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Age Well Japan Day1 セッション報告 | 世界の高齢化社会におけるAgeWellビジネスとイノベーション

9月30日〜10月1日の2日間にわたり開催したAge Well Japan 2022 Day1の各セッションについて、もっと詳しくお伝えして参ります。

本noteは、
- Q-HUB代表Mario Geißler氏
- ACCESS Health・インターナショナル リージョナルディレクターChang Liu氏
- Ageing Asia Founder Janice Chia氏
- デジタルウェルネスジャパン設立者出村宣子氏ら、
世界各地でAgetechの最先端で活躍されている4名による、世界の高齢者社会におけるAgeWellビジネスの可能性や起こりうるイノベーションについて議論したパネルディスカッションについてです。

日本だけに限らず、欧州やアジアのAgeWell領域でどのような取り組みが行われているか知りたい方は、特に必見です!

Age Well Japanの全貌について知りたい方はこちら↓

目次
(1)登壇者紹介
(2)AgeTechによるイノベーション機会はどこにあるのか
(スピーカー:Mario Geißler氏)
(3)中国におけるAgeTechの今後の可能性について
(スピーカー:Chang Liu氏)
(4)エイジング領域におけるビジネスポテンシャルについて
(スピーカー:Janice Chia氏)
(5)デジタル技術とウェルビーイングの融合について
(スピーカー:出村宣子氏)
(6)Q&A
(7)まとめ

(1)登壇者紹介


<パネリスト紹介>

Mario Geißler氏
Co-founder & managing director of Q-HUB / Q-HUB 共同創業者 兼 代表

<プロフィール>
Q-HUBの共同設立者であり、マネージングディレクター。住民の平均年齢がヨーロッパで最も古い主要都市であるケムニッツを拠点にドイツで「エイジテック・ムーブメント」を立ち上げる。 Q-HUBはAge Techのスタートアップ企業が新しいビジネス開発、資金調達、組織改革、イノベーターとのマッチングなどを支援しており、それらのスタートアップ企業や既存企業のイノベーターが集まるAgeTechカンファレンスも毎年開催している。

https://agewelljapan.com/ja/index.html


Chang Liu氏
ACCESS Health International Regional Director
/ ACCESS Health・インターナショナル リージョナルディレクター

<プロフィール>
ACCESS Health Internationalのリージョナルディレクター。ブラウン大学で医療経済学を専攻し、医療サービス研究の博士号を取得。高齢化イノベーションプラットフォームの責任者であり、同地域の調査・コンサルティング業務をリードしている。ACCESS Healthでの仕事に加え、香港中文大学とデューク昆山大学の非常勤教授も務めており、Duke-NUS Graduate Medical SchoolとDuke-NUS Center for Ageing and Educationの医療サービス・システム研究部門の助教授も務めていた。

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Janice Chia氏
Ageing Asia Founder & Managing Director

<プロフィール>
シンガポールを拠点とし、アジア太平洋地域の高齢者産業のネットワーク構築に取り組むシンガポール企業、Ageing Asia エイジング・アジアを立ち上げた創設者。2009年の開業以来、15カ国から400以上の住宅・高齢者介護施設を訪問してきた膨大な経験から、住宅、医療、介護モデルにおける世界のベストプラクティスをアジア市場に適応するためのコンサルティングにも積極的に取り組んでおり、高齢化ビジネスにおける各国の公的セクター、民間企業、非営利組織などのアライアンスを主導している。

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出村宣子氏
デジタルウェルネスジャパン設立者 / デジタルウェルネスラボ共同設立者

<プロフィール>
国際基督教大学で臨床心理学を専攻し修士を取得。教育現場や企業でカウンセリングや研修をしつつ、現在は東京大学で予防的アプローチとしての健康教育について研究している。2020年、コロナ禍でデジタルの使用が増える中、「デジタルテクノロジーのネガティブな面をできるだけ減らしポジティブな面を活かしより健康で幸せな人たちを増やす」ことを目的に、アメリカ発のデジタルウェルネス認定講師を日本人初で取得し、デジタルウェルネスジャパンを設立。現在は、企業や一般の人たち向けにデジタルウェルネスリテラシーを高める活動を続けている。

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<モデレーター紹介>

Kelvin Tan氏
Singapore University of Social Sciences / シンガポール社会科学大学 応用高齢化研究副専攻プログラム責任者、上級講師、メンター

