WSBKカタルニア公式テスト
3月14日と15日の2日間、WSBKの第2戦の行われるカタルニア・サーキットで公式テストが行われました。
今回はこの公式テストについて取り上げたいと思います。
まずは2日間の総合順位を見てみましょう
https://resources.worldsbk.com/newsdesk/2024/Tests/Catalunya/90_Classification_Combined.pdf
このリザルト表はライダー毎ではなく、車両毎に記載されておりでちょっとわかりにくいのでこれをライダー毎に2日間のベストタイムで整理してみました。
今回のテストに参加したのはレギュラーライダーだけではなく、ドゥカティからはピロ、ホンダからは長島、BMWのギュントーリとスミス、カワサキのマリーノ、計5名のテストライダーも参加しました。
総合トップタイムはルーキーのニッコロ・ブレガでした。ブレガと2位のトプラク・ラズガットリオグルは昨年バウティスタが記録した予選レコードを更新しています。この二人が頭一つ抜けており、3位以下は割と接戦で、13位のガーロフまでがTopから1秒以内にひしめいている状態です。
テストでも速く走れればそれに越したことはないのですが、何を目的に走っていたかはチームによって異なります。1発のラップタイムに注力するチームもあればロングランのタイヤライフに注力するチームもあります。テストでいくら速くてもレースでで勝てるとは限りません。とはいえ、各チームの実力を測る目安の一つにはなるでしょう。以下はメーカー毎のテストの内容です。
ドゥカティ
ブレガは特別な事はやっていないと述べており、特に新しい部品を試していると言う話も無いようです。とはいえ、ドゥカティは1番時計のブレガを筆頭にTop10に5人のライダーが入っています。フィリップアイランドとカタルニアという性格の異なるサーキット両方で速く走れるということは、それだけ車両の完成度が高いと言えます。プライベート勢も含めドゥカティの仕上がりの良さが伺えるので今の所は無理に新しい部品を投入する必要も無いのでしょう。
今回のテストから、ピレリはリアのSCX-AタイヤとフロントのSC1-Aタイヤをアップデートしており、カタルニア大会よりこの新しいタイヤが供給されます。イアンノーネとペトルッチは1月に行われたテストで好感触を得ていたタイヤと異なるタイヤになることに不安を抱いていたようですが、杞憂に終わったようです。
一方、昨年のカタルニアの覇者であるアルバロ・バウティスタは11位とドゥカティ勢で唯一Top10に入れませんでした。開幕戦ではバラストを積んだ車両への適応が大きく進んだ印象がありましたが、ここカタルニアは勝手が違うようで、グリップ不足を訴えています。
今回のテストでは、テストライダーのミケーレ・ピロもバウティスタのためにバラストの搭載位置の異なる車両の比較していました。また、今年からの燃料タンク容量削減と40%非化石由来混合燃料への適合作業にも取り組んでいたようです。開幕戦では燃料タンク容量削減の影響が現れにくかったのですが、カタルニアではどうなるかも興味深いところです。
BMW
ドゥカティとは対象的にBMWはテストしなければならない部品には事欠かなかったようで、複数のフロントフォークやスイングアーム、リアサスペンションユニット、リアサスペンションのリンケージ等、足回りを中心に色々な部品をテストしていたようです。BMWは8番手にマイケル・ファン・デル・マークが入りました。彼は昨年、一昨年と怪我に泣かされていたので昨年と比較するのは難しいのですが、やはりBMWはラズガットリオグルの能力に大きく頼っている様に見えます。ワークスの二人がTop10に入っているのは悪くないのですが、ボノボアクションの二人、特にスコット・レディングが18位と大きく遅れているのが気になる所です。
ヤマハ
5位は開幕戦では最悪のレースウィークだったジョナサン・レイでした。ここカタルニアではフィリップアイランドのような問題は発生していなかったようで、ようやく本来の位置に戻ってきた感があります。開幕戦の舞台フィリップアイランドは非常に路面グリップの高いサーキットで、それが今年は路面の再舗装によりさらに高まっていましたが、カタルニアは逆に路面グリップの低いサーキットです。開幕戦でレイを悩ませたリアのチャタリングは路面のグリップが高すぎたから起きていたのかもしれません。チームメイトのアンドレア・ロカテッリが6位に入りましたが、チームメイトを上回れたのもレイにとっては好材料でしょう。
開幕戦のレイの惨状についてはヤマハもかなり責任を感じていたようですが、これで一安心でしょうか。
カワサキ
ポイントリーダーのアレックス・ロウズの9位は物足りない結果だと言えるでしょう。やはり開幕戦が行われたフィリップアイランドがロウズとカワサキと相性が良く、逆にカタルニアはカワサキにとっては鬼門とも言えるコースで過去にもあまり良いリザルトの残せていない、相性の良くないサーキットであることが影響していそうです。言い換えれば、ここで良いリザルトを残せればロウズが今季のタイトル争いに加わる可能性は大きく高まるかもしれません。ロウズはタイヤライフ、特にフロントタイヤについての作業に集中しており、あまり一発のラップタイムにはこだわってはていなかったようです。
バッサーニのZX-10RRへの適応はもうしばらく掛かりそうですが、テストの間元GPライダーのマルコ・メランドリがバッサーニのコーチに付いていました。メランドリは以後いくつかのレースでバッサーニのコーチをやるそうです。
ホンダ
開幕戦で1社取り残されていた感のあったホンダはここでも苦戦しており、最上位のチャビ・ビエルゲが19位、Topのブレガからは1.6秒差でした。初日は両ライダーの車両1台ずつにトラブルが出ていきなりストップしたりとなかなか歯車が噛み合わない印象が否めません。イケル・レクオナはまだ怪我の影響があるようで、初日は午前だけ走り午後は理学療法士に受診しています。2日目は終日走ったようですが31周止まりなのでちょっと不安です。テストでは早くも新しいスイングアームが投入されたようですが、タイムを見る限り劇的な改善があったようには思えません。どうやらフィリップアイランドではグリップの良さで表面化していなかった問題もあるようで、監督のホセ・エスカメスはエンジンブレーキの不足とエンジンのアグレッシブな反応を解決する必要があると述べています。ホンダの改善が進むのはもうしばらく先になりそうです。
次回はWSBKカタルニアの結果について取り上げたいと思います。