「音楽×ITについて、現役エンジニアさんに聞いてみた」
こんにちは、もとこです。
”音楽人インタビューシリーズ”の記念すべき第1本目へようこそ。
「音楽関係の方で、インタビューされたい人いませんか!?」
こんな私の無謀かつ唐突なツイートに、真っ先にリプライをくださったのが、今回ご登場いただく現役エンジニアの北島哲郎さんという方でした。
北島さんは、AI系サービスを開発するエンジニアとしてIT業界の第一線で働かれています。また同時に、小さい頃からクラシック音楽に親しみ、現在も勢力的に様々な音楽活動をされている、アマチュア音楽家さんでもあります。
今回は、24歳にしてやっとPCに本格的に触り始めたという、いわゆる“超テック音痴”の私が、『音楽×テクノロジー』をテーマに、エンジニアさんならではの視点のテクノロジーの使い方や活かし方などを、聞かせていただきました!
ちなみに、このシリーズを始めるへ至った経緯なんかは別の記事で詳しく書いていますので、よければご覧ください。
目次
1.テクノロジーは、使ってなんぼ
2.システムを自分で実験してみよう
3.欲しいシステムは、提案してみよう
4.音楽×テクノロジーの可能性
それでは本編に入る前に、簡単に北島さんのご紹介から。
お母親がピアノの先生をされていたため、小さい頃からピアノ演奏に親しんできた北島さん。中学生の頃からは自ら作曲を始め、中高のオーケストラ部ではチェロを演奏、さらには学生オーケストラとピアノコンチェルトを演奏された経験もお持ちです。
高校生の時点で音大に行けるレベルの実力はありましたが、将来のキャリアの事や自分の適性を考え、東京大学の理系学科に進学。大学院卒業後、民間企業のエンジニアに。
現在はAIサービスの開発を専門とする会社でバリバリお仕事をしながらアマチュアとしての音楽活動もされているという、なんともすごいお方です(語彙力)。
1.テクノロジーは、使ってなんぼ!
そんな北島さんに今回最初にお聞きしたのは、私が前々から気になっていた、クラシック音楽系コンサートのチケット予約や支払いシステムに関すること。
もとこ「中小規模のクラシック音楽系のコンサートだと、ほとんどが直接出演者に連絡してチケットをもらうしかなかったり、電子決済ができず、コンサート当日現金を持っていかなければいけなかったりと、自分も含めですがいまだにアナログな部分が多く、もったいないなあと感じる時があります。何か良い解決策はありますか?」
北島さん「うーん...、使いやすく、きちんと機能するチケット予約システムを作るのは実は結構難しいんですよ。チケット予約システムって、場合によってはとても大勢の人が同時にアクセスする類のものなので、その場合にシステムトラブルが起きやすいんです。しかし同時に、トラブルが絶対に許されないものでもありますよね?
例えば、『嵐のコンサートのチケットが取れた!』と思ったのに、それがもし間違いだったりしたら大事でしょ(笑)
ただ、クラシック音楽家が個人で主宰する中・小規模のコンサートであれば、既存のテクノロジーで誰でも簡単に使えるものが今の世の中にはたくさんありますよ。
例えばリモート決済システム『スクエア(squere)』を使えば、個人でも十分お店になれる時代ですので、試す価値はあります。
『Peatix』も、個人がイベントごとをするのにとても便利なシステムだと思います。また、20人程度の小規模なサロンコンサートであれば、楽天ペイや、LINE Payなんかも使えると思います。お金は現金払いで良しとするのであれば、グーグルフォームも手っ取り早い方法と言えます。
ポイントは、自分の希望を実現するために、なるべく単純で手っ取り早い既存の手段を、自分でどんどん探して使ってみること。
なんといっても、みんなが使ってこそのテクノロジーですからね。テクノロジーは、使ってなんぼです。」
考えてみれば確かに、使えるツール、めっちゃありますね。
今後コンサートの開催を計画している人は、上記のツールを検討してみては。
ちなみに、インタビュー後チケット予約&決済システムをいろいろと探してみたら、ライブ配信にも対応しコロナ禍でユーザー数が急増した、『teket』というめちゃくちゃ良さそうなサービスもありましたので、要チェックです。
コロナの影響もあり、今後日本のキャッシュレス化はどんどん進むだろうし、そうなると基本的に現金を持たない人も更に増えるのではと思っています。
電子決済の導入が進めば、いざ当日になったらチケット代の現金が無くて、開演間近にATMに走るなんてことも、たぶんなくなります....!
