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エッセイ・ショートショート

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#短編

音楽

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 女は終始俯き加減で話を聞いていた。大きな眼は伏しがちで、焦点は定まらず虚空を見つめ、アイラインやチークは顔に馴染まないまま、感情とは分離され、宙に漂っているようだった。
「疲れたの?」「うん。」
女は注文したケーキを苦しそうに口に運びながら答えた。
ケーキのひとかけを口に運び終えると、カチャと音をさせながらフォークを白磁の器に戻す。

女と男以外に客はいない。
薄暗く、黒寄りのダークブラウンで統

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