「GOSICK」原作+アニメ感想まとめ2024
原作小説→配信で再履修した「GOSICK」の感想まとめ2024です。初出はえっくす。
もともとアニメ放映時にたいへん好きになり、並走して原作小説を買い集めて読み、BD-BOXが出たので買ってもう一度観て、折に触れ原作小説を読み返し、ということをしていました。そのあたりの感想は失われているので、まとめているのは2023から2024のえっくす分だけです。
アニメの解釈が好きなので、原作小説よりアニメ派です。そもそも原作は、新大陸シリーズをはじめておいて放置されてしまったので恨みもあります。放り出すならスピンオフをはじめないでほしかった。
▼ 桜庭一樹の原作小説(角川文庫)
▽ GOSICK
https://www.kadokawa.co.jp/product/200905000136/
ヴィクトリカの優秀さと一弥の生真面目さはどちらも好き。そして何より、〈野兎〉ふたりが復讐を果たしていたというのがいい。そうしたところで、世界はちっとも揺るがないとしても。
2023年12月14日
▽ GOSICK Ⅱ その罪は名もなき
https://www.kadokawa.co.jp/product/200905000137/
何回読んでも、金色の髪をもつ彼らを〈灰色狼〉と呼称することに慣れないものの。母の無実を晴らし、友達の命を救うヴィクトリカは、狼でも人形でもなく、ちゃんと血の通った少女であると実感します。
2023年12月15日
▽ GOSICK Ⅲ 青い薔薇の下で
https://www.kadokawa.co.jp/product/200905000138/
離れているとヴィクトリカに対して強気な一弥が、そのこと自体は微笑ましいとしても、どこか帝国軍人三男の気配があるのでちょっとしんどい。安楽椅子探偵ならぬ猫足寝台探偵じゃあ、やっぱりさみしい。
2023年12月18日
▽ GOSICK Ⅳ 愚者を代弁せよ
https://www.kadokawa.co.jp/product/200909000536/
自身を〈愚者〉と称した〈リヴァイアサン〉の叫びを、代弁してくれたのがヴィクトリカで良かったという思いと、そうした頭脳をもつ彼女すら囚われの身であることの哀しさと。人の生命はすべて〈人造〉と言えるか否か。
2023年12月19日
▽ GOSICK Ⅴ ベルゼブブの頭蓋
https://www.kadokawa.co.jp/product/200909000537/
誰もが誰もを騙し合って利用し合うなか、一弥とヴィクトリカ、そしてヴィクトリカとコルデリアだけが、愛しい相手のために行動する温かさ。欧州に蠢く闇は、古きものだけではなくて、そのせいであまりに複雑だ。
2023年12月20日
▽ GOSICK Ⅵ 仮面舞踏会の夜
https://www.kadokawa.co.jp/product/201006000112/
被害者と犯人よりも、ほかのふたりの真相のほうが面白く感じてしまう、けれど。犯人がぶじに逃げ仰せて、一弥とヴィクトリカがようやく学園へ戻れて、安堵する。仮初の安寧だとしても。
2023年12月21日
▽ GOSICK Ⅶ 薔薇色の人生
https://www.kadokawa.co.jp/product/201011000072/
いちばんの薔薇色は、青から褪せた銀だったという結末。かつての青い薔薇を生かした後ろ盾は、いったい誰だったのだろう。
2023年12月22日
▽ GOSICK Ⅷ 上 神々の黄昏
https://www.kadokawa.co.jp/product/201103000093/
一弥もヴィクトリカも十五歳の子どもでしかなく、国々を巻き込んだ大きな大きな嵐には抗う術がないことに、ひどく打ちのめされる。ヴィクトリカを想ってくれるひとたちが居ることには救われるけれど。
2023年12月25日
▽ GOSICK Ⅷ 下 神々の黄昏
https://www.kadokawa.co.jp/product/201106000043/
生き抜くためとは言え、旧大陸から新大陸へ移動してしまうのは、やっぱり寂しい。でも「もうこれきり、離れるものか」に安堵する。ともには死なないとしても、一秒でも長く、ヴィクトリカと一弥が一緒に居られますように。
2023年12月25日
▽ GOSICKs 春来たる死神
https://www.kadokawa.co.jp/product/200909000535/
