『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』消費者視点で成功を掴むマーケティング術
倒産寸前のUSJをV字回復させた秘訣って何だと思いますか?
こう聞かれたら、多くの人は「派手なアトラクション」や「大胆な広告」と答えるかもしれません。しかし、その裏には驚くほどシンプルでパワフルな考え方が隠れていました。
森岡毅氏の『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』は、マーケティングの真髄を教えてくれる一冊です。本書では「消費者視点」の重要性が語られ、これがUSJの成功を牽引した要因だと解き明かされています。
消費者の視点が、USJを救った
2004年、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)は事実上の経営破綻に直面しました。
開業当初の来場者数は年間1,100万人を超えましたが、その後わずか数年で半分近くにまで落ち込み、存続すら危ぶまれる状況に陥った。そんな危機的状況から見事に復活を遂げたUSJ。
その鍵を握っていたのが、「消費者視点」というたった1つの考え方でした。
お客様が本当に求めているものに耳を傾ける
これは言葉にすると簡単ですが、実際には多くの企業が見過ごしてしまう原則です。USJを復活させた森岡毅氏は、このシンプルな哲学を徹底的に実行し、消費者目線での改革を推し進めました。
結果、USJはV字回復を果たし、日本を代表するテーマパークへと成長したのです。
「消費者視点」とは何か?
「消費者視点」とは、顧客が本当に求めているものを見極め、それを提供するための仕組みを整えることです。
森岡毅氏が指摘するように、これは単に「お客様第一」を掲げるだけではありません。顧客が何を感じ、何を望み、どのように行動するのかを深く理解し、それに基づいた戦略を立てることが重要です。
たとえば、USJでは過去に「ゲストが求めるアトラクション」と「スタッフが提供したいアトラクション」の間に大きなズレがありました。
これは、「自分たちが良いと思うもの」を提供する姿勢が原因です。顧客が本当に求めているものを見極めずに進めた結果、魅力を感じないアトラクションやイベントが増え、来場者数が激減してしまった。
森岡毅氏はこの問題を「家庭や仕事でもよくあること」と例えます。
「相手のために」と思って選んだプレゼントが喜ばれなかったり、営業で自分が売りたいものを押し付けてしまったりといった経験は誰にでもあるでしょう。しかし、本当に相手を喜ばせるには「相手が欲しいもの」を見極める必要があります。
消費者視点を活かしたUSJの戦略
森岡毅氏はUSJの改革において以下の3つのステップを徹底しました。
消費者の頭の中を理解する
USJに来場する顧客の性別、年齢、家族構成、休日の過ごし方、収入など、細かいデータを徹底的に分析しました。このような「ペルソナ設定」によって、顧客の悩みやニーズを具体的に理解することができたのです。認知を広げる
誰もが知っている「ハリー・ポッター」エリアの導入は、その象徴的な例です。ブランドイメージを刷新し、消費者に「また行きたい」と思わせる独自性を確立。
テレビCMやSNSを活用し、「今行かないと損をする」と思わせるようなキャンペーンも展開しました。体験を重視する
新しいアトラクションを設置するだけでなく、ゲストが楽しめる体験型イベントを多数開催。試食販売や試乗会に似た方法で、顧客に「来場体験」を提供し、満足度を高めました。
これにより、口コミが広がり、更なる来場者増加に繋がった。
消費者視点はすべての仕事に応用できる
森岡毅氏は、この「消費者視点」の考え方はテーマパークに限らず、どんな仕事にも応用できると指摘。
営業職であれば、顧客が買いたい商品を提案する。マーケティングであれば、売れる仕組みを作る。さらには、上司や部下、家族とのコミュニケーションにも活かせます。
相手の立場に立って考え、行動することで、信頼関係を築くことができるのです。
「売れる仕組み」を作るマーケティングの本質
森岡毅氏が特に強調するのは、マーケティングとは「売れる仕組み」を作ることであるという点です。
営業が「商品を売ること」であるのに対し、マーケティングはその前段階のプロセス全体を指します。顧客に商品を知ってもらい、興味を持たせ、購入へと繋げる仕組みを構築する。このプロセスを設計し、実行するのがマーケティングです。
森岡毅氏のマーケティング手法は極めて具体的で、データに基づいています。たとえば、消費者の頭の中にある「ブランドエクイティ(ブランドイメージ)」を明確にし、それを高める戦略を立てる。
ユニクロであれば「安くて着やすい」、ルイ・ヴィトンであれば「高級で独自性がある」といったイメージを徹底的に強化することで、競争優位を築きます。
最後に:私たちの生活にどう活かすか?
『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』は、単にテーマパークの成功物語ではありません。
消費者視点という哲学を軸にした普遍的なビジネスの成功法則が詰まった一冊です。この考え方を実践することで、仕事や家庭での人間関係、さらには自分自身のブランド価値を高めることができます。
「消費者視点」を意識してみてください。きっと新しい発見があり、あなたの周りの世界が少しずつ変わり始めるはずです。