田山花袋「蒲団」1-5
前回1-4では、「1人称のような3人称」で語られている「時雄」の印象について、参加者の意見を中心に見てきました。今回は、そんな語り手から見えてくる、「蒲団」の魅力を明らかにしたいと思います。
<3人称の語りと告白の問題> 前回述べた、三人称の語りと告白の問題について考えてみたいのですが、たとえばフランスの批評家・ロラン・バルトは、三人称の形式をとっていても、その三人称を一人称に置き換えて読んでも違和感がなければ、それは隠れた一人称小説、つまり「私」の視点から書かれた小説だ