連続短編、どころか短編集またぎをすることを毎回忘れるので毎回驚きます笑。本編には偽者アブリルちゃんが出てこないというのが、本編はあくまでヴィクトリカと一弥の物語だと言い切っているようで好きです。
2023年12月16日
▽ GOSICKs Ⅱ 夏から遠ざかる列車
https://www.kadokawa.co.jp/product/201006000111/
じつは恋と愛が詰まった一冊。相手のために持ち得る力を最大に使っていても、そのことが伝わらなければ「謎」になる、ような。
2023年12月17日
▽ GOSICKs Ⅲ 秋の花の思い出
https://www.kadokawa.co.jp/product/201006000113/
花とともに謎を届ける一弥と、それを受け取るヴィクトリカという構図があまりに幻想的で、短編集でいちばん好き。周りにとっては謎であっても、当人たちは願った通りになっているという真相も好き。
2023年12月23日
▽ GOSICKs Ⅳ 冬のサクリファイス
https://www.kadokawa.co.jp/product/201012000694/
リビングチェス大会が、戦争の気配で浮き足だっていて、ずっと薄暗い印象。一方で、一弥以外の前でも思い切り泣く姿を見せるヴィクトリカが、弱みを見せられる相手が増えた証でもあって、あまりに胸に迫る。
2023年12月24日
↓↓↓
▽ GOSICK RED
https://www.kadokawa.co.jp/product/321604000128/
ヴィクトリカと一弥は変わらないのに、取り巻く世界があまりに変わって戸惑う。〈新大陸〉の脅威であるマフィアは、とかく物理的な暴力なのがつらい。マシンガンであっけなく、とても多くが死んでしまう。そこに言葉の入る余地がない。
2024年2月5日
▽ GOSICK BLUE
https://www.kadokawa.co.jp/product/321407000265/
旧大陸の灰色狼または金色の妖精あるいは美しき怪物は、新大陸では勇気りんりんのワンダーガールになる! 入れ替わりという古典トリックなのに、犯人がこんなに堂々としているなんてね!
2024年2月6日
▽ GOSICK PINK
https://www.kadokawa.co.jp/product/321507000136/
〈ほーむ〉とは何かを尋ね続けるヴィクトリカが、可愛らしくも切ない。あの学園で過ごした小さな可愛らしい〈家〉も、彼女にとってはただの〈檻〉だったのだろうなと。いまはただ、一弥と共に居られるところが〈ほーむ〉であれば、いいね。
2024年2月7日
▽ GOSICK GREEN
https://www.kadokawa.co.jp/product/321604000129/
お金(GREEN)そのものの話なのに、これがいちばん経済の印象が薄くて好きです。「意地悪」な建築家に〈旧大陸〉感があるからかもしれない。最後に「会いに行く!」宣言があってうれしいと思っていたのにここで刊行は途切れると!
2024年2月8日
〈新大陸〉編、気が向いたら再開してくれるのかしらん。いままでも待っていたし、これからも待っていますよ。最近は十年越しに再開なんてザラですからね!!!
▼ アニメ『GOSICK』
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B00FNISQ64/ref=atv_dp_share_cu_r
BD-BOXがあっても、配信のほうが便利でそちらを観てしまう怠惰さ……
アニメは、原作の芯を理解したうえでの大胆な構成の変更と、サブタイトルの上手さが好きです。
1話「黒い死神は金色の妖精を見つける」
いちばんの復讐が、いちばん最初に為されている倒錯感が好きです。美しい人形のようなヴィクトリカ……よりも、図書館の温室のほうが気合いを入れて描かれているようにも思える倒錯感もきらいじゃないです。
2024年1月4日
2話「死者の魂が難破船をおしあげる」
駆け足のクイーンベリー号。一弥がごくごく当然のようにヴィクトリカに手を差し伸べたり、濡れないように背負う姿がたまらなく好きです。
2024年1月5日
3話「野兎達は朝陽の下で約束をかわす」
亡霊のクイーンベリー号事件は、女性ふたりが銘々に復讐を遂げているところが好きです。たとえ法的に裁かれようとも、彼女たちの人生を狂わせた大人どもは皆死んだ。あとはグレヴィールとヴィクトリカが異母兄妹だと知る一弥が原作ともども好きですね!!!
