Age Well Japan Day1 セッション報告 | 世界の高齢化社会におけるAgeWellビジネスとイノベーション
9月30日〜10月1日の2日間にわたり開催したAge Well Japan 2022 Day1の各セッションについて、もっと詳しくお伝えして参ります。
本noteは、
- Q-HUB代表Mario Geißler氏
- ACCESS Health・インターナショナル リージョナルディレクターChang Liu氏
- Ageing Asia Founder Janice Chia氏
- デジタルウェルネスジャパン設立者出村宣子氏ら、
世界各地でAgetechの最先端で活躍されている4名による、世界の高齢者社会におけるAgeWellビジネスの可能性や起こりうるイノベーションについて議論したパネルディスカッションについてです。
日本だけに限らず、欧州やアジアのAgeWell領域でどのような取り組みが行われているか知りたい方は、特に必見です!
Age Well Japanの全貌について知りたい方はこちら↓
(1)登壇者紹介
<パネリスト紹介>
<モデレーター紹介>
(2)AgeTechによるイノベーション機会はどこにあるのか
(スピーカー:Mario Geißler氏)
はじめに、ドイツを拠点に欧州のAgeTechイノベーションに取り組むMario Geißler氏の発表です。
♦︎ AgeTechに取り組む背景
欧州では年を取ることに対してまだまだネガティブなマインドセットが染み付いているのが現状であり、そこをイノベーティブなマインドセットに変換していく必要があるため、私はそこにチャレンジしたいと考えています。
ドイツは実は世界の高齢化率トップ10に入る高齢者国家で、高齢者の割合がおよそ26%を占めます。これからも当然高齢化が進んでいき、今後10年でドイツでは20%ほど高齢者が増加すると考えられています。
♦︎ AgeTechの現状と今後の必要性
現在開発されているAgeTechサービスのほとんどは、高齢者施設で働いている人材が減少傾向にあるという課題に対するアプローチに留まっています。
今後これらの課題を解決するために、AgeTech領域ではサービスの持続可能性を追求すること、そしてフィットネス・ヘルスケア領域のサービスを利用者が享受できるようなサービス体系を構築する必要があると考えています。
♦︎ AgeTechによるイノベーション機会と課題
今後AgeTech領域においてイノベーションを起こす上で着目すべき点について、以下の4つがあると考えています。
・高齢化に対するネガティブな先入観
・シニア領域においてリソースが欠乏していること
・シニアが同質の集団であること
・ほんの少しの楽しみがシニアの寿命を著しく押し上げること
これらの要素がAgeTechによるイノベーションの参入余地であり、今後社会においてAgeTechが存在する意義となりうるのです。
反対に、AgeTechイノベーションの障壁としては以下の3点を挙げます。
・デジタル技術に対する懐疑論
・全国的なデジタル基盤と異なるプロバイダ間の連携がないこと
・業界を超えた事業連携が現状ないこと
従って、AgeTechを使ってコンスタントに成長する市場の中でどのようにイノベーションを起こし、ヘルスケアシステムをデジタル化していくかを今後考えていく必要があるのです。
(3)中国におけるAgeTechの今後の可能性について
(スピーカー:Chang Liu氏)
続いて、ACCESS Healthでの活動を中心に、中国で高齢化イノベーションに取り組むChang Liu氏の発表です。
♦︎ 中国で行った研究調査の実績について
中国では高齢化に伴って起こっている諸問題に対してAge Techを使って解決していく流れがあります。7年前にも中国ではエイジングプログラムが行われているなど、既にさまざまなイノベーションの試みがあります。
例えば、Age Techサービスに対するインキュベーション・アクセラレーションプログラムや大学での学内活動、モダンエイジングイノベーションクラブの設立などがありました。
♦︎ ACCESS Healthでの取り組み
ACCESS Healthのアプローチは健康サイドとテクノロジーサイドの両輪からアプローチするものですが、私は今自分が話していることが将来確実に生きるものかどうか検証することが現状できないものとなっています。
