
ニコニコ大会議レポ(2010年2月の記事のリライト)。ここにコミュニティマーケティングの原型があった。
私は現在はnoteに移行しましたが、以前は、2008年よりラテン系企画マンの知恵袋というタイトルでアメブロに投稿していました。
先日、たまたま過去記事を読み返す機会があり、色々と示唆深い内容であったのでリライトして再掲します。
当時、本業の方でニコニコ動画さんのプラットフォームを活用し、レシピ動画コンテストを開催したご縁で、ニコニコ大会議というリアルイベントにご招待頂きました。
動画コミュニティのリアルイベントとは、果たしてどんなものであろうと興味があり参加しました。
開演直前にJCBホールに到着し、まず、長蛇の列にびっくり。軽く200人は並んでいる。それも、半分は若い女性。一瞬、ジャニーズ系のイベントに誤って紛れ込んだのではと不安になった。
警備員さんに、ニコニコ大会議であることを確認し、招待客用受付から無事、入場。入口で参加者のお出迎えをされていたニワンゴの杉本社長に伺ったところ、3,000人収容のホールが満席になるとのこと。
開演時間が近づくと、4階まであるホールが満席に。開演前から異様な熱気だ。得も言われぬ一体感が醸し出されている。
開演とともに、演者が続々と紹介される。王族バンド、赤飯、ピコ、サリヤ人、らっぷびと、ポコタ。
うっ、誰も知らない。。。。
会場は既にボルテージが上がり、各演者に対して歓声が沸き起こる。私は、完全にアウェイだ。これは、初めて東京ガールズコレクションにスポンサーとして潜入した際に感じたのと同じ、強烈なアウェイ感。
ところが、演者のショーが始まり、演目が進行していくにつれアウェイ感が薄らぎ、居心地よくすら感じ始めた。東京ガールズコレクションの際は、5分で限界を感じ、15分で退出したのと大違い。
演者が観客に話しかけ、それに観客が全力でリアクションする。観客として来ている芸人さんがスクリーンに映し出され、ステージと掛け合いを展開することで更にボルテージがあがる。
これまで、私が経験してきた公演では、常にステージ上の演者は演じる側、観客は観る側と役割がはっきりと分かれていた。
一方、今、目の前で展開されている光景は、ステージ上、観客席とポジションに関わらず、会場内のすべての人がショーを盛り上げる構成員となり、一体となって熱狂を生み出している。
更に、夏野さんとひろゆきというドワンゴの幹部が自らMCを担当。通常、この規模のイベントではプロのMCをたてるのが一般的であるのに。何より、お二人が楽しそうにMCをしていることも会場の熱気づくりに貢献している。
更に、ステージや観客席の様子が、会場に設置された大スクリーンに映し出される。その映像が、ニコニコ生放送として中継される。
40万人のニコ生視聴者が、リアルタイムでコメントを投下し、会場の3,000人と一体になってイベントを楽しむ。イベントそのものが究極のインタラクティブ&リアルタイムメディアになっている。これからの時代のマーケティングコミュニケーションの原型と出会ったと強烈なインスピレーションを得た。
ヤフオクで同イベントのプレミアムチケットが28,000円で取引されるほど人気のイベントであることを、実際に参加してみて納得した。
今でこそ、イベントのハイブリッド開催やリアルタイムでのコメント交流は当たり前になりましたが、2010年当時においては、極めて先鋭的な取り組みであったと思います。
TwitterやFacebookがぼちぼち浸透し始めた頃で、LINEやZoomは、まだ、存在しない。スカイプはあったけれど、それほどメジャーではなかった時代。
その後、14年前の私が予言した通り、イベントそのものが究極のインタラクティブ&リアルタイムメディアとなり当たり前にマーケティング活用される時代が訪れました。
さとなおさんこと佐藤尚之さんが書籍「ファンベース」で書かれている、ファンイベントの重要性、ファンを特別視しない、社員自ら司会をして一体感を醸成する。これらが、すべて実践されていました。
以下は、2009年12月に聴講したニワンゴ杉本社長の講演録まとめです。ここからも、今の時代に通じる先進性を感じ取れます。
ニコ動以前の動画サービスは、一方向な情報発信インフラである放送インフラ的発想で完成度が高く、つっこみどころがないモノを一方的に発信している。一方、双方向で情報交換が可能な通信インフラを使うなら、もっと、コミュニケーションに力点を置いたサービスがあって良いのではないかというのが、ニコニコ動画の着想の原点。
コメントで荒らされることを危惧する声を聞くが、ほんとうに危惧しなければいけない状態は、コメントが全く付かない無風状態。実際、放送インフラ的発想で作った既成の動画は驚くほどコメントがつかない。好きの反対は、嫌いではなく、無関心。
政治チャンネルが盛り上がっている。政治家は、一井の人々の声が聞ける、対話できる貴重な場として積極活用。野次やディスリというネガティブ側面をポジティブな気づきが上回ると評価。実際、若者における自民党支持率向上にも繋がった。
著作権対策というディフェンシブな考え方から、ライツマネジメントという考え方を導入し著作権の管理でプロフィットを得ていくへと発想転換。
最後に、当時、ジャーナリスト佐々木俊尚さんが出版された「ニコニコ動画が未来を作る」を紹介させて頂きます。
本書は、ニコニコ動画の解説ではなく、ニコニコ動画に辿りつくまでのドワンゴ社の苦闘、栄光、転落の物語。
まともな社会人として通用しない、昼夜オンラインゲームに没頭するゲー廃を集めてソフト開発会社を起業。学生サークルのノリで、毎晩、事務所に寝泊りしながらソフトウェアを開発。
iモードの黎明期に夏野氏と知り合い、携帯ゲームを手がけたのをきっかけに、事業ドメインを携帯ビジネスに大きくシフト。
そこで、着メロを発展させた着ボイスというサービスが大ブレイク。事業で得た収益をテレビCMに投資し、更なる事業拡大に成功。レーベルを通さず、直接アーティストと契約したことで、アーティストに支持され、事業拡大に繋がった。
ところが、その後、レーベルが着うたで反撃。着ボイスは完全に敗北を喫した。その際、起死回生の一発として立ち上がったのがニコニコ動画というストーリーです。
本書で一番印象的なのが、創業者の川上さんが、なぜゲー廃に着目したのか。どんな勝算があったのかという考察。
こいつらは使えるはずだと考えた。常識とはかけ離れた発想だが、ゲームに勝つためには、とにかくロジックを磨かなければならない。
シュミレーションゲームだけではなく、一見、たんなる反射神経だけが必要なように見えるアクションゲームであっても、ゲームの応答性を計算し、インターフェイスをどう利用するのかといった知恵を絞る必要がある。
そうした要素を全部計算して挑むのがゲームだ。
だから、廃人であっても、ゲームをやりこんでいるヘビーゲーマーだったら、きっとそういうロジックの能力があるし、ロジックが極限まで鍛えられているはずだ。
本書を今、読み返すことで逆に色々な気づきが得られるかも知れません。
■動画版は、こちら。
いいなと思ったら応援しよう!