2024年1月8日
4話「金色の糸はつかのまを切り裂く」
アブリルちゃんのために、ちゃんと話数を費やすアニメGOSICKは好印象。しかも複数話! 今回はミリィ・マールの亡霊までしか進まなくてビックリしたァ!笑
2024年1月9日
5話「廃倉庫には謎の幽霊がいる」
一弥が黒い死神で、ヴィクトリカが金色の妖精という対比がとても好き。どちらも旧世界でしか生きられない存在であることを含めて。
2024年1月10日
6話「灰色の狼は同胞を呼びよせる」
ここから「その罪は名もなき」編。
ついにお着替えヴィクトリカがうれしい。一弥とのケンカも、寝ぼけた様子も可愛いのに、灰色狼たちに向ける眼差しは険しくて哀しい。
2024年1月11日
7話「夏至祭に神託はくだされる」
前話のブライアン・ロスコー早々登場+ほぼ喋ってないけどエンドクレジットありが、視聴者に対する今話の伏線だと思うと上手いなと思います。それにしても、長老の占い後に泣いていた理由を咄嗟に「背が伸びないと言われた」と答えるヴィクトリカの聡さといじましさ!
2024年1月12日
8話「過去の王国に遠吠えがこだまする」
一弥の手を必死で掴むヴィクトリカはやっぱり胸に迫る。それはそれとして、過去の事件の犯人は自滅ではなくアンブローズが手を下したみたいになっているし、現在の事件の犯人はしれっと置いて行かれてこの後私刑コースではと思うとセイルーン人恐いなって思います。苦笑
2024年1月15日
9話「人食いデパートに青薔薇は咲く」
ここから「青い薔薇の下で」編。
ベッドまで電話を持ってきてくれるセシル先生からの不意打ち注射を受けるヴィクトリカは、アニメだからこそコミカルさが増して好き!笑
2024年1月16日
10話「風邪ひきは頑固な友人の夢をみる」
9話の終わりからアレェ? と思っていたら、大胆な構成の組み替えで前後編にまとまって面白かったです。警官隊ありきで部屋を暴く展開含めて。
でも一番は、ガラスの靴のパイプ置きもらって、いつもの白い陶器パイプを置いて微笑むヴィクトリカですね!!!
2024年1月17日
11話「そのドリルは雄弁に愛を語る」
アニオリ導入からのジャクリーヌ騒動、めちゃくちゃ構成が上手いなと改めて思います。そして「愛を知らない灰色狼」に涙をぽろぽろ零すヴィクトリカが痛ましくて愛おしい。その後、ヴィクトリカのところへ走っていく一弥も愛おしい!
2024年1月18日
12話「夏の午後に蝉の声を聞く」
話は「夏から遠ざかる列車」だけれど、本当に描きたかったのは、ヴィクトリカと一弥だけの平穏な日常、思い遣る会話なのだなと判って胸が熱くなる。ヴィクトリカがもうお着替えしているから、すわ愚者を代弁する導入があるのかと思ったけども、つまりあれは夏服か!
2024年1月19日
13話「愚者は己の代弁者を指名する」
ここから「愚者を代弁せよ」編。
ほぼヴィクトリカと一弥しか存在し得ない平穏な夏が終わってしまって、他人と思惑が二人を遠ざけようとする秋が来てしまった。そのことに哀しみを感じながらも、ヴィクトリカを思いやれるアブリルは愛おしい。騒々しくとも!笑
2024年1月22日
14話「意地悪フリルは屁こきいもりを糾弾する」
セシル先生や一弥は善意とはいえ、ヴィクトリカを無理に教室へ連れていくのは、どうしても苦手。ひとと関わる機会は必要だとしても、それが凡庸なソヴュール貴族子弟である必要はないと思う。……一弥もアブリルも留学生というのがそもそも皮肉だしね。
2024年1月23日
15話「二匹の怪物は心をかよわせる」
リヴァイアサンの最期は、何度目の当たりにしても哀しい。最期は孤独でも、その人生には愛があったと、愛を残したと知ってはいても。ヴィクトリカと一弥の繋いだ手が、いまはまだあまりにか細くて、だからこそ幻想的な美しさも感じてしまう。
2024年1月24日
16話「落下させるマリアは蠅の頭をもつ」
ここから「ベルゼブブの頭蓋」編。
ヴィクトリカと一弥の別離がすぐ解消されてホッとする。これはアニメのよいところ。見た目は似ているのに、服のちょっとした違い、端々の立ち居振る舞い、そして沢城さんのお声で妖艶さが生まれるコルデリアには感嘆します。
2024年1月25日
17話「螺旋の迷宮にその箱はねむる」
