?
 以下に羅列する。

1.購入時の経費
  ・仲介手数料
    ⇒販売業者等が間に入っている場合、仲介手数料が取られる。
    2070万であれば(2070万×3%)+6万+消費税で735480円となる。
  
  ・不動産取得税
  ・登録免許税
   ⇒この二つは詳しい計算を解説するのが面倒なので割愛する。このケースならだいたい30万くらいと思ってよい。

2.毎年の経費
  ・月々のローン返済額のうち、金利分。
    ※元金については、資産を取得するために支払っている費用なので
     経費にはあたらないのだ。
   ⇒このケースだと毎月、返済額85000円ほどのうち、46000円程度
  
  ・減価償却費
   ⇒最初はおよそ年間45万程度

  ・固定資産税
   ⇒毎年4〜5万程度
 
(減価償却費は確定申告のやり方によって変動する。土地と建物の按分比率とか……。時々これを完璧にミスってしまっている人を見かける。もったいない。)
 上記の条件であれば、初年度はおよそ158万円程度を経費として計上できることになる。年収1000万の人ならば、所得を850万円くらいに抑えることができる。そこそこ節税になるかもしれない。

 ただし翌年からは取得時の経費がなくなるので55万程度に減ってしまう。
 
 してこの経費、毎年どんどん減っていく。何故なら、返済額に占める金利の額は毎月減っていくためだ。借金を返す目線で考えれば徐々に元金の比率が増えていくのはいいことに感じるが、節税という目線で考えると致命的な問題なのだ。
 5年もたてばほとんど節税効果はなくなり、節税どころか納税しなくてはならなくなる。

 ここでポイントとして解説しておく。
 このマンションをこういう買い方をしてしまうと、前回の記事で述べたように、実際にはほんのわずかの現金しか手元に残っていない。
 にも関わらず、税制上は
『年間の、家賃から管理手数料と積立金を引いた手取り収入額』
(本ケースでいえば86500円)
から
『年間のローン返済額のうち元金分』
 を引いた金額が所得として計算されてしまう点。
 つまり上記の例なら
手取り賃料86500円から、ローン返済額のうち金利39000円を引いた47500円×12=570,000円が所得となる(ざっくり計算)。

 つまり、実際に自分の手元に残っている金額よりもうんと多い額が所得として計算されてしまうので、節税どころか、感覚的には「なんでこんなに払わなきゃいけないんだよ!」な状態。現金は手元に残らないわ税金を余計に持っていかれるわで、踏んだり蹴ったりなのだ。
 だいたい、年収4~500万円程度の人間が節税なんて言うのはまだ早い。その程度の年収で、有効な節税方法なんてたかが知れている。だからそんなもん気にするのは4桁超えてからでいいのだ。

結論
マンション投資は節税になる!(節税になるとは言ってない)


最後にメリットの3。

3.生命保険代わりになる

 これもよく言われるメリットである。

 これについても少し解説が必要かと思う。
マンションを購入するローンを組む際には「団体信用保険」という保険に加入することができる(というか必須のことが多い)。
 この団体信用保険(略して団信)とは何かというと、ローンを組んだ本人が死亡、もしくは高度障害などの、まともに働けない状態に陥った場合は、ローンの残額が棒引きとなるというものである。

 なのでよく営業トークとして「もしもあなたが亡くなったとしても、ローンはなくなりますし、マンションという財産を奥様やご家族に残せますよ」というものだ。

 しかしどうだろう。その残されたマンションだが、東京の都心5区(千代田・港・新宿・中央・渋谷)などで、しかも好立地であれば、築15年くらいであっても1500万円以上で売れることが多い。
 ところが、ちょっとでも場所のランクが落ちると、築15年で1000万円を切るなんてこともザラだ。

 第一、1500万円ぽっちを拾うために何年もローンを払うくらいなら、同じ金額で掛け捨ての生命保険にでも入った方がよほど金がもらえる。月3万もかければ数千万から億の保険金がおりるのだから。
 しかも死亡時や高度障害で団信が適用されるというのも100%の確率ではない。審査があり、場合によっては団信が降りないことがある。
 そうなれば家族はゴミになったクソマンを抱えて、ローン地獄が続くのである。

 だいたい、死亡時の保険料というのは死後ただちに支払われる。なぜなら、死後すぐに訪れる金銭的な負担(葬式代、お墓代、収入源など)を減らすためのものだからだ。
 マンションは物件や金額にもよるが、どれだけ早くとも、実際に現金が手に入るまでには一か月程度はかかってしまう。
 「死後に資産が残せる」とならまあ、言えなくもない。しかし「生命保険がわりと」は逆立ちしても言えない内容だ。

 販売営業に引っかかってマンションを買ってしまった人の殆どがうまく利回らず、毎月ローンの引き落とし日近くになると胃が痛む思いをしている。もともと素直に良かれと思って買ったものだから、ショックも大きい。

 女房には嫌味を言われ、晩酌も発泡酒を1本飲めれば良いほう。タバコもこれを機に辞めた。
「何でマンションなんか買っちゃったんだか!」女房の口癖だ。俺だって今はそう思っている。でもあの時は、良かれと思ってやったことだったんだ。
お前らにも楽をさせてやりたい、少しでも生活が安定すれば、その一心だった。
 タバコが辞められたのはある意味良かったのかも知れないがーー

 持っていればいるだけ支払いがかさむ重い負債を抱え、暗澹とした気持ちで毎日満員電車に揺られているお父さんも少なくないのだ。

 じゃあ、買ってしまったらどうしたらよいのか。
 さっさと売ったらいいわけなのだが、そこにも落とし穴はある。
 金額が高い商品なのだから、その分落とし穴は多いのだということを認識せねばならない。

 というわけで、次回は「親孝行、したいときには親は無し。クソマンション、売りたいときに金は無し」編である。

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