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コーヒー豆の特性を引き出す!コーヒーの焙煎方法(上級編)

自家焙煎を始めるために焙煎機を購入したけど、「焙煎度合が同じにならない」「焙煎時間が毎回異なる」「見た目は同じなので、味わいが違う」などなど、再現性のある焙煎ができないというお問合せを多数いただきます。

こちらの記事「コーヒーの焙煎方法(初級)」では、安定した焙煎を行う為の温度プロファイルの作りかたについて述べて参りましたが、本記事では安定した焙煎ができるようになった後、どのようにして味づくりを行うかを説明したいと思います。

※初級編をご覧になっていないと???となるかもしれないので、是非初級編をご覧いただいた後に、本記事をご覧いただければと存じます。

初級編のおさらい(温度プロファイルの確立)

■投入温度の固定化(与える熱量を一定に)
「火をつけて、焙煎機内の温度が180度になった!よし、焙煎開始!」
これでは焙煎機に対して180度丁度の熱量を与えているのか、それとも180度以上の200度になる熱量を与えているかわからないので、「一定の温度になるようにダンパーと火力の調整ポイントを見つける」ことが重要です。

排気がニュートラルに行われているポジションを見つけて、ガス圧の調整を行うことで
「180度に固定したい場合はガス圧のメモリはここだな」
「160度に固定したい場合はガス圧のメモリは少し下げてここだな」という
コントロールができるようになるので、とても重量なポイントです。

■変動要因を一定に
投入温度の固定化ができたら、投入する生豆の量、投入する生豆の種類も同じにして焙煎してみましょう。投入する生豆の量が異なると、与える熱量に対して受け取る熱量が変わり結果も異なりますし、生豆の種類によって固さが異なり、色づきや爆ぜ(ハゼ)のタイミングが変わってくるので、温度プロファイルを確立するまでは、
生豆の量・投入する生豆の種類も同じにして変動要因を減らしましょう。

※投入する生豆量は焙煎可能量の50%以上で行いましょう。
 10%投入量が変わるだけでも結構かわるので、
 実際に焙煎する時の投入量を基準にテストしてみるのが良いと思います。

※おすすめは標高が600m-800mと低く、高地産生豆に比べると焙煎が容易で、価格も安いBrazil No.2がおススメ。コロンビアなどの高地産生豆は固く、変化が遅い為、まずは簡単な生豆から始めましょう。

■無操作で焙煎して記録してみる
生豆を投入したら、ガス圧やダンパーを操作してみたくなりますが、
それは次の段階ですのでまずは生豆を投入して、2ハゼぐらいまで焙煎してみましょう。投入後何分のタイミングで1ハゼしたか、その後何分で2ハゼしたかという記録を取っておきましょう。

※一回目の焙煎では機体や配管が温まってないので、2回目以降の焙煎では
 温度の変化、爆ぜのタイミングが大きく異なりますので、
 2回目以降の焙煎時の記録を標準とした方がいいと思います。

■試飲してみる
投入温度を180度になるように固定し、無操作で2ハゼぐらいまで焙煎してみたら試飲してみましょう。温度計の表示温度が間違っていなければ十分美味しいコーヒーになっているとは思いますが、焙煎機や排気の能力によっては以下の様な味わいになっている場合もありますので、
その場合は以下のように調整してみてください。

・味わいが生っぽい?・・・焙煎時間が速いので、投入温度を下げましょう
・味わいがスカスカ・・・・・焙煎時間が長いので、投入温度を上げましょう

ここで「美味しい」とか「飲める」という感触になったら、この設定で複数回同じ焙煎をして、同じ味わいになっているかどうかを確認してください。同じ味わいになったら初めて基準となる温度プロファイルが確立されたと言えます。

※焙煎したてのコーヒーはガスを放出し続けており、抽出しても十分な味わいが出ませんので、理想は焙煎後の翌日や2日後に試飲を行うのが望ましいです。(私が我慢できずにすぐ飲んじゃうこともあるのですが、結局わからないんですよね・・・)

上級編

初級の振り返りがかなり長くなってしまいましたが、基準となるプロファイルの確立無くして、ここからのお話ができなかったのでご容赦くださいませ・・・。

基準となるプロファイルを確立させた後は、その生豆の特性を引き出す為の焙煎を行うのが、ロースター(焙煎する人)の腕の見せどころだと思います。ここからは私の個人的な感覚と経験則に基づいたものであり、ご利用の焙煎機や排気能力によっては同じようにはいきませんので、
あくまでご参考までにお願いいたします。

焙煎の3段階

私は焙煎工程を生豆の見た目や反応に応じて大きく3段階に分けており、
この3段階のどこで火力を強くするか弱くするかによってコーヒーの味わいが変わると考えております。

焙煎初期(水抜き期間

生豆を投入してから生豆が黄色~黄金色に色づくまでの期間で、
生豆の水分が蒸発して乾燥が進む工程です。

コーヒーの酸味と質感のバランスを調整できる期間と考えており、
熱量が強いと、キレ味のある酸味が出て、軽い質感に
熱量が弱いと、酸味が和らぎ質感が重くなります。

焙煎中期(変色期間

黄色~黄金色から豆の体積が膨張する1ハゼまでの期間で、
アミノ酸と糖類が結合するメイラード反応が促進され、色づき始める工程

フレーバー(味わい)の明確さに影響を及ぼす期間で、
熱量が強いと、はっきりとしたフレーバーを出しやすくなる
熱量が弱いと、フレーバー穏やかになり、マイルドな味わいになります。

