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レトロスペース坂会館といふ処

北海道の札幌市営地下鉄東西線のなかの二十四軒駅から徒歩8分の道道124号沿いに坂ビスケットという北海道では有名な老舗のビスケット菓子を売るお店が存在する。外見としては赤い店名と赤いお花のロゴの可愛らしいお店である。(下記コーヒーカップのロゴ参照)

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その坂ビスケット、ただのビスケット屋さんではないのだ。

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店舗に入ってすぐ右側の扉を開ければそこはもう異空間。それがまさに今回のお話のレトロスペース坂会館というわけである。
北海道の中においてもそのディープさは有名で、道内の人でも存在は知っているが入ったことがない!という方続出な、何となく尻込みするようなその空間。いったい何が置いてあるのかというと名前の通り、昭和、古くは大正などからのいわゆる「レトロなもの」が所狭しと飾られているのだ。ただ飾られるだけではなく、元の形状から姿を変えて、元々の存在意義を覆すような代物も多く見受けられる。

そんなレトロスペースは私にとってはたいへん居心地の良い正にユートピアのような場所であったのだ。

レトロスペースとの出会い


かれこれ出会いを遡れば、16年ほど前であろうか
看護師時代に仲良くなった北海道の友人が、諸事情で再度北海道に戻った頃、私は年に数回北の大地へ遊びに行っていた。その友人が正に坂ビスケットのある二十四軒に住んでおり、遊びに行った際にもともと顔馴染みだった坂会館へ遊びに行ってみるように薦めてくれたのが始まりである。
友人が仕事ゆえ、ひとりで初めて踏み入れたその空間。予備知識が全くない状態で行った為、博物館なのかなんなのか不明。この置いているレトロなものはもしかして売り物?売り物だとしたら欲しいものだらけだ!と、鼻息を荒くした。売り物と思っていたため、二個ほど手に取った段階で違和感に気付く。「値札がない」

そこでうすうす売り物ではなさそうだと品物を返し、中にはいっていったところにいたのは眼鏡と白衣がとても似合う坂一敬館長と中本尚子副館長がだったというわけだ。

坂会館、基いふたりの魅力

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坂会館はその昔総合結婚式場であったのだが(↑証拠写真。ですがそこらへんは省略)その余韻を残す空間の中に未だ残るカウンターの中から、お茶と透明巨大薬瓶のようなものに入ったビスケットをお茶菓子に出してくださったのが中本さん、その中本さんの魅力とは実に丁寧に人の話を聞いてくださる!そこに尽きる!
私は訪問後からその共通の友人から勧められたこと、北海道の話、普段何をしているのかの話、実に4時間も初対面で話し込むほどであった。

長居につぐ長居。それなのに私は翌日も訪ね、あれやこれやと、中本さんとたまに現れる館長と時間を忘れて話し込んだのであった。

館長の親切さというものは、救いのようなもので、その受けた親切に対して、みんなが館長にいつも返せるわけではないのだか、それが裏切られる事があろうとも「そういうこともあるんだよね。」という静かな想いとともに腹の底に沈めている気がする。そのような人である。
例えば、館長は初めて訪問した人に「差し支えなければ、記帳していって。」とおっしゃった上で「どこから来たのぉ~?」と話を膨らませて行くわけだが、この記帳から結果、正月に年賀状が届く。

そしてそこから文通に発展する人もいれば、年賀状は返信するよという人。年賀状も特に返さないという方。様々存在する。わけだが、私はこの話し込んだ出会いが嬉しく、中本さんとペンパルの間柄になったのであった。

人間誰しも、いわゆる「合う・合わない」「(心が)開いている・閉っている」という状況が存在する。「記帳してください」という一言だが館長が言うと不思議と重みが加わる人柄なのだ。そして何やかやと館長は中本さんと言い合い(喧嘩とも違う静かな戦い)を繰り広げながらも、毎日そこにいてくる人の話を聞いているのである。

勿論坂会館の展示品の並べ替えやグッツの作成もする。というのも、そんな二人の魅力もあり、多種多様な方々が全国各地から訪れてインスピレーションを受けては、坂会館の面白おかしいグッツを考えたり作ったり、その結果、それが坂会館で買えるようになってしまっている。実に面白い。

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なぜマスクがあって、しかも売っているのだ。私には坂会館のこういうところが好きで好きでたまらない。昨年4月撮影で北海道に行っていた私は顔を見ずに10年近くたっていた頃が嘘みたいだが久しぶりに坂会館を訪問することができた。中本さんには会えなかったものの、館長が3時間ほど相手をしてくれた。中本さん作成のグッツのいくつかと、坂会館の新しい本を購入し、もちろんビスケットも大量に購入。ついには中本さんが私が訪問する日は会えないからと、この日のためにお楽しみ袋のお土産まで作っておいてくれた。以下戦利品の数々。

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そんな私の中のテーマパーク的存在のレトロスペース坂会館。館長にはいつまでもお元気で、そしてコロナが落ち着いたら、ゆっくり北海道に行きたいなぁと年頭に思いを馳せているのである。一日も早くコロナが落ち着いてくれますようにをこうやって、遠くにいる人のことを思ってお茶をすする、二回目の緊急事態宣言一日目なのであった。

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伊藤麻実子
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