しかし、今まで行われてきた挑戦の中からいくつかの重要なものを特定し、サービスの自動化をはじめとする人々から生まれるイノベーションを観測してきました。
♦︎ スマートエイジングの在り方
スマートエイジングの定義は、関連するステークホルダーを巻き込みながら、業界の縛りなくシニアの未来をサポートしていくことだと考えています。従って、スマートエイジングはそれに関連する政策と切っても切り離せない関係にあると考えているのです。また、中国で起こったムーブメントに関して、特にスマートテレビの開発はスマートエイジングの発展に大きく貢献したと考えています。
(4)エイジング領域におけるビジネスの可能性について
(スピーカー:Janice Chia氏)
続いて、シンガポールを拠点として高齢化ビジネスを先導し、高齢化産業のネットワーク構築に取り組むJanice Chia氏の発表です。
♦︎ エイジング領域に対する期待の背景
今日、消費者だけでなくエイジウェル領域の分野に対して海外投資家までもが、次世代に繋がるプロダクトの構築を待ち望んでいます。はじめにエイジング領域におけるビジネス可能性について共有したいと思います。
まずはアジアにおけるエイジング産業の初期の産業規模についてです。これまでエイジングビジネスに取り組んでいく中で世界中から高齢者を介護するモデルを特定するために、アジアにおけるエイジング協業コミュニティを通じて様々なタイプのモデルを模索してきました。
エイジング領域においてシンガポールにおけるエイジング市場の4兆5600億円の56%ほどが2025年にはAge Techの市場規模として算出できます。
2025年のシンガポールにおいては60歳を超える人口比率が25%から30%に増加し、これはシンガポールが超高齢国家のカテゴリーに位置することになるということを意味します。ベビーブーム世代が急激に60歳以上になることで2040年には40%を超えると言われています。
♦︎ AgeTechを導入する意義と今後の可能性
今では携帯電話を子供に持たせることが当たり前になりましたが、同じようにシニアにおいても最新のテクノロジーとスマートデバイスを用いてショッピングアプリで買い物をしたり、家にデリバリーを頼んだりとパソコンの代わりにスマホやiPadのようなタブレットデバイスを用いたテクノロジーの応用可能性に満ち溢れています。
これは人口におけるセグメントを変えうると考えていて、シニアが現在よりデジタルについて詳しくなると、より莫大なアジアの観光産業や地域不動産移動テックへの接続が可能になるのではないかと考えています。歳をとることを脅威や弱みとして評価していたのに対し、今日ではまさにこれらの既成概念を塗り替える段階になっているのです。
60歳の人間がいきなり17歳や18歳になることはありません。しかし今後は徐々に年齢という数値によって人が判断されなくなるだろうと思います。
例えば、今日の児童教育市場では昔のように鮮やかな刺激に満ちた人生を送るというよりかは、子供たちにどうすれば十分な水準の暮らしを送ることができるかを主要なミッションとして置いています。お金は望むべきところに使うべきである一方、充実した感覚を持っているときにそのお金をどのような計画を持って世の中に還元していくべきかが高く評価されていると言えるのです。
そのため、高所得のベビーブーム世代とその他の地域に在住する二つのセグメントにおいて主要な市場と参入機会があると我々は考えています。高齢化の未来に対しこれらの示唆が少しでも多くの新たな示唆を生むことを願っています。
また、これらの領域における将来の可能性の一つとして、高血圧患者や糖尿病患者と同じように、認知症を患っている人々を助け、彼らの身体の健康状態を統合してモニタリングできるサービスをどのようにして普及させていくかを考えることが非常に意義があることだと考えています。
(5)デジタル技術とウェルビーイングの融合について
(スピーカー:出村宣子氏)
最後に、日本でデジタル技術とウェルネス領域を融合し、生産性とウェルビーイングの向上に取り組む出村宣子氏の発表です。
♦︎ デジタルウェルネスラボでの取り組みと狙いについて
まずはじめに、デジタルウェルネスラボでの取り組みを説明します。コロナによってデジタルテクノロジーを使う必要性が高まった中で、デジタルがもたらすデメリットとそれを克服する方法を提示したいと思います。
