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機械式と過ごす-4 [使い続ける難しさ]
機械式カメラを長く使い続けるためには、
定期的なオーバーホールが必要だ。
ここに日々の点検を欠かさなければ、
多くの機械式カメラは、これから先も動き続けることができる。
しかし最近は、それすらも難しくなりつつある。
直したくても、直せない
直せる工房が見つからない
そういうことが増えてきた。
理由はいろいろあるが、
機械式カメラはほとんどが古い。
数十年を経ていることもザラだ。
予備のパーツが払底した
直せる技術者が引退した
専門にしていた工房が閉店した
殆どがメーカーサービスをあてにできない今、
これらの受け皿になってきたのは民間の修理工房だ。
その修理工房でさえ、古い機械式カメラの修理が難しくなってきている。
機械式カメラにも、色々ある。
細かな造りで、直せる技術者が限られるもの
代替が難しいパーツが壊れやすいもの
すこぶる丈夫で、単純、習熟すれば個人でも修理できるもの
それでも、色々あることが、間違いなく機械式カメラの魅力の一つだ。
壊れにくく、修理しやすいカメラなら、良いカメラとも限らない。
笑ってしまうほど癖のあるカメラでも、これが好いんだと言う人がいる。
払底してしまったパーツはどうにもならない。
技術者の育成には時間と経験が必要だ。
動く機械式カメラはこれからどんどん減っていくだろう。
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Leica M3 のオーバーホールは、技術者によって仕上がりが違う。ファインダー内部のプリズムは、接着剤が劣化することが多いが、修理をできる工房は限られている。
眼鏡付きレンズも、距離計との連動がずれてしまうと、修理できる人はかなり限られる。後ろのイモネジで~という都市伝説があるが、勿論嘘である。
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代替部品が見つからない、「壊れてはいけないところが壊れるカメラ」は結構多い。
でも好き。
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頑丈。比較的シンプル。
よくジャンクコーナーで見かけるが、平然とシャッターが動作する個体が多くて驚く。
必要なことは大抵このカメラから学んだ。
そのような中で機械式カメラを使い続けるためには、
とにかく情報収集と交流に努めることであると思う。
信用できるカメラ屋
信用できる修理工房
を見つけることだ。
カメラのことについて、気軽に相談できるカメラ屋はありがたい。
自分よりよほど詳しい人が店員さんを含め集まりやすく、
自分のカメラ、あるいは自分が今購入を検討しているカメラに関して、
故障しやすい箇所、注意点、現在の修理事情など、必要な情報を得やすい環境だ。情報の精度も高い。
そのような店は、アフターサービスとして、販売したカメラの面倒を手厚く見てくれるところが多い。
修理工房は、それぞれが専門分野を持っていることが多い。
一つの工房でどのようなカメラも直せる、ということは稀だ。
家族としてエキゾチックアニマルを飼育されている方ならばよくご理解いただけると思うが、
いざという時に大切なカメラを診てくれる、いわば専門病院を探しておくといい。
環境は厳しくなる一方だが、それでもまだまだやっていける。
誠意ある商売を続けて下さる販売店、また今も修理業を続けて下さる修理工房には、本当に頭が下がる思いだ。