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オンラインゲームで貧困を抜け出す人々 果たしてバラ色の未来なのであろうか?
「遊んで稼げる」オンラインゲームで貧困を抜け出す人々。一見、夢の様なタイトルのフォーブズの記事。
舞台はアクシー・インフィニティというベトナムの開発会社が立ち上げたオンラインゲーム。
アクシーと呼ばれるポケモンのようなキャラクターを購入し、対戦させて育成し、ゲーム内通貨である「SLP(Smooth Love Portion)」の獲得をめざすというもの。
プレイを通じて報酬が得られる「Play to Earn」(P2E)と呼ばれるジャンルのゲーム。2種類の独自暗号資産(AXC/SLP)が使われ、NFTマーケットプレイスで売却したり、ゲームをプレイすることで発生するトークンを獲得することが可能。AXSはビットコインやドージコインまたはその他主要暗号資産同様に取引ができ、実際の通貨への換金も可能。
驚くべきは、既に250万人のアクティブユーザーを抱え、内、約半数がフィリピン人ということ。中には、月数千ドルを稼ぎ、貧困から脱出する者が続出と記事は伝えています。
ここまでの話であれば、「ゲームで遊んで、稼げて、貧困から脱出。素晴らしい!」という美談ですが、私が気になったのは以下の部分。
高収入を見込める仕事と考えて参入するプレイヤーはもちろん、プレイヤーに融資する銀行家、プレイヤーを雇用するコミュニティマネージャー、新規プレイヤーにノウハウを教えるコーチ、メタバース内に土地を所有する地主などが登場している。
競争コストが急激に上昇するなか、プレイヤーには金銭的支援が必要になり、裕福なマネージャーが「奨学金」としてこれを提供している。銀行家は、モンスターを販売したり、モンスターのチームを貸し出す代わりに、勝利報酬であるSLPの一部を徴収する形で投機をおこなっている。
こうなると楽しむゲームではなく、資本家に雇われた労働者。かつ、その労働により生み出された価値はゲーム内にしか蓄積されない。娯楽としてのゲームを否定するつもりはないが、こういう形で資本と労働力が投入されるというのは、果たして世の中にとって生産的なのだろうか?
もうひとつ気になったのが、ゲームに参加するには最低3体のアクシーを購入する必要があり、$200程度の初期費用がかかるという点。そして、参加者が増え続けることで、入場料(アクシー代金)が積み上がり、プラットフォームが潤うという構造。
「参加者を増やし続ける必要がある」という点にマルチ商法に似た恐ろしさを感じました。つまり、新規参加者が獲得できなくなり、先行き怪しいぞとなった途端、ゲーム専用のトークン(AXC/SLP)の価値が暴落し、デフォルトの様な状況になるということ。
この記事を読んで、想い出したのが「オールド・スクール・ラン・エスケープ」というオンラインゲームの事例。
こちらもRPG(ロール・プレイング・ゲーム)の一種でゲーム内でゴールドを獲得することで、パワーアップが可能という良くある仕組み。
ある時期から、ゲームを楽しむのではなく、ひたすらドラゴンを倒してゴールドを稼ぐ、ゴールド・ファーミングという行為が目立つ様になった。
そして、2019年の3月に、突如、ゴールド・ファーマー達が一斉に消えた。その理由は、ゴールド・ファーマーの大半はベネズエラ人で、この時期、ベネズエラは国家危機に瀕し、停電が頻発した為。そう、ベネズエラ人がパソコンにアクセスできなくなってしまったんですね。
一説によると、ゴールド・ファーミングに「従事」するベネズエラ人は180万人。自国通貨がハイパーインフレにより脆弱な為、ドルに換金できるゴールド・ファーミングが人気なのだそうだ。
詳しくは、参照元のNPRの記事(英語)をご覧ください。
この2つの事例、一見、「遊んで稼げる」というバラ色の将来に思えますが、結局は、貧困国の安い労働力を資本家が搾取する対象がゲームに変わっただけとも言えそうです。
かつ、若者達がゲームのスキルを磨くことで、将来の経済的な自立に繋がるのか?という視点からも大いに疑問です。
「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えなさい」ではないですが、ゲームを通じてバラ色の未来を作るには、どうすれば良いのか?と一人悶々としながら筆を置かせて頂きます。
【追記(3/22)】
悶々とした先に一筋の光を与える記事を見つけたのでご紹介致します。確かに、ゲームをきっかけにNFTやブロックチェーンに関する知見を深め、それをゲーム以外の形でマネタイズするスキルを養っていく。更には、現実世界のビジネスにも活かしていくという視点はすごく良いと思いました。
YGGはメタバースの世界で公平な競争環境を作るだけでなく、プレイヤーや現実世界を向上させることにも尽力しています。ソーシャルインパクト(社会的な影響力)があることは、YGGの存在意義のひとつです。YGGの創設者であるGabby Dizonは次のようにコメントしました。「ソーシャルインパクトがあるように、私たちはビジネスモデルに組み込んでおり、後付けでそのようにしているわけではありません。私たちは、すでに仮想資産を持っている人や大金を持っている人だけでなく、仮想経済やメタバースにおいて、世界中のすべての人に平等な経済的アクセスを提供したいと考えています。」
もうひとつ感じたのが、フィリピンにしろ、ベネズエラにしろ、自国通貨が脆弱な国民がリスクヘッジとして仮想通貨を保有するという考え。一般庶民が外貨預金やドル口座を持つのは難易度が高いですが、仮想通貨のウォレットであれば取得可能。もちろん、仮想通貨独自のリスクもありますが、ペソやボリバルよりは信用できるということでしょう。
最後に、フィリピンで実際にアクシーがどの様に浸透しているかのドキュメンタリー動画を紹介させて頂きます。
<併せて読む>
すべてのP2Eゲームはポンジスキーム(投資詐欺)という話もあり、果たして一過性の盛り上がりで終わってしまうのか?に関する考察。
Move & Earn という新しいコンセプトを引っ提げ、日本で話題沸騰中のSTEPN。その可能性とリスクに関する考察。
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![マルセロ| 事業プロデューサー](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/110569032/profile_585cc8bcf28b898f1f4842434f22f780.png?width=600&crop=1:1,smart)