将来の地球寒冷化について
近い未来に起きるものとしては、温暖化の進行により海流の弱体化が原因のものと地磁気逆転による弱体化が原因の二種類が考えられているので概要を説明します。
地磁気の弱体化と寒冷化
地磁気の弱体化
北極磁極は、地球の自転軸の北端にある真北とは全く違うもので、変動する地磁気の北端です。
北極磁極は、近年加速度的に移動しており、例えば2018年にはカナダからロシアへと向かって年間55キロメートルも動いたと報告されています。
北極磁極の移動は、地球内部で起こっている地磁気逆転と関係がある可能性があります。地磁気逆転とは、地磁気の向きが南北逆になる現象で、過去に何度も起こっています。
地磁気逆転の際には、地磁気強度が大きく減少するため、宇宙線や太陽風からの影響を受けやすくなります。これは、気候や生物にも影響を与える可能性があります。
地磁気逆転と寒冷化
地磁気が逆転する際に地磁気強度が弱まり、地球に降り注ぐ銀河宇宙線が増えます。
銀河宇宙線は大気をイオン化し雲凝結核を増やして下層雲量を増加させます。
その結果、雲の日傘効果によって地球が寒冷化すると考えられています。
過去に地磁気逆転が起こった時期には、気候変動やモンスーンへの影響が推測されています。
太陽活動が地球気候に及ぼす影響 -銀河宇宙線によるエアロゾル形成-2012 増田公明
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jar/27/3/27_264/_pdf/-char/ja?ssp=1&setlang=ja-JP&safesearch=moderate
海流弱体化による寒冷化
メキシコ海流は、北大西洋の亜熱帯循環の西端に形成される狭く強い海流で、黒潮と並ぶ世界最大の海流です。
メキシコ海流は、西ヨーロッパや北アメリカ東部の気候に大きな影響を与えており、温暖化によって弱体化すると、ヨーロッパの寒冷化や降水量の変化などが起こる可能性があります。
2021年8月にNature Climate Change に掲載 論文「海洋循環システムの1つ・大西洋南北熱塩循環の安定性はほぼ完全に失われた」では、大西洋南北熱塩循環(AMOC)が過去1000年間で最も弱まっており、その安定性がほぼ完全に失われている証拠が見つかったとされています。
また、観測データや気候モデルで、AMOCの強さや変動性を分析したものです。その結果、AMOCは20世紀後半から21世紀初頭にかけて急速に弱まり、その変動性も増加したことから、AMOCが不安定な状態にあることを示しています。
2022年Nature Climate ChangeにInterbasin and interhemispheric impacts of a collapsed Atlantic Overturning Circulationという論文では、大西洋メリディオナル循環(AMOC)が温暖化によって弱体化または崩壊した場合に、他の海盆や半球に及ぼす影響を以下シミュレーションされています。
AMOCの崩壊は、大西洋の北部と南部で対照的な海面水温の変化を引き起こします。ヨーロッパなど北部では冷却が、南部では温暖化が進みます。
AMOCの崩壊は、またインド洋では温暖化が強まり、太平洋では東西の温度差が増大します。
AMOCの崩壊は、南半球では降水量が増加し、乾燥地域が減少します。北半球では降水量が減少し、乾燥地域が拡大します。
Physics-based early warning signal shows that AMOC is on tipping course
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adk1189
海流弱体化への感想
以下海流弱体化で大きな気候変動は起きないという予想もあります。