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【書籍紹介】ファンを作る力 デジタルで仕組み化できる2年で25倍増の顧客分析マーケティング<後編>

プロバスケットボールの川崎ブレーブスサンダースの事業責任者である藤掛直人氏が、同クラブの人気を飛躍的に伸ばしたデジタルマーケティングの奥義を、余すところなく紹介した書籍。

中編はこちら。

■デジタル施策は目的と役割がすべて

  • 全体戦略を構築する

  • 各デジタルメディアの目的と役割を明確にする

  • ファンになる過程をフロー化する

  • それぞれのフェーズごとに施策を配置していく

■新たな層をTikTokで開拓

  • 2020年9月にアカウント開設

  • 撮り下ろして工数をかけるより、試合映像から切り出したプレー映像などで投稿数を増やす方針

  • 打席数を増やし拡散される確率を上げる

  • とにかく尺を短くする

  • 直感的なわかりやすさを重視し、コンパクトに無駄を削ぎ落とす

関連動画やチャネルページを意識してストック重視の考えで運用したYouTubeと、各動画単位での拡散確率を上げるフロー重視の考えで運用したTikTok。

運用前から仮説を立てていたことではありますが、改めてTikTokとバスケは極めて相性が良いと気づきました。バスケは他のスポーツと比べて攻守の切り替えが早くたくさん点が入り、さらにダンクや3ポイントシュートなどすごさが分かりやすい派手なプレーが多いため、1試合から数多くのハイライト動画を作ることができるからです。

■LINEで潜在ファンをプールする

LINE公式アカウントの目的は、クラブを認知した方に来場を促す。一度、来場くださった方の再来場を促す。

  • ブロックされないことを最重視

  • 登録者にとって嬉しい情報に絞って発信

  • 月ごとの配信回数に制限を設けて運用

■LINEを活用したリアルイベントの効果検証

  • 参加者にLINE登録を促す

  • LINE登録数をイベントの効果検証として参照

  • 後日、LINEを通じてで来場を促す

■Twitterとインスタグラム

  • Twitterは、主に既存のファン向けにリアルタイム情報を届けるメディアとの位置づけ

  • インスタのストーリーも同様の役割

  • インスタフィードは、拡散目的ではなく、ハッシュタグ検索等、検索時の受け皿との位置づけ

  • Twitterとインスタはファン向けと定義。サンダースを知っている前提で、熱狂度を高めていくメディア

■オンラインサロンでファンコミュニティーを形成

  • ファンの熱狂度を上げていく上で、コミュニティーを形成することは有効

  • 選手やスタッフを含めた相互コミュニケーションが取れる環境

  • 2020年7月に月額3,000円のオンラインサロン開設

  • インタラクティブな交流をコアバリューとしたサービス設計

  • 会員を「住人」と名付け、サロン内で選手と住人が交流を図る

■ファンコミュニティーの3つの狙い

  • 選手とファンのインタラクティブな交流

  • ファン同士の交流

  • チームの日常に入り込んでもらう

チームとファンの皆さんで優勝を目指していくことがプロスポーツの醍醐味ですが、今までその一部しか提供できていないのではということです。優勝を目指す為には、コート上での戦いだけがすべてではありません。日々、どんな練習をするか、どういう食事を取っているか、どんな風にコミュニケーションを取ってチームビルディングしていくかといった、チームの日常のひとつひとつが優勝に向けて重要なものです。

■インタビューを通じた改善

  • 他チームとの対戦するプロスポーツゆえに、競技の戦略に関わる部分は外部に出せない

  • 従って、競技面を深堀りするコンテンツを期待して入会したファンは離脱

  • 選手と一緒に試合のハイライト映像を見ながら質問できる企画は、ユーザーの声を反映して実現

  • 当初、Facebookグループで立ち上げたが、実名登録が不要な専門プラットフォームに移行

■ターゲット毎にコンテンツを出し分ける

エンタメは好きになればなるほど、コアコンテンツではない裏側や世界観が気になるようになります。川崎ブレイブサンダースで言うと、バスケだけではなく選手のパーソナルな好みや選手同士の関係性、普段の施設環境など、より裏側を知りたくなります。

ただ、そういった情報はクラブを認知したばかりの状況で伝えられても興味を持ちづらい。

最初はコアコンテンツであるバスケを絡めて興味を持っていただくなど、段階を追ってコンテンツを出し分ける必要があるのです。

例えば川崎ブレーブサンダースの場合、TikTokは短尺ゆえにプレー面での訴求が効果的ですが、YouTubeは長尺なので企画系動画やハウツー動画、ドキュメンタリーなどの選手の人柄も伝わる動画を投稿しています。

LINEはブロックされないように有用な内容のみに絞り、Twitterやインスストーリーでは即時性のある情報を多投します。

オンラインサロンでは選手のパーソナルな部分やプレーの裏側など、選手を好きだからこそ価値がある、逆に言うと選手を好きでない方には興味がないであろう領域に踏み込んでコミュニケーションしています。

■プラットフォーム同士の相乗効果

さらにYouTubeとTikTok間ではユーザーに行き来していただくことを狙いました。TikTok動画をYouTubeショートに投稿するのとは逆に、YouTubeの動画を見やすいように短く切り抜いてTikTokで投稿したのです。

TikTokでその切り抜き動画を見て、続きを気になった人がYouTubeでフル尺の動画を見るなど、プラットフォーム間でのユーザーの行き来が生じます。それにより、認知から興味へファンへの階段を登っていただくことができました。

■兼務をベースとした機動的な布陣

プロバスケクラブは、ヒトもカネも足りません。各デジタル施策において専任スタッフはおらず、他の業務と兼任する形で各施策を担当してもらっています。

オンラインサロンを手掛けているメンバーはチケットの販売や他の集客施設も兼務していますし、LINEを担当しているメンバーはイベントやゲスト系の業務を兼務しています。

Twitter、インスタグラムはより即時性が必要なので、チームに帯同している広報メンバーが運用しています。さらにオンラインサロンの写真はチームマネジャーや通訳に撮影してもらうなど、コンテンツの用意は全社的な協力を得て取り組んでいます。

■最終目標は「ファンをつくる」こと

最も重要なのは各施策を全体戦略の中で、どういう目的で、どういう役割として活用するかを決めることです。

あくまでデータ活用やデジタル施策は手段です。「ファンをつくる」という前提の目的を明確にして、そのためにどういう役割を担うのかを視座を上げて判断すべきだと考えています。

以上。今回の書籍は、とにかく有益な実例が満載なので、私の余計な解説は省き、私が読書中にハイライトした部分を再構成して紹介させて頂きました。



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