今後デジタル技術によって生産性とウェルビーイングをあげていきたいという狙いがあります。
その中でぜひシェアしたいのが、デジタルテクノロジーによって引き起こされる課題をまとめたデジタルウェルネスウィールと呼ばれるものです。
その中でも特に、
・つながり方の変化
・使いすぎや間違った使い方
・注意の問題
これらがデジタル時代に私たちが直面している課題として挙げられます。潜在的な害としてこれらがある一方、利点としては、
・神経回路の活性化
・認知機能の強化
・不安の減少
・睡眠の促進
などが挙げられます。
♦︎ AgeWellに取り組む意義と今後の展望
このイベントではシニアの人々を更なるイノベーションへと導き、さらに多くの人がデジタルテクノロジーを使うことで今まで以上の大きな効果が見込めると考えています。先ほどの発表でマリオがおっしゃっていたように、日本は全ての国の中で最も高齢化率が高いです。日本では三分の一が高齢者なのですが、それはエイジング領域のパイオニアになるということを意味しているので、とても楽しく取り組む価値があることだと考えています。
しかし現状、年齢階層別のデジタル利用率は上がっているものの、高齢者層のデジタルを使う目的は非常に固定的なものにとどまっています。私たちは高齢者に対してQOLの向上をもたらすことをはじめとして、若者を含む他の世代に対してもデジタルがウェルビーイングと生産性の向上をもたらせるよう取り組みを強化していきたいと考えています。
(6)Q&A
質問:今後の新型コロナウイルスの状況を鑑みながら、半年や一年でエイジング領域についてはどのように進展していくのが理想だと思いますか?
♦︎ Chang Liu氏
政治やビジネスセクターに関してはさらに状況が良くなることを祈っています。日本のサービスが持つ質やサービスの内容には多大なる敬意を示したいと考えていますし、実際に中国の主要企業は皆ヘルスケアテックに投資をし始めています。日本と南アジアのビジネスコネクションはどんどん生まれてきていて、日本のプロダクトや施設は中国やシンガポールにおいてより主要なベンチマークの一つになっていくと予測しています。
♦︎ 出村氏
前提として、ヨーロッパと日本では文化的な違いが大きいです。リサーチや研究開発は日本が苦手な領域なので欧州や南アジアの研究と協力していければ理想だと思います。一方、日本のプロダクトやサービスは素晴らしいので、世界においても貢献できる部分が大きいのではないかと思います。綿密なコミュニケーションをとりながらお互いに素晴らしいものを作っていけるのが理想だと思います。
質問:マインドセットや生きがいは非常にソフトな部分だと思いますが、テクノロジーを使ってどのように助長していくのでしょうか?
♦︎ Janice Chia氏
現状十分に設計できていない部分はありながらも、モダンエイジングの話に戻ってくると思っています。既存のアプローチの延長線上として捉えるのではなく、デザイン思考で考えていくことでテクノロジーが活かせる部分が見えてくると思います。同時に、コミュニティやケアキーパーによる相互補助的なソリューションやデジタル技術を普及させていくチャネルを構築していくことも大事なのではないかと感じます。
♦︎ 出村氏
生きがいは見えないものなのでそれを意図的に設計して作っていくのは難しいことだと思いますが、Janiceが言ったようにデザインがそれを形作っていく手がかりの一つになるのではないでしょうか。
(7)まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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♦︎ 株式会社MIHARUが提供する「もっとメイト」とは
♦︎Q-HUB ホームページ(英語/ドイツ語ページ)
♦︎ACCESS Health International ホームページ(英語ページ)
♦︎Ageing Asia ホームページ(英語ページ)
♦︎デジタルウェルネスジャパン ホームページ(日本語ページ)
♦︎ 主催:株式会社MIHARU ホームページ
♦︎ もっとメイト ホームページ
♦︎ 共同主催:vivid creations ホームページ
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