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MAルームの後ろに

今日は、MAルームでの作業。
自主映画のドキュメンタリーのナレーション収録をした。

私の後ろには、誰もいない。


なぜか私は若い頃、ディレクターでもないのに、ディレクター席に座っていた。
ディレクターの横に座って、ナレーターへのキューやトークバック、ミキサーへの指示など、こと細かに観察するのが大好きだった。
自分の中でOKやNG出したり、その楽しんでいる姿を見て、後ろでプロデューサーが見て笑っていた。

ディレクターになって、同じ席に座った日の事をとても覚えている。
身体の震えが全然止まらずに、ナレーターへの指示は上手くいかず、ミキサーは不機嫌で、私は焦りほとんど何も出来ず。
しかも、プロデューサーは来ず、アシスタントもいなくて、私一人で準備して、完パケまで。
ずーーっと汗をかいていた。
泣きそうになりながら、終えた。

それから何年も経って、回数を重ねて、慣れてきて、いつの間にか後ろには、プロデューサーや制作、代理店、クライアント。
何を言われても、平然とこなす様になっていた。

そして今日、ナレーション収録をした。
初めてのスタジオで。
ナレーションを読むのは、有名な俳優さん。
私はいつもの様にディレクター席に座っても、後ろには誰もいない。
私は緊張している。

前日から落ち着かず、心なしか吐き気がする。
平日はやめていたお酒を少しだけ飲んだ。
どんなスタジオか?どんなミキサーか?俳優さんは?スタジオ地図は送ったか?原稿は送ったか?映像は送ったか?音データは送ったか?原稿のプリントアウトは何部か?水は何本用意する?元気でいるか?街には慣れたか?友達出来たか?

布団の中でなかなか眠れない。
そんな私を察して娘も眠らない。
それを感じて私はさらに眠れない。
脳のキレを良くしたいからちゃんと寝たい、と思うも、焦って眠れない。
いつの間にか眠ってたけど、4時に目が覚める。
いやいや、とまた眠るも、5時に、6時に。

吐き気はおさまっていない。
緊張してるのがわかる。
上手くいくか?
あせっても、びびっても、上手くいかなかったら後悔だけ。
という経験から思い出すことが、気持ちを落ち着かせる手段、ということを思う。大丈夫。
上手くいかせるのは自分だけ。
上手くいかせられるのは自分だけ。
その緊張を味わって、瞬間に「上手くいくに決まってんだろ」と打ち消す。

収録前に見上げた空は、無意味なほどに青く感じる。

ディレクター席に座って、後ろに誰かいる、という安心感。
いてほしいな、と思い浮かべる顔は、今の私の最強メンバーで、これからもやっていく仲間たちなんだと、思う。
それは、かけがえのない力、なんだ。

そう思えた、日が、今日なんです。

収録前に吐き気を打ち消してカツカレー食べた。
勝ちたいから。
勝ちにいくから。

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