<プロフィール>
One&Co (Japan East Rail), Ageing Asia, People's Association, Yincubatorで様々なアドバイザリー業務に携わる。現職就任前は、シンガポール国立大学(NUS)の企業パートナーシップ、イノベーション、アントレプレナー部門担当ディレクターを務める。同時に、AI、認知技術、IoT、自然言語翻訳、データ解析の研究を商業化するNUSスマートシステム研究所のビジネス開発ディレクターを務める。

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(2)AgeTechによるイノベーション機会はどこにあるのか
(スピーカー:Mario Geißler氏)

画面左下:Mario氏、左上:Janice氏、右上:Kelvin氏、右下:Chang氏、壇上右側:出村氏

はじめに、ドイツを拠点に欧州のAgeTechイノベーションに取り組むMario Geißler氏の発表です。

♦︎ AgeTechに取り組む背景

欧州では年を取ることに対してまだまだネガティブなマインドセットが染み付いているのが現状であり、そこをイノベーティブなマインドセットに変換していく必要があるため、私はそこにチャレンジしたいと考えています。

ドイツは実は世界の高齢化率トップ10に入る高齢者国家で、高齢者の割合がおよそ26%を占めます。これからも当然高齢化が進んでいき、今後10年でドイツでは20%ほど高齢者が増加すると考えられています。

♦︎ AgeTechの現状と今後の必要性
現在開発されているAgeTechサービスのほとんどは、高齢者施設で働いている人材が減少傾向にあるという課題に対するアプローチに留まっています。

今後これらの課題を解決するために、AgeTech領域ではサービスの持続可能性を追求すること、そしてフィットネス・ヘルスケア領域のサービスを利用者が享受できるようなサービス体系を構築する必要があると考えています。

♦︎ AgeTechによるイノベーション機会と課題
今後AgeTech領域においてイノベーションを起こす上で着目すべき点について、以下の4つがあると考えています。

・高齢化に対するネガティブな先入観
・シニア領域においてリソースが欠乏していること
・シニアが同質の集団であること
・ほんの少しの楽しみがシニアの寿命を著しく押し上げること


これらの要素がAgeTechによるイノベーションの参入余地であり、今後社会においてAgeTechが存在する意義となりうるのです。

反対に、AgeTechイノベーションの障壁としては以下の3点を挙げます。

・デジタル技術に対する懐疑論
・全国的なデジタル基盤と異なるプロバイダ間の連携がないこと
・業界を超えた事業連携が現状ないこと


従って、AgeTechを使ってコンスタントに成長する市場の中でどのようにイノベーションを起こし、ヘルスケアシステムをデジタル化していくかを今後考えていく必要があるのです。

(3)中国におけるAgeTechの今後の可能性について
(スピーカー:Chang Liu氏)

続いて、ACCESS Healthでの活動を中心に、中国で高齢化イノベーションに取り組むChang Liu氏の発表です。

♦︎ 中国で行った研究調査の実績について
中国では高齢化に伴って起こっている諸問題に対してAge Techを使って解決していく流れがあります。7年前にも中国ではエイジングプログラムが行われているなど、既にさまざまなイノベーションの試みがあります。
例えば、Age Techサービスに対するインキュベーション・アクセラレーションプログラムや大学での学内活動、モダンエイジングイノベーションクラブの設立などがありました。

♦︎ ACCESS Healthでの取り組み
ACCESS Healthのアプローチは健康サイドとテクノロジーサイドの両輪からアプローチするものですが、私は今自分が話していることが将来確実に生きるものかどうか検証することが現状できないものとなっています。
しかし、今まで行われてきた挑戦の中からいくつかの重要なものを特定し、サービスの自動化をはじめとする人々から生まれるイノベーションを観測してきました。

♦︎ スマートエイジングの在り方
スマートエイジングの定義は、関連するステークホルダーを巻き込みながら、業界の縛りなくシニアの未来をサポートしていくことだと考えています。従って、スマートエイジングはそれに関連する政策と切っても切り離せない関係にあると考えているのです。また、中国で起こったムーブメントに関して、特にスマートテレビの開発はスマートエイジングの発展に大きく貢献したと考えています。


(4)エイジング領域におけるビジネスの可能性について
(スピーカー:Janice Chia氏)

