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20230326_ミュージカル『マリー・キュリー』

作品概要

企画・製作:アミューズ
出演   :マリー・キュリー  愛希れいか
      ピエール・キュリー 上山竜治
      アンヌ       清水くるみ
      ルーベン      屋良朝幸
      能條愛未 宇月颯 清水彩花 石川新太
      坂元宏旬 整司朗 髙原紳輔 石井咲 大泰司桃子

作曲   :チェ・ジョンユン
脚本   :チョン・セウン
演出   :鈴木裕美
翻訳・訳詞:高橋亜子
音楽監督 :大崎聖二
振付   :松田尚子
美術   :伊藤雅子
衣装   :前田文子

あらすじ

19世紀末、マリーは、大学進学のため、パリ行きの列車に乗っていた。そこで出会ったアンヌと希望に胸を躍らせ、当時、少なかった女性科学者として、研究者のピエール・キュリーと共に新しい元素ラジウムを発見し、ノーベル賞を受賞する。ところが、ミステリアスな男・ルーベンが経営するラジウム工場では、体調を崩す行員が出てきて……。

公式サイトより<https://mariecurie-musical.jp/>

作品所感(絶賛Ver.)

2月に観劇しすぎて、3月はちょっと抑えるぞと思っていたのに、
周囲から漏れ聞こえる「マリー・キュリー、すごい」「マリー・キュリー、観るべし」の声に押されて観てしまいました。
結果、ほんとーーーーーーに観てよかった!!!

・壮大な「IF」の物語
今回、公式サイトものぞかなかったし動画や前情報を全く入れずに観に行ったんです。ポスター画像とコピーぐらい?だったので、とても失礼なことに「キュリー夫人の秘めたる恋」とか「男性中心のアカデミズムに挑む女性」とかそんな話かしらって、とてつもねー勘違いをしながら劇場の席に着きました。(サイトのあらすじ読めば大体わかってたはずよw自分)
で、びっくり。
これは、私が大好きな壮大なる「IF」の話ではないかと。

・多角的に観れる世界観
上記にも書いたように、壮大な「IF」(虚構)が混じり合っている作品ではあるのですが、事実あった時系列が異なったり、当事者がとこなる話が、キュリー夫人自身にあったのではないか…という切り口で描かれているので、まったく嘘くさくないんですよね。
事実あった、19世紀末の男性中心のアカデミズムで女性差別を受け続けるマリーの戦い。
マリーとアンヌがさらされ続ける、反ポロニズム。ポーランド移民の劣悪な労働環境。
「私もノーベルのように、人類は新しい発見から悪よりも善を引き出すと考えている一人です。」というマリーの実際の言葉にある、科学がもつ「神の手」と「悪魔の手」の二面性。
それらのことを受け止めつつ、そこに1910年代にアメリカのニュージャージーを中心に起こった「ラジウムガールズ事件」が「IF」の出来事として巧みに織り込まれている。
そんな多角的な事柄をうまくまとめて骨太の社会派ミュージカルとして成り立たせているのは舌を巻きます。

ラジウム・ガールズ事件についてはWiki貼っときます。
※ググるときはエグい画像が出てくる場合があるので要注意

小説『Glow』も日本語版はないのですがヤングアダルト向けなので読みやすいです。

・とにかく曲がいい!
作品の一曲目がマリーとアンヌの出会いの曲から心つかまれたぐらい、とにかく曲がいいですね。
美しく、キャッチー、それに高橋亜子さんの翻訳・訳詞と俳優の力量が相まって、物語への没入感が違います。
集中力が全然途切れない。
「ラジウム」の歌だって、ヘタすると「今〇タオル」の歌になりかねないのに、あんな心動く歌にするのすげえとなりました。久々に日本語翻訳版のキャストアルバムほしくなるレベルでした。

あと本上演版は「なるほど」というほど、多くが女性スタッフで、まとまりのあるスタッフワークを感じました。
もちろん、鈴木裕美(様!)が引っ張るプロダクションというのもあり、ミュージカルの持つエンタメ感と細部至る心象をとらえた演出が◎でした。
※小川さんにしろ、森さんにしろ、鈴木さんにしろ、しっかりストプレ演出で腕を磨いてきた方が演出するミュージカル大好き。

・ピエール!素敵!みんな素敵!
先週観た『太平洋序曲』もそうですが、プリンシパルキャストの力量もさることながら、実は作品をぐいぐいと引っ張っているのはアンサンブルキャストなのだと強く感じました。

