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論理的思考とは何か 日米仏各国のテキストによる思考表現スタイルの一例

要約をまとめてみました。

思考表現スタイルについて

論文:ディセルタシオンとエッセイ : 論文構造と思考法の仏米比較

ディセルタシオンとエッセイ : 論文構造と思考法の仏米比較
The Dissertation and the Essay, Two Styles of Thought: Analyzing the Differences in the Structure of French and American Academic Writing

以下論文のサマリー翻訳要約。

ディスカッションはテーゼ-反テーゼ-統合の3段階のダイアレクティック構造を持ち、テーマの複雑さを受け入れ、全体像を描きます。一方、エッセイはテーゼ、著者の主張、そして支持証拠に焦点を当て、主張と根拠の間にしっかりとしたリンクを作ることを重視します。

アメリカの学術論文から反テーゼと統合が排除されたのは1960年代で、これは多様な社会経済的背景を持つ学生が容易に書けるような学術論文の形式が必要だったからです。アメリカ式のエッセイは、大衆デモクラシーで機能するように設計されています。

一方、ディスカッションはフランス革命後の新社会と教育の象徴として19世紀末に導入され、フランスの伝統的な古典語と修辞学の教育は、強固な個人的思考のためのダイアレクティクスを利用するものに変わりました。しかし、ギリシャとローマの思想から受け継がれた知的伝統は、フランスの文学とフィロソフィーの共通文化とディセルタシオン(ディスカッション)のダイアレクティカル構造に残っています。フランスのディセルタシオンは、教養ある人々がギリシャとローマの後継者であり、その存在理由は、古典に固有の文化的優越性に基づいており、その知識は反対の視点を統合する包括的な視点を必要とする思考方法を鼓舞するという前提です。したがって、ディセルタシオンはこの教育的、フィロソフィー的視点のテキストによる具体化です。

渡邉, 雅子インタビュー

渡邉, 雅子氏はインタビューで以下のとおり語っています。

「論理的」と感じる思考や論理の型は、実は文化によって異なっており、それぞれの教育の過程で身につけていくものだとしています。

彼女はまた、日本の作文とアメリカのエッセイでは、求められる構造が全く異なっていると述べています。エッセイは「主張」とそれを支持する「事実」で構成される型を踏まえることで、はじめて「論理的」だと評価されるものでした。それに対して、「日本人の書くエッセイは「そして……そして……(and…and…)」と、出来事が起こった時間順に並列でつないでいく傾向がありわかりにくい」と、アメリカ人の教員に言われたそうです。

渡邉氏は、フランスの小論文「ディセルタシオン」についても触れています。ディセルタシオンでは、問いに対する答えがイエスでもノーでもなく、それらを超える第三の道を求めるという特徴があります。また、自分の感想や感覚が一切価値を持たないという点も特徴的です。

渡辺雅子による「思考表現スタイル」

「思考表現スタイル」は、「コミュニケーションの基本となる型」で、私たちが情報をどのように編集し、納得しやすい形にするかの枠組みを指しています。国や文化によって、この思考表現スタイルは異なります。

日本、アメリカ、そして最近ではフランスの子どもたちを対象に、この思考表現スタイルの違いを比較研究の結果、話し方や書き方の常識は、国によって驚くほど違うことが分かりました。例えば、日本では「起承転結」が話したり書いたりするときの基本型になっていますが、この型はアメリカやフランスでは奇抜な表現様式として受け止められることが多いです。

また、思考表現スタイルの違いが、異文化間での学力や能力の評価に影響を与えていることも指摘しています。つまり、同じ内容を述べるのでも、どのような順番で、何をポイントにして述べるかという思考表現スタイルの違いが、文化固有の暗黙の了解として、学力や能力の評価方法と深く関わっているのです。

絵を使った作文実験や授業観察を通じて、これらの違いを具体的に明らかにしています。そして、この違いが理解できれば、PISAのような国際的な学力調査の結果を正確に受け止め、これからの言語教育に生かしていく道筋が見えてくると述べています。
https://web.archive.org/web/20130222033853/http://benesse.jp/berd/center/open/berd/backnumber/2006_06/fea_watanabe_01.html

『論理的思考とは何か』渡邊雅子

感想リンクをしました。

「ドイツ人は『システム』思考、アメリカ人は『パーツ』思考」

残念ながらドイツ語原文サイトは削除されてアカーイブも残っていませんでした。

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