(私だけでしょうか)
2.システムを自分で実験してみよう
とはいえ、私のようなテック音痴な人間は、張り切って電子決済システムなんか使って、何かトラブルが起こったらどうしよう...なんて思ってしまったんですが、それを見透かしたような北島さんのアドバイスが。
北島さん「使いたいなと思うシステムがあったら、事前に架空の演奏会を立てるなどしてそのシステムの実験をしてみるのがおすすめですよ。
その際、ITに強い人、同年代や一般的な感覚の人、ITにあまり慣れていないお年寄りの方など、いろんなタイプの方に協力をお願いしてみるととても勉強になります。
特に、新しく登場したシステムやサービスにはすぐに跳びつかずに、本当に使えるものなのかを実験し、検証してみることを強くオススメします。
そうやってトライしつつ、少しづつテクノロジーに親しんでみてくれると、作り手としてはとても嬉しいですね。」
なるほど...怖がらないで、まずは使ってみることですね。
それこそ、こういった実験を音楽家同士でやってみれば、すごくお互いのメリットになるなあと思いました。
3.欲しいシステムは、提案してみよう
....と、ここまで来て欲張りな私は、それでも新しいシステムが欲しいなと思った場合はどうすればいいんだろう、と思い始めまして、その辺も聞いてみました。
もとこ「例えば、私が以前からあったらいいなあと思っているのが、音楽家同士がアンサンブルや伴奏ピアニスト探しのために使用できるマッチングアプリ。そういうものがあれば、出身校やジャンルを超えて、音楽家同士のより自由な交流が生まれるのでは、なんて思っています。
ただ、そういった新しいテクノロジーの開発には、ある程度の金銭的な補償がないとエンジニアさんは取り組みにくいですよね?」
北島さん 「そうですね...確かに金銭面は現実課題としてありますね。
あ、でも例えば音楽家たちが、『こういうシステムが欲しい!』って声をあげて、アイデアをクラウドファンディングなどに立てておいて、お金が集まめる事を達成できたら時間の許すエンジニアに実際に作ってもらうっていうという方法はどうでしょう。
システムの制作や運用には最低でも3人程度は必要だと思いますが、音楽が好きなエンジニアが集まれば、実現できるかもしれません。」
確かに、どこかの誰かが作ってくれるのを待っているより、自分たちの欲しいシステムを自分たちのお金を少しづつ出し合って作り上げることができれば、めちゃくちゃ理想的。
クラウドファンディング、ぜひやってみたいですね。
4.音楽×テクノロジーの可能性
ここからは、北島さんの専門であるAIを活用したら、クラシック音楽業界にどんな変化をもたらせるのかをお聞きしました。
北島「AIを活用してできることとしては、クラシック音楽系のチケット販売プラトフォームやTwitter上で、ユーザの好みを分析し、その人の好きそうな演奏家やオススメのコンサートを表示する、いわゆる『レコメンドシステム』を作ることです。そう、まさにアマゾンが行っている方法ですね。
レコメンドシステムの考えられる課題としては、ある程度の範囲からどう広がりを作っていくかですが...それはやってみないとわからないところです。
web上でそれぞれの情報の横のつながりを作ることができれば、音楽家にとってもお客さんにとってもメリットがあると思いまし、より可能性が広がると思うんですよ。」
また、この先さらにテクノロジーが発達したらどんな未来が待っているのかについてもお話いただきました。
北島さん「IT技術があってこそできる音楽についても、最近はどんどん発展してきているので、とても興味深いですよ。
VR技術は現在はまだまだ改善すべき部分が多いですが、今後発展していけば、バーチャル空間でもよりリアルに近い形で音楽を楽しめるようになると思いますし、逆にリアルな世界ではできない、”バーチャル空間ならでは”の音楽の楽しみ方も生まれてくると思います。自分は今後、この分野にもトライしてみたいですね。
また、AIに音楽や芸術をさせたらどうなるのか?という研究や議論も、最近は活発に行われています。AI美芸研(人工知能美学芸術研究会)や、音楽情報科学研究会などの団体がその最先端を行っています。エンジニアとしてはこちらも目が離せないですね。
一方で、テクノロジーがどんどん発展していく時代だからこそ、逆に“生演奏”や、“リアル空間の重要性”などを、このタイミングでよく議論しておくべきだとも思っています。
自分はIT業界の人間なので、テクノロジーの力はもちろん信じています。
今はなかなか時間が作れず悔しい限りなのですが、ゆくゆくはエンジニアリングで音楽や芸術文化に対してできることを、どんどんやっていきたいですね。」
編集後記
いやはや、聞いたことのないIT用語や未来のぶっとんだお話についていくのがやっとなインタビューでしたが、何はともあれまずはテクノロジーに対する自分の意識改革からだなあと改めて強く思わされたインタビューでした。
音楽活動に便利に使えるツールやシステム、今後の自分の活動にもできる限り積極的に取り入れていったり、周りにも提案してみようと思います!
ちなみに、配信やオンラインアンサンブルをガッツリやりたい音楽家に北島さんが一番オススメのPCは、性能に特化している『ゲーミングノートPC』。高性能が求められるパソコンゲームを安定してこなせるスペックは、音楽活動をするにも適しているそうです。値段は一番安いもので十分!とのこと。
今回はテクノロジーのお話を中心にまとめさせていただきましたが、北島さんご自身の音楽活動は、リモート合唱用の曲や、交響曲の作曲などを引き続き積極的に行っていきたいとのことです。
【北島さんの作品一例】
Magna Solemnitas : PV
circulatio aquae【Harmonie Chromatique】
北島さん、今回は貴重なお話、本当にありがとうございました!