見出し画像

#01【キミの名は?】_おしゃれ独本 (昭和~平成、個人的ファッション史)

1950〜60年代の映画や雑誌なんかでやたらと見かけるアレ。
ほら、スカーフやストールなんかを頭に巻くアレ。

アレ、何ていう呼び名なの?

上の絵の右っ側の方には「真知子巻き」という名前がついている。
(ある一定の年齢以上の人はこれ見ると必ず声に出してその名を言わないと気が済まないようだ。なんでなんだろう?w)

さておき。ご存知ない方のためにざっくり説明しておく。「真知子巻き」というのは、1953年公開の映画『君の名は』で主人公・氏家真知子がショールを頭から首にかけてフワリと巻いたスタイルのこと。もともと真知子役の岸惠子が、北海道ロケの寒さに耐えかねて始めたところなんとなく定着して、それを映画館で観た人たちが「あら素敵!」と真似をして広まったらしい。

とりあえず、真知子巻きは分かった。
じゃあ頭に巻けばなんでも真知子巻きかと言うと、そうではない。
上の絵の左っ側のほうは真知子巻きとは呼ばない。

じゃあなんなのか?

残念ながら、不明である。

私が調べた限りにおいては、呼び名がないのだ。

左の人物は、いちおう、オードリー・ヘプバーンで、『シャレード』という映画の1シーンのいでだち。怪しい男を尾行するシーン。必然性はないが雨上がりという設定。トレンチ型のレインコートを着て、足元は短かめのレインブーツ。寄りのショットでよく見てみると、頭に被っているスカーフは何やらビニールのような撥水性の素材でできている。つまり髪の毛を雨で濡らさないという目的のためのもの。

別の映画『ティファニーで朝食を』でも、同様の被り物をしているが、こちらはシルクのようなシフォンのような薄い素材。防水という目的ではなく、単なるおしゃれと解釈するのがよかろう。

ここで突然、幼い頃の記憶が蘇る。

何を隠そう、私の母も被っていたのだ。
わが家の生活水準から鑑みて上等なシルク素材などではない、おそらく化繊の安物だと思うが、花柄とか幾何学模様のスカーフをたびたび被っていた。
母だけではない。親戚のおばちゃんも、近所のおばちゃんも、おばちゃんと呼ばれる女性は大体みな被っていた。
(おばちゃんと言っても、推定30代~50代くらいで、今の私よりはるかに若い世代だが。)

誰もかれも被っていたのには、その時代ならではのいくつかの要因が考えられる。

ひとつには、髪のセットをするのが面倒くさいとき、ササッと被って隠すことができること。
昭和30〜40年代、今みたいに気の利いたヘアスタイリング剤はない。
せいぜいヘアスプレーで固めるか、ヘアクリームで落ち着かせるかの2択。
特別な装いの時は別として、普段、ちょっとそこまで買い物程度の時にいちいち髪をセットするのは面倒だったはずで、そんな時には便利だったろう。
風や小雨で髪が乱れるのも防いでくれたはずだ。

もうひとつは、当時は今みたいに毎日洗髪をする習慣がなかったこと。
シャンプーがデイリーの習慣になったのは70年代後期から80年代当たりだと記憶している。
洗髪の回数が限られているため、なるべく髪にほこりなどの汚れがつかないよう、頭全体を覆って防御していたのではないだろうかと想像する。
ちなみに私の母親世代は、いまだに毎日は髪を洗わない。

上記のような事情で、当時は、30代~50代くらいの女性のほとんどは、日常的にスカーフを被っていた。
もうそれは「流行」と呼んでもよい。
なのに「XXXルック」みたいな呼び名がないなんて...…謎だし、残念でもある。

誰か知ってたら教えて欲しい。
スカーフやショールを頭に巻くファッション。
はて、一体、キミの名は?

個展会場での展示風景



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?