英語学習をもっと楽しく!洋楽で口語スキルを磨きませんか?(76)
今日は、70年代の大ヒット曲をピックアップしましょう。
前回に引き続きメロウな曲を。
これも、StyxさんのBabe同様、TUTAYA内のレストランでかかっていた曲です。ポール・ディヴィスさんの
I Go Crazy
です。
「気が変になっちゃうよ」ってタイトル。当時、全米Top 100に40週もランクインした息の長い名曲です。日本でもよくかかっていた記憶が。では、早速、聞いて歌詞を見てみましょう。
注目したいのは、Getting over you was slow.
get overのような「基本動詞+前置詞(副詞)」を句動詞と呼んでいます。
今日は句動詞について深堀してみます。
get overはoverの「弧を描くように覆う」というニュアンスから、「困難などを乗り越える、克服する」ということで、ここは後ろに人がきているので、「君の事を乗り越える」→「君のことを忘れる」という意味。それがslowだったと言ってるわけです。つまり、「君のことがなかなか忘れられなかった」「忘れるのに時間がかかった」ということ。
受験で英語を学んできた人なら、
It took some time to forget about you.
のような文を作りがちです。もちろんこれでも間違いではありません。日本語の発想になじみやすいので、こういう文がすっと思いつくっわけです。ただし、これだとやはり書き言葉のようで堅いし、会話ではゴツゴツ感があります。
句動詞を使った方が、英語国民の日常になじむし、生活感があり頻繁に好んで使われる傾向があるんです。事実、句動詞やイディオム、コロケーションといった定型表現が、英語母語話者が普段使う言葉の半分以上(50%~80%)を占めていると言われています。
では、せっかく今回の曲でget overが出てきたので、これをもう少し詳しくみてみましょうか。
get = 静止しているあるものを、努力して手に入れる
「手に入れる」ために、「モノに接近する」ことから「あるモノに到達する、着く」や「ある状態に到達する、なる」という意味が生まれました。
over = あるものの上を越える
上を越える時の、話し手の視点は、一番手前、頂上、そして越えた向こう側をいずれも含み、文脈によってさまざまな意味になります。
そこでget overは、
get 「あるモノに到達する」+ over「越える」= ~を乗り越える
ということです。物理的にモノを乗り越えることから、抽象的な「困難、障害、不幸」を乗り越える、そして、「人」の場合なら、「別れた人(特に恋人が多い)などを忘れる」、「嫌なことを終わらせる」という意味に発展していきました。
1. Satoshi got over the fence easily.
(サトシはあっさりとフェンスを乗り越えた)
2. It took me years to get over my dog's loss.
(愛犬の死を乗り越えるのに何年もかかった)
3. You've got to get over her and find someone new.
(彼女のことは忘れて、新しい人を見つけなくっちゃだめだよ)
4. We must get the war between Ukraine and Russia over for the sake of
the vulnerable.
(弱者のためはやくウクライナとロシアの戦争を終わらせるべきです)
こんな感じです。この曲は3.の用法ですね。これで少しはget overが身近になったのではないでしょうか。