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WSBK2025 フィリップアイランド公式テスト・不可解な燃料流量制限値

 フィリップアイランドの公式テストが終了し、2025年のWSBKも開幕まであと僅かとなりましたが、この公式テストにおいて、今年から導入される燃料流量制限についてちょっと不可解なことが起きています。テストの内容については追って開幕戦と合わせて取り上げる予定ですが、取り急ぎ公式テストにおいて適用されていた燃料流量制限について考察します。

セッション毎に異なっていた制限値

 開幕直前の公式テストでは午前と午後に1セッションずつ、それぞれ2日間でFP1〜FP4、合計4つの走行セッションがあります。この4つのセッションにおいて、適用された燃料流量の制限値は今年の規定値であるはずの47kg/hではなく、さらにセッション毎それぞれ異なる制限値が適用されていました。これは各セッションのリザルト、2ページ目にあるSession Highlightsに記述があり、月曜午前のFP1では49.1kg/h、午後のFP2では48.7kg/h、火曜午前のFP3では48.9kg/hが適用されていました。火曜午後のFP4はウェットコンディションだったためかリザルトには記述がありませんが、SSPのFP3の途中にライブタイミングの最下段に48.2kg/hとの表示が出ていたので、FP4がドライコンディションであったならこの値が適用されていたでしょう。

 上記の通り、今回の公式テストでは各セッションにおいて47kg/hよりもかなり多目の上限値が適用されていました。これは一体どういうことでしょうか。

参考までに、公式テストのリザルトへのリンクを張っておきます

FP1
https://resources.worldsbk.com/newsdesk/2025/Tests/Australia/Day1/WorldSBK_2025_Phillip%20Island_Free%20Practice%201_Results.pdf

FP2
https://resources.worldsbk.com/newsdesk/2025/Tests/Australia/Day1/WorldSBK_2025_Phillip%20Island_Free%20Practice%202_Results.pdf

FP3
https://resources.worldsbk.com/newsdesk/2025/Tests/Australia/Day2/WorldSBK_2025_Phillip%20Island_Free%20Practice%203_Results.pdf

FP4
https://resources.worldsbk.com/newsdesk/2025/Tests/Australia/Day2/WorldSBK_2025_Phillip%20Island_Free%20Practice%204_Results.pdf


値基準環境条件と燃料流量

 この各セッション毎のリザルトに記載されている燃料流量制限値(Fuel Flow limit)に先立って”Official Ambient”として気温、湿度、気圧が記載されています。以下はFP1の該当部分です。

DWO Phillip Island Ofcial Test, 17-18 February 2025 Results Free Practice 1st Session

2025年のレギュレーションにはこれに関係がありそうなものとして、以下の記述があります。 

2.4.2.2 燃料流量制限
燃料流量の最大上限値は、全メーカーの2025年の開始基準として47 Kg/h*に定義される。
2026年については、メーカーと共有されたロードマップに従い、2025年シーズンの最初の部分を分析した後、2025年7月末までに燃料流量上限が決定される。
* 基準環境条件下
環境条件は、スーパーポール、レース1、スーパーポールレース、レース2のプラクティスの1時間前に公式タイムキーパーによりTVスクリーンにて公式に発表される。

2025 FIM Superbike, Supersport, Supersport 300 & Women’s Circuit Racing
World Championships Regulations

オリジナルのレギュレーション(英文)の該当部分は以下のとおりです

2025 FIM Superbike, Supersport, Supersport 300 & Women’s Circuit Racing
World Championships Regulations

ちょっとわかりにくいのですが、この
” * Under reference ambient conditions ”
は最初の行の”47kg/h*”への注釈です。つまり、この47kg/hという流量は基準環境下においての値であるということです。そして、セッションの1時間前に環境条件が発表されるとあるので、SSPの走行中にライブタイミングの最下段に表示されたのがこの公式発表のようです。

流量制限値は固定ではない(できない)?

 これらのことから考えられるのは、燃料流量の47kg/hはあくまでも基準となる環境における数値であり、この数値に環境に応じた係数を掛けることで実際に適用される流量制限値が決定されるのではないか、ということです。参戦各社は自社車両の空燃比を厳密に管理しており、これまでも気温、湿度、気圧に応じて最適な空燃比になるように燃料マップを調整していたはずです。F1やスーパーGTの燃料流量は完全固定のようですが、これらはターボ加給エンジンなので過給圧の調整で空燃比を合わせることができます。しかし自然吸気のスーパーバイクではそういうわけには行きません。一歩間違えばエンジンを壊しかねないことでもあるので流量を調整せざるを得ないのではないでしょうか。

 これについてはレギュレーションに書かれているわけではないので確証はありません。ただ、2月18日現在FIMのHPでは2025年のレギュレーションが非公開になっています。開幕までにはこれに関する物も含めて何らかの修正が加えられたものが改めて公開されるでしょう。


最後までお読みいただきありがとうございました。ご指摘、ご感想等ございましたらコメントをいただけると幸いです。

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