謎解きしないでもう列車へ!? その分、コルデリアからヴィクトリカへの愛情、ヴィクトリカと一弥の愛情に焦点が合っていたのは好印象。このままマスカレイド号の騒動に繋がるから、ベルゼブブの頭蓋はこのくらいのボリュームでいいのかもね。
2024年1月26日
18話「漆黒の列車はいくつかの嘘を運ぶ」
ワァーーー「仮面舞踏会の夜」編が1話で終わった!!!笑
でもこの思い切りはきらいじゃない。ミスリードの他所ごとも多かったから、全部を関係者にするのは理にかなっている。だけど、ヴィクトリカが示すべき「力」は、銃を撃てる物理的なそれでなく、智慧のはず。
2024年1月29日
19話「薔薇色の人生は新雪に埋もれる」
ここから「薔薇色の人生」編。
とはいえ事件はもう過去のものだし、まだ現場にすら着いていない。描かれているのは、ヴィクトリカと一弥が互いを思い合う姿。……あと、ヴィクトリカの冬の薔薇色ドレス!笑
2024年1月30日
20話「ファントムの幽霊に導かれる」
引き離されてしまったヴィクトリカと一弥を逢わせてくれたこともあって、ブライアンの〈同時存在〉が倍増しで格好良く観える!!!笑 ようやく本領発揮のヴィクトリカは愛おしいし、文句を言いながらも庇ってくれるグレヴィールもとても好き。
2024年1月31日
21話「聖夜の鐘は刻を追いたてる」
ヴィクトリカが父に真相を語らなかったのは、利用されてなるものかという意志とともに、ココ=ローズへの思い遣りがあったからだと信じています。彼女の静かな余生を守るために。愛する息子との日々を守るために。
2024年2月1日
22話「クリスマス・キャロルは窓辺の幸いを飾る」
連作短編集に基づいた、クライマックス前のインターバルなのかと油断していたら、ヴィクトリカの誕生日祝いから一弥の強制送還がアニオリで展開されていて核心でした。〈金色の妖精〉をアブリルに渡して、ヴィクトリカは〈美しき怪物〉になるのは私的にアリです。
〈美しき怪物〉からして原作にはないのですが、私は原作の「冬のサクリファイス」から「神々の黄昏」の流れがすべて腑に落ちているわけではないのです、むしろアニメのこの展開は納得できています。いまの懸念は、一弥がただただヴィクトリカの弱みに観えてしまわないかということだけです。
2024年2月2日
23話「灰染めのチェスにチェックメイトを告げる」
だいぶアニオリが入っている「神々の黄昏」編!
コルデリアが娘の身代わりになることも、片方のブライアンだけが残ることも原作通りだけど、その舞台が燃え盛る演説台になり、コルデリアが刃物をふるうのはアニメだからこその改変だなと思います。刃物だけが違和感。
〈美しき怪物〉の心臓たる〈ウサギ〉は本当は唯一無二なのに、怪物に縋りたい人間が皆ウサギになることで代替の効く数多の心臓が生まれ、結果怪物を永遠に生かすことになる描写があまりに秀逸な皮肉。〈特別な女〉に産ませた娘を〈怪物〉かつ〈ホムンクルス〉と扱うのも秀逸。なのでトータルで好きです。
2024年2月5日
+
ところで、私はGOSICKアニメシリーズが26話あると思い込んでいたので、「〈新大陸〉編は4冊しかないから、最後の4話と並行して読んで同じタイミングで締めよう!」と考えていました。ところがどっこい24話! 明日で観終わる!! まあ仕方ない!!!笑
24話「死神の肩越しに永遠をみる」
大団円と言うより、happily ever afterと言いたい。何故なら「もうこれきり、離れるものか」なのだから。けれど作中はまだ1929年で、外側の私たちは、もっと大きな嵐が来ることを知っている。それでも、いま再び並んで歩くふたりに、とびきりの祝福を贈りたい。
一弥の従軍内容も、ヴィクトリカの肌に住所が刻まれないのも、アニメとしてここまで積み上げてきたからこそ、改変されていても受け入れられると、私は思います。通る道は変わっても、ヴィクトリカと一弥の本質は変わっていないのだから。アニメGOSICK、改めてたいへん良かったです。
2024年2月6日
奇しくも旧大陸の終わりを観て、新大陸のはじまりを読んだ今日。
旧大陸の呪縛さえ残るなか、新大陸で新たな呪縛を受けるのだなと強く感じます。前者が古き血と政治なら、後者は新しき家族と経済。旧大陸だって軽々にひとは死ぬのに、新大陸のほうが即物的にひとが死ぬ印象なのは何故だろう。
2024年2月6日
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?