続いて、シンガポールを拠点として高齢化ビジネスを先導し、高齢化産業のネットワーク構築に取り組むJanice Chia氏の発表です。

♦︎ エイジング領域に対する期待の背景
今日、消費者だけでなくエイジウェル領域の分野に対して海外投資家までもが、次世代に繋がるプロダクトの構築を待ち望んでいます。はじめにエイジング領域におけるビジネス可能性について共有したいと思います。

まずはアジアにおけるエイジング産業の初期の産業規模についてです。これまでエイジングビジネスに取り組んでいく中で世界中から高齢者を介護するモデルを特定するために、アジアにおけるエイジング協業コミュニティを通じて様々なタイプのモデルを模索してきました。

エイジング領域においてシンガポールにおけるエイジング市場の4兆5600億円の56%ほどが2025年にはAge Techの市場規模として算出できます。
2025年のシンガポールにおいては60歳を超える人口比率が25%から30%に増加し、これはシンガポールが超高齢国家のカテゴリーに位置することになるということを意味します。ベビーブーム世代が急激に60歳以上になることで2040年には40%を超えると言われています。

♦︎ AgeTechを導入する意義と今後の可能性
今では携帯電話を子供に持たせることが当たり前になりましたが、同じようにシニアにおいても最新のテクノロジーとスマートデバイスを用いてショッピングアプリで買い物をしたり、家にデリバリーを頼んだりとパソコンの代わりにスマホやiPadのようなタブレットデバイスを用いたテクノロジーの応用可能性に満ち溢れています。

これは人口におけるセグメントを変えうると考えていて、シニアが現在よりデジタルについて詳しくなると、より莫大なアジアの観光産業や地域不動産移動テックへの接続が可能になるのではないかと考えています。歳をとることを脅威や弱みとして評価していたのに対し、今日ではまさにこれらの既成概念を塗り替える段階になっているのです。

60歳の人間がいきなり17歳や18歳になることはありません。しかし今後は徐々に年齢という数値によって人が判断されなくなるだろうと思います。

例えば、今日の児童教育市場では昔のように鮮やかな刺激に満ちた人生を送るというよりかは、子供たちにどうすれば十分な水準の暮らしを送ることができるかを主要なミッションとして置いています。お金は望むべきところに使うべきである一方、充実した感覚を持っているときにそのお金をどのような計画を持って世の中に還元していくべきかが高く評価されていると言えるのです。

そのため、高所得のベビーブーム世代とその他の地域に在住する二つのセグメントにおいて主要な市場と参入機会があると我々は考えています。高齢化の未来に対しこれらの示唆が少しでも多くの新たな示唆を生むことを願っています。

また、これらの領域における将来の可能性の一つとして、高血圧患者や糖尿病患者と同じように、認知症を患っている人々を助け、彼らの身体の健康状態を統合してモニタリングできるサービスをどのようにして普及させていくかを考えることが非常に意義があることだと考えています。

(5)デジタル技術とウェルビーイングの融合について
(スピーカー:出村宣子氏)

最後に、日本でデジタル技術とウェルネス領域を融合し、生産性とウェルビーイングの向上に取り組む出村宣子氏の発表です。

♦︎ デジタルウェルネスラボでの取り組みと狙いについて
まずはじめに、デジタルウェルネスラボでの取り組みを説明します。コロナによってデジタルテクノロジーを使う必要性が高まった中で、デジタルがもたらすデメリットとそれを克服する方法を提示したいと思います。
今後デジタル技術によって生産性とウェルビーイングをあげていきたいという狙いがあります。

その中でぜひシェアしたいのが、デジタルテクノロジーによって引き起こされる課題をまとめたデジタルウェルネスウィールと呼ばれるものです。
その中でも特に、

・つながり方の変化
・使いすぎや間違った使い方
・注意の問題


これらがデジタル時代に私たちが直面している課題として挙げられます。潜在的な害としてこれらがある一方、利点としては、

・神経回路の活性化
・認知機能の強化
・不安の減少
・睡眠の促進


などが挙げられます。

♦︎ AgeWellに取り組む意義と今後の展望

このイベントではシニアの人々を更なるイノベーションへと導き、さらに多くの人がデジタルテクノロジーを使うことで今まで以上の大きな効果が見込めると考えています。先ほどの発表でマリオがおっしゃっていたように、日本は全ての国の中で最も高齢化率が高いです。日本では三分の一が高齢者なのですが、それはエイジング領域のパイオニアになるということを意味しているので、とても楽しく取り組む価値があることだと考えています。

