「自分を偽る」意思決定と、ヒプノセラピーの意義、とちょっと宣伝

先日、ヒプノセラピストの対談に招かれてちょっと話をした。

ヒプノセラピーとは、日本語に訳すと「催眠療法」となる。

怪しさ満点に思われるかもしれないが、れっきとした臨床心理術である。


ここでいう「催眠」とは、深く集中し、かつリラックスしている状態を指し、脳波がα波からθ波優勢になっている状態を指す。本を読んで物語に没頭しているときや、ゲームに集中しているときも、同じ催眠状態だ。こう考えると「催眠」はそれほど特別なものではないことがわかるだろう。

ヒプノセラピーはカウンセラーが、そういった催眠状態にクライエントを誘導し、本人の無意識を引き出すことを手助けするセラピーだ。その名前の通り、無意識は普段僕たちが意識せずにいる心の領域で、しばしば「自分がみたくないもの」「認めたくないもの」「思い出したくない過去の心の傷」が隠されている場所でもある。

ヒプノセラピーのカウンセラーはクライエントとの対話セッションを通じて、その無意識を引き出す。つまり、それらを意識化し、クライエント自身で理解させる。それにより、無意識にあった心の傷を癒したり、その傷によって引き起こされていた人間関係の問題を解決したり、その傷によって起こっていた体調不良を直したりすることができる。

もちろん万能な治療法ではないが、きちんと受ければ、一般の人が思うよりもずっと効果的な心的治療法である。実際、アメリカ心理学会とアメリカ医師会は 、1958 年以来、催眠療法を有効な治療法として認めており、米国国立衛生研究所 (NIH) は、1995 年以来、慢性疼痛の治療法として催眠療法を推奨している。僕の暮らしているマレーシアでもヒプノセラピーを行っている病院は数多い。

日本にはヒプノセラピーの社団法人があり、そこが2025年初頭にオンラインイベントがあるので、その宣伝ライブを兼ねたトーク会のシリーズをやっていて、その一つに呼ばれた、というのが経緯だ。

内容はこのリンクのビデオアーカイブをみていただければと思う。

https://www.facebook.com/watch/live/?ref=watch_permalink&v=1762644327818061

僕が今このノートを書いているのは、おそらくこのノートをご覧になるIB教育や留学に興味のある方たちにも、ヒプノセラピーについて知ることが重要だと思うからだ。

これまでも、時々書いてきたが、子供の学校選びをする時や、海外留学にともなう様々な意思決定をするときに、どうみても「これは後で後悔する」あるいは「子どもためにならない」決定をする保護者の方たちを、実際に見てきた。

そして重要なのは、そんな決定をする保護者は、ほぼ例外なく「自分(達)は子供のことを一番に想って、決定している」と信じていることだ。しかし、心理学者として見たとき、彼らの決定は無意識に「自分ファースト」になっていることが多い。

例えば、教育プログラムを考えたらA校がいいと思っていても、実際にマレーシアで見学すると、自分の住みたい場所(多くは人に自慢できるような高級住宅街)の近くにある、別の教育ブログラムを持つB校に決める保護者がいる。その時に、その保護者は「B校のプログラムだっていいし、何より周囲の環境がいい、それに学校の設備もキレイで新しい」という「理由付け」をする。つまり、学校を選択した基準は、子どもそっちのけの「自分ファースト」であり、しかもその理由は後になって付け足したものだ。

誤解のないように言うと、この決定自体を僕は否定しない。保護者が自分ファーストで決めるかどうかはそこの親子の問題だし、何を基準にするかも彼らの自由なので、決定の内容はある意味どうでもいい。

重要なのは、保護者が「自分ファースト」になっていることに気づかず、「子供のため」だと、自分の意思決定の理由を偽っていることにある。このような意思決定を続けていくと、親子関係はうまく行かなくなることが多いと思う。

親からすると「こんなに子どもことを想っていろいろしてあげているのに」と考えるが、本当は親が自分ファーストで決定していることを子供は肌で感じているため、親の決定にことごとく反抗したり、あるいは完全に親に従って自分の意志を示さなくなったり、学校でひんぱんに問題を引き起こしたり、周囲と断絶してひきこもりや不登校になる可能性が高くなると思っている。


自分で自分を偽っていることに気づかない保護者は、そういった問題を学校や子供に原因があると考えがちになる。それらの原因が全くないとは言わないが、問題の根幹は、保護者の意思決定の仕方にあると僕は考える。

それを避けるためにはどうすればいいか。

保護者が、自分を偽らずに、自分が本当に何を望んでいるかを知ることだ。それは、自分の無意識を知ることである。ヒプノセラピーは確かにその一助になると僕は考えている。

そして、自分の無意識に向き合い、それを理解し、意識化できると、親子関係に限らず、周囲の人間関係や仕事も上向きになることが多い。

僕自身、ヒプノセラピーを(数回だけだが)受けて、それを実感している。現在僕はマレーシアの大学の学部長をしており、世界中から来たスタッフと働いている、仕事上のコミュケーションを取る際、実際にヒプノセラピーの知識と経験は、とても役に立っている。

なので、興味があれば、このリンクにある、来年早々のセミナーを覗いてみていただればと思う。
https://www.nobimanabi.net/ishikifes2025wa


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