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バイリンガル教育って本当に必要?ある医療研究報告から

バイリンガルは認知症の発症を遅らせる」。近年、このような研究結果が続々と発表され話題になっています。

ちょっと古い記事ですが、MedicalTribuneがバイリンガルは脳卒中後のダメージにも差が出るという以下のような医療ニュースを発表しました。

「インド・ニザム医学研究所神経学のスワルナ・アラジ准教授らは、さまざまな文化を持つ人々が共生する同国のハイデラバードの脳卒中患者を調べた結果、単言語を話す「モノリンガル」に比べ、バイリンガルで脳卒中の後も認知機能が正常だった割合が2倍以上に上った」というものです。

2カ国語以上を話す「バイリンガル」と認知症の関係については近年の研究から、

①バイリンガルでは高齢になっても認知機能が良好な人が多いこと
②認知症の発症が遅いこと


などが報告されてるのはよく知られていますね。ですが、脳卒中後の機能にも大きく影響するとは。これは大きな発見かと。

先の研究では、「インド中南部にあるニザム医学研究所の脳卒中データベースに、虚血性脳卒中(脳梗塞など)患者608人(バイリンガル353人、モノリンガル255人)を対象として調査。分析の結果、認知機能が正常だった割合は、モノリンガルの19.6%に対し、バイリンガルでは40.5%と大幅に高かった」そうです。

ふむふむ、で、バイリンガルであることはいいことづくめのように思えますが、この研究では、安直に結論付けることできないよ、とも警告しています。

今回の研究結果からは、「モノリンガルよりもバイリンガルで、脳卒中の後に認知機能が正常な割合が高かった」ことが示唆されたが、これは決して「2カ国語以上を話す能力が認知機能に良い」ということにつながるわけではない。というのも「研究が行われた地域にはさまざまな民族が暮らし、第1公用語のテルグ語に加えてウルドゥー語やヒンディー語、英語など多くの言葉が使われていて、そうした日常的に話す相手によって言語を切り替える習慣が、認知機能に好影響を及ぼしている可能性が高い」と報告しています。

やっぱり。安易にこういう結果の表面的なことに飛びついて、早急な結論を出すのは危険です。

この点について、研究を先導したアラジ准教授らは「今回の研究結果は、モノリンガルの人が他の言語を学ぶべきことを示すものではない。若い時から知的な刺激のある活動の習慣を持つことが、脳卒中によるダメージから認知機能を保護することを示唆している」と言っておられます。

そしてもっと大事なことは、日々朝から晩まで二つの言語を相当の頻度で交互に使っていない人は、この”バイリンガル”の定義には当てはまりません。日本で週に2回ほど授業や課外の塾で数時間ちょろりと英語に触れる程度では、単なるカルチャーセンターのお習い事に等しく、ほとんど影響がなく、ここでの研究結果は何の関係もないことだと思っていいでしょう。

とくにかくバイリンガル教育を自身のお子さんに早く受けさせないと時代に取り残されるんじゃないかと不安になってるご両親は安堵されたのでは。

英語を生業としているのにこう言うのも何ですが、中途半端に英語やるくらいなら、まず母語の日本語の読み書き、プレゼン能力をもっと鍛えて、言語運用能力の幹を幼少の頃まで(12歳くらい)に築いた方が、その後の英語学習への転移が望める分、よっぽど有利なんじゃないかなと私などは思います。

参考までにバイリンガルに関する動画がありますので、ご関心のある方はどうぞ。


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