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弱くて卑怯な自分を受け入れるために、ねずみやアルパヨの事情を理解する

初めて遠藤周作の作品に出合ったのは学生時代。『深い河』『海と毒薬』などなんだか大きくて暗くてテーマがピンとこず、それよりも村上春樹や吉本ばななのような、自分の課題に向き合ってくれる作品を好んで読んでいました。

遠藤作品との再会は3年前。文学サークルで『影について』を取り上げ、遠藤周作の母親への想い、母を見棄てたことに対する後悔を知りました。
両親が離婚をしたのは遠藤周作が10歳のころ。母を見棄てた、裏切ったという後悔の念がこれほど人の生涯に鉛のようにずんと居座り続けるのだということに少し驚きました。

そして、今回、2度目の再会となった『死海のほとり』。遠藤周作の代表作の一つともいえる作品です。

イエスやノサック神父のように強くなれない

『死海のほとり』で印象に残ったのは、ずる賢いねずみやイエスを裏切る弟子アルパヨです。弱いものを守るために自らを犠牲にするノサック神父やイエスに対し、自分の立場を第一に考えるねずみやアルパヨは、弱くて卑怯。
でも、私自身の行動を振り返ると、困難な場面でノサック神父やイエスだったことは稀で、ほとんどがねずみやアルパヨだったと思い知らされました。

弱い自分や卑怯な自分はできれば消したい。誰にでもやさしく、親切なよい人間でいたい。しかし、その思いが強いあまり、弱い他者、卑怯な他者を責めるような態度をしていないだろうか。

『死海のほとり』を読んで気づかされたのは、社会から見れば卑怯な行為、弱い決断をした人にもその人なりの事情があること。ねずみやアルパヨには彼らなりの、そうせざる得なかった事情があったのです。

そうやって自分からは見えない他者の事情を慮ることで、少し他者にやさしくなれるのではないでしょうか。同時に、自分の弱さや卑怯も少し諦め、受け入れることができるのではないかと思います。

サークル「文学を語ろう」では毎月1冊の課題本をみんなで読み、感想をシェアしあう読書会を開催しています。4月の課題本は太宰治『人間失格』。興味のある方はぜひ遊びにきてください。お待ちしています!


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