しかし現状、年齢階層別のデジタル利用率は上がっているものの、高齢者層のデジタルを使う目的は非常に固定的なものにとどまっています。私たちは高齢者に対してQOLの向上をもたらすことをはじめとして、若者を含む他の世代に対してもデジタルがウェルビーイングと生産性の向上をもたらせるよう取り組みを強化していきたいと考えています。

(6)Q&A

質問:今後の新型コロナウイルスの状況を鑑みながら、半年や一年でエイジング領域についてはどのように進展していくのが理想だと思いますか?

♦︎ Chang Liu氏
政治やビジネスセクターに関してはさらに状況が良くなることを祈っています。日本のサービスが持つ質やサービスの内容には多大なる敬意を示したいと考えていますし、実際に中国の主要企業は皆ヘルスケアテックに投資をし始めています。日本と南アジアのビジネスコネクションはどんどん生まれてきていて、日本のプロダクトや施設は中国やシンガポールにおいてより主要なベンチマークの一つになっていくと予測しています。

♦︎ 出村氏
前提として、ヨーロッパと日本では文化的な違いが大きいです。リサーチや研究開発は日本が苦手な領域なので欧州や南アジアの研究と協力していければ理想だと思います。一方、日本のプロダクトやサービスは素晴らしいので、世界においても貢献できる部分が大きいのではないかと思います。綿密なコミュニケーションをとりながらお互いに素晴らしいものを作っていけるのが理想だと思います。

質問:マインドセットや生きがいは非常にソフトな部分だと思いますが、テクノロジーを使ってどのように助長していくのでしょうか?

♦︎ Janice Chia氏
現状十分に設計できていない部分はありながらも、モダンエイジングの話に戻ってくると思っています。既存のアプローチの延長線上として捉えるのではなく、デザイン思考で考えていくことでテクノロジーが活かせる部分が見えてくると思います。同時に、コミュニティやケアキーパーによる相互補助的なソリューションやデジタル技術を普及させていくチャネルを構築していくことも大事なのではないかと感じます。

♦︎ 出村氏
生きがいは見えないものなのでそれを意図的に設計して作っていくのは難しいことだと思いますが、Janiceが言ったようにデザインがそれを形作っていく手がかりの一つになるのではないでしょうか。

(7)まとめ

◯世界各国におけるエイジングビジネスの現状
<ドイツ>
今後10年で間違いなく高齢化社会が訪れるものの、高齢化イノベーションに対してネガティブなマインドセットになっている。AgeTech領域におけるアプローチは業界における決定的な人材不足等の顕在化した課題に対するものが先行している。
<中国>
7年前くらいからエイジング領域の取り組みが徐々に注目されてきていて、デジタルとシニアビジネスの融合が進んでいるものの、政府やビジネス領域、アカデミック領域の連携がまだまだ不十分である。
<シンガポール>
エイジング領域の市場規模は今後拡大していくと考えられているため、国内市場で注目度が高まっている。また、ベビーブーム世代が高齢者になることでシンガポールでも高齢化社会に突入することから、高所得ベビーブーム世代及びその周辺層がセグメントとして注目されている。実際にシンガポールにおけるエイジング市場の4兆5600億円の56%ほどが2025年にはAge Tech
の市場規模として考えられる。

◯AgeWellイノベーションを進めていく上での参入意義と考えられる課題
<参入意義>
業界全体

・高齢化に対するネガティブな先入観が存在していること
・シニア領域においてリソースが欠乏していること
・シニアが同質の集団であること
・ほんの少しの楽しみがシニアの寿命を著しく押し上げること
テクノロジーがユーザーにもたらすメリット
・神経回路の活性化
・認知機能の強化
・不安の減少
・睡眠の促進

<今後乗り越えなければいけない課題>
産業における課題
・デジタル技術に対する懐疑論
・全国的なデジタル基盤と異なるプロバイダ間の連携がないこと
・業界を超えた事業連携がないこと

デジタルアプローチの弊害

・人同士のつながり方の変化に伴う社会的問題
・デジタルデバイスの使いすぎや間違った使い方
・注意力低下の問題

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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