それが前提にあってこそですが、今回「いやああ、いいですね」となったのは上山さん演じるピエールでした。
上山さんご本人「普段、革命家とか暗殺者とかしか演じてないもんで、てへてへ(笑)」と東京千秋楽のご挨拶でおっしゃっていましたが、
ええ、ええ、私も上山竜治にはそのイメージ強いっす。
作品を観る前まで「上山さんのピエールだから、どっかでマリーを裏切ったり、手柄を横取りしたりしないでしょうねー」なんて先入観を持っていたぐらいです。

それが、もうなんと素敵なピエール。
ただただ、いち人間(女性としてというより)、いち科学者としてのマリーを愛して尊敬して、優しい。
ピエールの死の後のマリーとピエールのデュエットの美しいこと美しいこと。もうやばいです(文章書きながら思い出し泣きしそう)……尊いの一言でした。
新境地ですな。これは。

今回お初だったアンヌを演じた清水くるみさんもよかった。
愛希さんのソプラノと清水さんのアルトの相性も抜群でした。
かわいいのに、力ずよく、一歩踏み出す勇気を持つ人を演じるのにピッタリ。
(彼女の声でぜひ『リトルヴォイス』を再演してほしいな。ホリプロ作品だった。『リトルヴォイス』…残念)

作品所感(Not For Me Ver.)

と、、、、全体的に好き!!!!な作品ではあったものの、
ちょっとどうしても「でた!私の苦手要素」という部分があったので書いておきます。これはこの作品のマイナス点といういうより、普段私が舞台作品を観るにあたって苦手にしている部分と思っていただければと。

・やっぱり「闇ダンス」が苦手
観ながら「またでた!闇ダンス!」となりました。
「闇ダンス」とは…、あれです、『エリザ〇ート』とかでトー〇ダンサーズとかがおどる、なんかヒールキャラクターの影みたいな存在(しゃべらない、ダンスのみ)が踊る、あれです。
年初に観た、『〇ングアーサー』でもあったんですよね…。
……あれ……必要です???
やたら日本や韓国で人気のミュージカルに差し込まれる傾向ありません?
ダンサーさんや振付家さんが悪いというのではなく(逆にめっちゃうまかったりするので)、作品にとって必要です??となってしまって、
個人的には結構あれがノイズになって見せるべき俳優の演技や歌や伝えるべきものに集中がいかなくなってしまう傾向があって。
出てくると「スンっ」ってテンションが下がっちゃうんですよね。
特に今回の作品だと、ルーベン自身がマリーと科学の「闇」というキャラクターであると思っているので、そのルーベンの影のようにいる、闇キャラ…「あんたの存在はなんだ?」となってしまうところもあって。
ルーベンがラストにラジウムをアメリカ市場に売り込みに行くシーンであれば、彼が『ピピン』のリーディングプレイヤーのように、かっこよく暗闇でひとり踊るか、『シカゴ』のビリー・フリンのように、アメリカ美女たちに囲まれて、明るく禍々しく歌う方がいいじゃね…とか…(鈴木先生ごめんなさい!)。
お好きな人もたくさんいらっしゃると思うので、今後ミュージカルでそういうダンスシーンをご覧になったら「ああ、茂木が苦手な『闇ダンス』な」ぐらいで笑ってください…。

・「手紙っ?!手紙なの?!」
私、演劇にしろ映画にしろラストのラストで「手紙」って手段に落とされると、これまた「もったいねーーー!!!」ってなってしまう太刀でして。
あのラスト、アンヌからの手紙で、ピエール亡き後のマリーの活躍をすべて説明しちゃうの?と。
もう少しうまく処理できなかったかなぁと。
いや、泣けるんです、めっちゃ泣けるし、見せ方もうまかったんですけど、
ラスト「手紙ーーー!!」ってなってしまった。というご報告でした。

そんなことを言ってても名作かと!

上記のような文句をつらつらと書いておいて、「なんだよお前」と思われてしまうかもしれませんが、史実と虚構をバランスよく、ドラマチックに、かつロマンにあふれた形で具現化した素晴らしい作品だと思います。
久しぶりに涙でびしょびしょになって、マスクの替えを持って行っててよかったー!

『ファクトリー・ガールズ』も観に行かんとなぁ~。
『マリー・キュリー』と『ファクトリー・ガールズ』を連作で見せようとするなんて、アミューズ、商売上手だなっ!!

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