メタバース、マーク・ザッカーバーグの思惑通りには進まないのでは?
マーク・ザッカーバーグのSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)登壇は、どうやら開催直前にアナウンスされた模様。Into the Metaverse 「メタバースの世界へようこそ」と題する対談が実施された。ホストはシャーク・タンク(米国版マネーの虎)で有名なデイモンド・ジョン氏。
ザッカーバーグ氏は、メタバースは「インターネットの次の章」。ソーシャル・エクスペリエンスにおける聖杯(Holy Grail)であると語りました。
ソーシャルネットワークの進化系がメタバースであると言うのがザッカーバーグ氏の見立てであり、社名を Facebook から Meta へと変更したのは、その決意表明であると考えられます。
私が興味深いと思ったのが、ロブロックス等のオンラインゲームは「真のメタバーズではない」という発言。
これは先行して広範な支持を得ているフォートナイトやロブロックスに対して「新たな価値を提供する」という決意表明。逆に言うと、それだけ脅威に感じ、焦りを感じていると解釈しました。
若手を中心としたユーザーがロブロックス内でアバターに投資し、ゲームを通じて交流(ソーシャライジング)を行う。そこで意気投合した仲間とロブロックス内で開催されるコンサートに参加する。
ロブロックス内で様々なイベントに参加したり、活動を行う際にロブックスと呼ばれる通貨が使われる。それが、仮想通貨的な役割を果たし、実際に仮想通貨と交換も可能。
プレイヤーによっては、ロブロックス内で過ごす時間の方が、現実世界で過ごす時間より長くなるということが起きている。必然、仮想空間での生活がメインとなる為、そこでアバターが着用する衣装が大切となる。そこに需要が生じ、アパレルメーカーが仮想空間に進出する。
例えば、「The Winter Escape」はラルフローレンがロブロックス上に公開したゲーム。友だちとアイススケートをしたり、ラルフローレンのウェアを購入したりができるというもの。
この様に、ゲームプラットフォームにおいて既に経済圏が出来つつある。一方、Meta(旧facebook)がどの様にメタバースを価値化しようとしているのか、今一つ見えて来ません。今回の対談を見る限り、VR・ARと言ったテクノロジーをベースとしたリッチな体験というハード面の差別化が先行。
ザッカーバーグ氏が一例として挙げた「リアルなアイコンタクトを再現する」という事例も、それによりユーザー体験がどう劇的に変わるのか、私にはイメージできませんでした。単純に、そこまでリアルに再現しなくても、十分に楽しめるのではと。
日経クロストレンドの記事で書かれている様に、ザッカーバーグ氏が社外に発信することで、社内の意識を高めることが真の目的だったのかも知れません。
先日、視聴したYPulse主催のウェビナー「Gen Z vs Millennials」では「Z世代はメタバースと共に育っている(Growing up in the metaverse)」との説明がありました。
下記動画でも、グッチ等のメーカーが、ロブロックス内で展開しているイベントの一端を紹介しています。
仮想空間(メタバース)がメインで実生活空間がサブとなる世界と言われても今一つピンと来ませんが、昔の人が「電話は携帯するもの」「音楽はストリーミングで聴くもの」という未来を想像できなかったのと同じかも知れません。
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