コーヒーの焙煎って何?
このような質問を色々な方からされます。まず、コーヒーとは生産された段階からあのような茶色をしているワケではなく、さくらんぼと同じようなカタチで収穫され、まわりの果肉部分を外して取り出せる種子部分がコーヒーの生の状態、いわゆるコーヒー生豆です。この生豆を焙煎して初めて普段皆様が飲用するコーヒーとして抽出することが可能になります。
生豆の状態で飲んでみた・・・。
ちなみにコーヒー生豆の状態で抽出してみたらどんな味がするんだろう?と試してみたことがあります。コーヒー生豆の状態はいろいろな微生物がついていたり、汚れがついているので、焙煎機で200℃で1分ほど焙煎してから試しました。まず固すぎてなかなか粉砕できません。家庭用のコーヒーミルなどで粉砕しようとすると、壊れてしまうのでナタでガンガンくだきました。ペーパードリップにて粉砕した生豆にお湯をかけて抽出してみたのですが、恐ろしいほどの渋みと青臭い感じがします。(その辺の雑草を煮出して飲んだような感じです。やったことないですけど笑)コーヒーを美味しくいただく為には、焙煎という工程が不可欠なのです。
焙煎について
これまで様々な焙煎機に触れ、焙煎してきました。富士珈機の1kg、3kg、10kg、PRPBATの100g、5kg、45kg、120kg焙煎機等を使用してきましたが、焙煎とはそんなに難しいものではないと考えております。「何度の熱の状態で何分焙煎したか」これを守れば安定した焙煎ができます。詳しくいうと、直火式、半熱風式、熱風式といった焙煎機の構造による違い等もあるのですが、基本的な部分はかわりません。焙煎とは化学です。経験とか感覚という部分はあまり重要でないのです。
おおよその焙煎時間
この焙煎時間で焙煎したから美味しい!というものは定義されていないのですが、色々な焙煎工場や、自家焙煎店店主様のお話を聞く限り、190℃ほどの熱量で12~14分ほど焙煎する方がほとんどだと思います。ただ、缶コーヒーの原料や、業務用のコーヒー等を大量に焙煎している企業は熱風焙煎機とよばれる機械をもっており、この機械では7分から9分ほどで焙煎を完了します(伝熱効率が違う為、短時間での焙煎が可能です)
時間による風味の変化
焙煎を安定させるのは難しいことではないのですが、各産地で生産されたコーヒーの風味傾向に合わせて焙煎する、その焙煎時間と温度を見つけることが最も難しいことだと考えています。焙煎は少し天ぷらに似ているところがあって、サクっと揚げたいなら高温短時間、ふわっと揚げたいなら低温長時間といった感じです。コーヒーでいうと短時間焙煎すると、酸味・甘み・香りがでやすく、後口のキレがよいメリハリのある味わいになりやすいです。この焙煎方法は香りや酸味、透明感を特徴とするエチオピア、コロンビア、中米産のコーヒーに適した焙煎方法と言えますが、短すぎる焙煎時間は芯まで火が通らない「生焼け」の状態になる可能性もありますので、標高の高い生産地で収穫されたコーヒーの場合はより注意が必要です。(高標高で栽培されたコーヒーは昼夜の寒暖差という厳しい環境下におかれるため、その環境にまけじと細胞が成長し、実が固くなる傾向にあるため)反対に低温長時間で焙煎すると、濃厚感があり、口当たりに余韻がのこるマイルドな味わいになりやすいです。この焙煎方法はマイルドなあじわいを特徴とするブラジルやインドネシアに適した焙煎方法と言えます。長時間になる分、その間に失われる風味も多いので長すぎる焙煎にも注意が必要ですが、時間を見極めることができればマイルドな味わいにしあげることができます。
終わりに
簡単に説明するつもりが、少し踏み込んだ説明をしてしまいましたが、日々生豆を仕入れるたびに、「この生豆の風味特性を生かす焙煎時間・焙煎度合いってどれくらいだろう?」とテストを行い商品化していきます。ここが焙煎という業務に携わる人間にとって最も難しいところで、楽しいとこなんです。