『HADO』は本能が欲しているスポーツだ
取材では必ずと言っていいほど「HADOができた経緯を教えて下さい」っていう質問が飛んできます。
でもいくつもの質問の一つなのでいつも軽めに答えてます。
でも、今回はその回答をがっつりと書きます。
その回答って企画者にとっては結構面白いと思うし、気付きもあると思います。
なので、ゲームプランナーを目指してる人とかやってる人に是非読んでもらいたいです。
例によって『HADO』って何?って人はこちらから。
始まりは「かめはめ波を撃ちたい」
取材時には大体これを答えてます。
うちの代表が昔から「かめはめ波」を撃ちたいという強い想いを持っていて、今の技術を使えば同じような体験ができるのではないか、という着想のもと開発をスタートしました。
と、こんな感じです。
これは嘘偽りなく本当で、代表はかめはめ波を撃つために起業しています。
meleapができてから約半年後、まだかめはめ波のプロトタイプもできていないタイミングで私はJOINしました。
正直かめはめ波で会社やってくのは無理だろーと思ってましたが、「かめはめ波を撃ちたい」というワードに惹かれたのは確かだと思います。
幼少期に誰もが憧れたことであるし、この一言でどのようなコンテンツかが容易に想像できる。しかも世界にもそのまま通じるし、なによりキャッチーだ。
そんな「かめはめ波を撃ちたい」というコンセプトは創業間もない当時、優秀な仲間やメディアを引きつける原動力になっていたのは間違いないと思います。
成長するコンテンツには、必ずといっていいほどキャッチーで共感できるコンセプトが存在します。
ゲームからスポーツへの戦略的転換
私がJOINした当時は、かめはめ波的な技を撃って、街なかに現れた巨大なモンスターを倒すというリアルモンスターハンターみたいなコンテンツを目指してプロトタイプづくりをしていました。
(これは現在のHADO MONSTER BATTLEというコンテンツに繋がっています)
ただ私は、この方向性にはものすごい危機感を感じていました。
当時はOculusなどによりVRが注目されてきたタイミングで、同じような事を考えている人はごまんといました(ARはあまりなかったけど)。
また、meleapにJOINする前はずっとソーシャルゲームのディレクターをやっていた私としては、ゲームの開発は金がかかるし、当たるかどうかは博打。しかもすぐに飽きられるか、大手の作ったクオリティの高いものに乗り換えられてしまうという認識でした。
そんな中で当時のmeleapがゲームを作ることにどうしても勝ち筋が見いだせませんでした。
そこで、様々な議論を重ねた結果、ゲームではなくスポーツとしてコンテンツを作っていこうという結論にいたりました。
その主な理由が下記です。
・スポーツはクリアという概念がないエンドコンテンツである
・スポーツであればグラフィックやシステム的なコストを抑えられる
・スポーツとして定着すれば簡単には大手にもっていかれない
・プロトタイプをやってみると結構運動になる
・新しいスポーツを作るという事は誰もやっていない
最初の3つの理由はゲームで抱いていた懸念材料を軽減してくれました。
そして、そもそもスポーツの着想に至ったのは、プロトタイプを遊んだ時に息が上がる程身体を動かしたからです。
さらに、なによりもスポーツ路線に傾倒した理由としては、新しいスポーツを作ろうというスタートアップが世の中に存在していなかったことです。
ただ、これだけ情報技術が発達し、進化を続ける未来において、スポーツ自体にイノベーションが起きないなんて事はないはずです。
100年後には必ずテクノロジーを使った新しいスポーツは存在しています。
それに気づいた時からもうワクワクが止まらなくなりました(現在も継続中)。お宝が絶対に眠っている超ブルーオーシャンです(波はめちゃくちゃ荒いけど)。
その考えを基に「テクノスポーツ」という新しいスポーツジャンルをつくり、その最初の競技を『HADO』と名付け本格的に開発がスタートしました。
理屈より本能の赴くままに
さて、『HADO』はスポーツとして開発をしていくことになりますが、肝心のルールを決めなくてはなりません。
こちらの動画は一番最初に作ったコンセプトムービーです(2015年1月)。
この時から3vs3の形式で、制限時間が存在します(長さは違うけど)。
3vs3というのは、当時からこだわっている部分です。
スポーツをする上でどういう体験をしてほしいかを考えた時に、真っ先に浮かんだのが、チームメイトと抱き合ったりハイタッチをして喜ぶシーンでした。
そのためには個人競技ではなく、チーム競技である必要があります。
チームメンバーそれぞれに自分の役割があり、それに基づき作戦を立て、その作戦どおりに試合が進み勝利をおさめた時に思わずハイタッチがでると仮定しました。
とはいえ、いきなりサッカーのような9vs9にしても人が集まりませんし、そんな大きなコートを用意することも難しいです。
なので、チームの最小数である3人というのをプレイ人数に設定しました。
制限時間制についてですが、HADOは普及のためイベントでの利用が多くなると考えていました。
イベントでは1時間あたりの回転数が求められます。そうなった場合、試合時間が読めない得点制のスポーツではなく、制限時間が決まっているスポーツのほうが普及が見込めると考えました。
さて、今のHADOと先程のムービーとで明らかに異なる部分があります。
それは、相手プレイヤーを倒して点をとるのか、敵陣地のクリスタルを壊して点をとるのかです。
ゲームプランナーの人ならなんとなく敵陣地のクリスタルを壊すようなタワーディフェンス系のルールにしたくなるのはわかってくれると思います。
そのほうが個人の役割をつくりやすいし、クリスタルを巡る攻防がプレイヤーにとっても観客にとっても面白くなりそうです。
そのような観点から相手陣地のクリスタルを壊すというプロトタイプを作り、様々な人にデモプレイをしてもらいました。
しかし、その結果は私がしてほしい動きとは大きく異なりました。
10人中10人がクリスタルを撃つ事にすぐ飽きてしまい、人対人で撃ち合ってワーキャーと楽しそうにしているのです。
その姿を見て、動物の狩猟本能というか、人間の本当の姿をみたような気がしました。
普通はいきなり他人に向かってボールを投げつけることはしません。それは当てられたほうが痛いという事を知っているのでやりたくても理性で抑えているのです。
ただ、ARの世界で痛みを伴わないとわかっている環境ではめちゃくちゃ撃ち合います。
その姿を見て、これこそがまずテクノスポーツで取り入れるべきルールだと察しました。
人が本能的(直感的)にやってしまう行動を競技のゴールにする。
すごいシンプルなのですが、これこそがHADOの面白さの真髄です。
最後に
まだまだ、伝えきれない事はたくさんありますが、これが現在のHADOのルールになる経緯です。
ただ、HADOは常に進化していく競技です。ルールも今後どんどん変化していきます。
進化することがテクノスポーツの強みですので、是非その変化も楽しんでもらえたらと思います。
そして、ゲームプランナーや企画者の方は、このテクノスポーツという新しいジャンルにおいてどんどん才能を発揮してほしいと思っています。
超ブルーオーシャンな今がチャンスです。
さて、最後はいつもの告知です。
HADO界最強の8チームが集結する日本選手権「HADO SPRING CUP 2019」が5/11(土)に開催されます。
是非会場に足をお運びいただき、その熱気を現地で感じて下さい。
最近同じようなゲームばかり作らされてるなぁ、なんてプランナーの人はガンガンに心揺さぶられると思います。
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