内集団バイアスについて
ホモ・サピエンスの仲間集団と他集団へのバイアスについてまとめました。
概要
以下概要記事を要約してみます。
社会心理学では、「人の集団は黙っていても対立する」という考えが支持されています。これは「内集団びいき」と呼ばれ、人々が自分と同じグループに親近感を抱き、他のグループに対抗意識を覚える傾向を指します。これは個人の「自尊心欲求」に基づいており、人々は自分の価値を自分が属する集団の地位によって満たされると感じることが多いです。
例えば海外で日本のサッカー選手が活躍すると、わがことのようにうれしく、また誇らしく感じます。もちろん、自分や自分の属する集団にプライドを持つこと自体は問題ありません。しかしそこには、必ず他の集団と張り合う氣持ちが隠れています。このことを、集団をまとめる責任者、国や民族であれば為政者はよく知っていなければなりません。ひとたび「愛国心」が燃え上がると、それを制御することは非常に困難なのです。
集団になると自尊心の表明が抑制されず、これが他の集団を劣ったものとみなすことにつながり、平和を脅かす可能性があります。
また、現代の国や民族といった枠組みは、歴史を見れば偶然や政治的な判断によるところが大きいことが明らかで、これも「内集団びいき」が起こる一因となっています。
内集団バイアスについて
「仲間」の形成: 人々は自分と同じカテゴリーにいる人たち全体を「仲間」と認識し、その仲間をひいきする傾向があります。これは「内集団ひいき」や「内集団バイアス」と呼ばれる現象です。
「敵」の認識: 戦争でもネット社会の延焼でも、戦うべき外集団の「敵」が存在します。しかし、「ある外集団が敵である」との認識が生まれるためには、その外集団に対する知覚の偏りが関わっています。
仲間と敵の相互作用: 仲間が批判されたり、逆に仲間が批判をしたりするとき、人々は仲間寄りになってしまうことがあります。この状況が次の「敵の認識」のステージに進むと、争いが深刻になります。
内集団バイアスとナショナリズム、戦争
脳科学者の中野信子氏が脳とナショナリズム、戦争の関係について以下のとおり語っています。
人類は集団行動を取ることで猛獣から身を守り、生き延びてきました。しかし、この特性が戦争を生み出す可能性を秘めています。
「青シャツと黄シャツ」のエピソードは、教育とナショナリズム、戦争の関係を考えるのに役立つと述べています。
「内集団バイアス」という現象があり、これは身びいきが生じることを指します。
「泥棒洞窟実験」では、10~11歳の白人男子で構成する2つの集団を近くの場所でキャンプをさせ、その後、綱引きなどのゲームをして競わせ、お互いの対抗心を煽るように仕向けました。その結果、まるで戦争が勃発したかのような行動が見られました。
愛国教育を受けた子供は他の国に対する優越感を高める可能性があります。
集団が非倫理的になる脳の働き
社会心理学では、人は集団となると思考停止状態に陥り、自分の考えや行動などを深くかえりみることなく無意識のうちにいじめや暴力に加担してしまうことがあり、これを"mob mentality"(集団心理)と呼んでいます。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)、カリフォルニア大学バークレー校、カーネギーメロン大学の合同研究チームが、人間が集団の一員として行動している時、脳のmoral judgementとreflectionに関係する領域の活動が弱まることをMRIスキャンにより発見しました。
実験では、被験者がゲームを行う中で、個人で戦っていると告げられた時に比べて、グループで戦っていると告げられた時の内側前頭前皮質の活動が著しく低下していたことがわかりました。
また、被験者がゲーム終了後に対戦相手の顔写真を選ぶと、内側前頭前皮質の活動が低下した被験者は、チームメイトに比べて写りのよくない対戦相手の顔写真を選ぶ傾向を示しました。
すべての被験者が同じような反応を示したわけではなく、グループで競争することに強く影響を受けた者もいれば、あまり影響を受けなかった者もいました。これは、集団に入ることで、簡単に自分を見失いやすい人と、まわりに流されない人がいると考えられますが、その理由はまだ明らかになっていません。
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