焙煎後期(調整期間

1ハゼ開始から焙煎終了時までの期間で、コーヒーの味わい・香りに影響する化学成分が積極的に変化する期間。

風味全体のバランスを調整する期間で、
熱量が強いと、酸味とフレーバーが優位な味わいに
熱量が弱いと、甘味と質感のあるマイルドな傾向になります。

上記の内容を表にするとこのようになります。

8種の温度プロファイル

上記で焙煎工程は3段階に分けることができ、各段階で温度を上げるか、
下げるかによって味わいがかわるということを説明させていただきました。
各工程でガス圧、ダンパーを操作して温度が強・中・弱に設定できると考えると、27通りの焙煎方法が可能ということになります。

※この温度は私がサンプルロースターで焙煎する時の温度設定ですので、ご参考までに。 ここの中➡中➡中のプロファイルが初級で説明した、まず確立してほしいプロファイルです。 以下のグラフは弊社サンプルロースターの場合のプロファイルです。

ただし、実際には温度コントロールは難しいですし、できたとしても風味の違いは私には説明できないので、3種の段階×温度が高いか低いかの計8種類に要約したいと思います。その8種類のプロファイルを用いた時の風味特徴を以下のようにまとめました。

乱暴にまとめると、
短時間で焙煎したほうが、酸味とフレーバーが出やすくなり、
長時間で焙煎したほうが、甘味と濃厚感が出やすくなります。

ただし、極端な短時間焙煎は芯まで火が入らず生焼けになりますし、極端な長時間焙煎は成分を焼失してしまい、スカスカの味わいになってしまいますので注意が必要です。

初級で中➡中➡中のプロファイルを作成したと思いますが、まずはご使用の焙煎機で火力が強の場合のガス圧やダンパーの開閉度合、
火力が弱の場合のガス圧、ダンパーの開閉度合を確立する必要があります。

※私が使用するサンプルロースターの場合だと 火力中のプロファイルは温度180度、ガス圧80%、ダンパー位置ニュートラル(5) 火力強のプロファイルは温度200度、ガス圧80%、ダンパー位置3(5から2閉める) 火力弱のプロファイルは温度160度、ガス圧80%、ダンパー位置7(5から2開く)
という様に、ダンパーの調整だけで火力調整を行っていますが、これは排気調整を行う機械を焙煎機とは別に設置しているから可能になる調整ですので、あくまで参考までに。

おすすめのプロファイル

焙煎は3段階に分かれ、それぞれの段階でどのように火力を調整するかによって味わいが
変化するというお話をさせていただきましたが、私がおすすめするプロファイルはこちらです。

①強➡強➡弱のプロファイル

焙煎初期、中期の火力は強くして後期の火力は弱くするプロファイルで、
酸味、フレーバー、甘味、濃厚感がバランスよく出せるプロファイル。
私は焙煎したことが無い生豆はまずこのプロファイルで焙煎します。

②弱➡強➡強のプロファイル

焙煎初期は火力は弱く、中期と後期の火力は強くするプロファイルで、
酸味が穏やかでフレーバーが出やすいプロファイルなので、
ケニアやタンザニアのような全体的な風味要素が強い生豆を、
酸味を抑えてマイルドにしたい場合などにこのプロファイルで焙煎します。

③弱➡弱➡強のプロファイル

焙煎初期、中期の火力は弱く、後期の火力を強くするプロファイルで、
酸味は穏やかになり、繊細な味わいが出やすいプロファイルなので、
深煎りのコーヒーをマイルドな味わいにしたいときや、濃厚感を主体とした味わいを作りたいときにこのプロファイルで焙煎します。

この3つの中でもおススメなのが①の強➡強➡弱のプロファイルです。
焙煎したことが無い生豆はまずこのプロファイルで焙煎してみて、
酸味が弱い ➡「これ以上酸味を出すには焙煎度合を下げるしかないか・・・」コクが弱い ➡「もう少し深く焙煎してみるか・・・」
酸味が強い ➡「弱➡弱➡強にしてみるか・・・」
といった検証を繰り返して、その生豆にあった焙煎方法と焙煎度合を検討しています。

3段階の火力操作による8種のプロファイルを総評するとこうなります。

焙煎方法上級編まとめ

以上、焙煎方法上級編でした。世の中にはもっとも細かな設定で焙煎している方もいますので、「どこが上級なんだ?」と言われてしまうかもしれませんが、このプロファイルの変更による風味の差は明らかに変わるようなものではなく、少し変わる程度のものですので、私がなんとか風味の差を認識できる範囲ということで、私の中の上級としております。

本記事で説明したかったことは、①まずは基準となる温度プロファイルを作成する②焙煎は3段階に分けることができ、段階別に火力調整をすることで風味をコントロールできる。③プロファイルを選択することで、生豆の特性を活かす焙煎をすることができる。ということでした。

ここまでご覧頂きありがとうございました。
疑問点等ございましたら、コメント・お問合せ頂ければと思います。

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