WSBK 2024シーズン
WSBK2024年シーズンが終了しました。今回は2024年シーズン全体を振り返ってみたいと思います。併せて、各社がオフシーズンに行えるコンセッションアップデートについても後半で取り上げます。
予想外のシーズン
今シーズンを一言で言い表すならば、やはり「予想外」の一言に尽きるのではないでしょうか。開幕戦フィリップアイランドにおけるアレックス・ロウズのダブルウィンに始まり、ジョナサン・レイの絶不調、ドゥカティ圧倒有利と思われた第4戦ミサノにおけるトプラク・ラズガットリオグルのトリプルウィンからの4大会連続ハットトリックでライバル勢を一気に突き放し、タイトルが決するのも予想外に早まるかと思われた矢先のマニクールにおける転倒、負傷による欠場でタイトル争いは結局最終戦レース1までもつれ込みました。そしてラズガットリオグルのタイトル制覇という、1年前には誰も予想しなかったであろう結末を迎えました。
BMW・望外の初戴冠
2024年最大のサプライズはやはりラズガットリオグル移籍1年目の戴冠でしょう。ラズガットリオグルにとっては2度目ですが、BMWにとってはこれが初のタイトルです。BMWは2012年、今とは異なる体制のワークス参戦をしていた頃にもタイトルに大きく近づいたことがありましたが、翌年以降体制を大幅縮小、ワークス参戦もやめてしまいました。その後2019年、S1000RRのフルモデルチェンジと共にワークス参戦を再開しますが、それから昨年までの勝利は2021年ポルティマオのSPレースのみで、このレースはウェットコンディションでした。
この5年間、ウェットレースで1勝しかできておらず、近年はホンダとマニュファクチャラー最下位を競っていたBMWにヤマハのエースだったラズガットリオグルが移籍することが発表されたのは第4戦を終え、シーズンの1/3を消化したばかりの2023年5月22日のことでした。あの時点でのBMWへの移籍に対する反応はかなり辛辣、あるいはもはや絶望的とも言えるものでした。主な論調は、トプラクはわざわざキャリアを捨てようとしている、といった感じで、あの時点で今年ラズガットリオグルが移籍1年目でタイトルを獲得するなどと予想できた人はいなかったのではないでしょうか。仮にいたとしても、願望を交えずに予想した人はいなかったでしょう。大方の予想は車両の改善が進んだシーズン半ば以降に何レースか優勝できるかもしれないが、1年目でタイトルを獲得するなど夢のまた夢、むしろ1年目は優勝すらできないのではないか、といったところだったのではないでしょうか。
実際のところ、開幕戦フィリップアイランドの時点ではSPレースで3位表彰台に乗っただけで、私もタイトル獲得は無理だろうと思っていましたが、最初に風向きが変わってきたのは第2戦カタルニアのレース1を制したことでしょう。この勝利は2019年にBMWがワークス参戦を再開してから初のドライコンディションの勝利であり、タイトル争いに加わるにも優勝するかしないかは大きな違いです。さらにレース2でドゥカティ勢との接戦を制して優勝したのはタイトルの可能性を思わせるものでした。カタルニアはドゥカティ有利のサーキットですが、そのカタルニアで2つのメインレースを制したのは大きかったと思います。そして、この流れを決定づけたのがミサノでのハットトリックでした。昨年バウティスタが完全制覇していたカタルニアとミサノ、2つのサーキットでドゥカティを上回ったこと、特にドゥカティの地元であるミサノでBMW初のハットトリックを決めたのはあまりにも大きかったと言えます。以前の記事で、今年ラズガットリオグルがタイトルを取ることになればこのミサノでのハットトリックが大きな転換点だったと言われるのではないか、と書きましたがまさにその通りで、これが4大会連続ハットトリックの始まりで、アッセンレース2からのWSBK史上最多連勝新記録の更新へとつながっていきます。この間のラズガットリオグルは昨年のバウティスタを思わせるほどに支配的でした。
最多連勝記録を更新する頃にはもはやラズガットリオグルのタイトル獲得は疑い様のないものとなっており、タイトル確定も時間の問題、予想外に早く決まるのではないかと思われていましたが、マニクールFP2の転倒で連勝記録更新にストップが掛かり、タイトルへの歩みも足踏みを強いられることになります。今にして思えば、ラズガットリオグルが欠場する直前のタイトル争いは昨年ほどではないにせよやや白けムードになりつつあったので、この欠場もタイトル争いにとってはむしろプラスに働いたのではないでしょうか。結果的にタイトル争いは最終戦までもつれ込み、レース1で1年前は誰も予想しなかったであろう自身2度目、BMWにとっては初のタイトルが確定しました。
今季のBMWは昨シーズン終了時に得たスーパーコンセッションパーツを開幕戦から使用しています。これが具体的にどのようなものであったのかは明らかにされていませんが、ラズガットリオグルのタイトル獲得に一役買っていたのは間違いないでしょう。ただ、ラズガットリオグル以外のBMW勢は昨年に比べそこまで大きく前進したようには思えません。ラズガットリオグル以外の勝利は欠場が決まったマニクール雨のレース1でV.D.マークが優勝した以外に無く、終盤になってガーロフやV.D.マークも表彰台に登壇しましたが、シーズン前半は昨年からあまり前進していないようにすら思えました。ともかく、今年のラズガットリオグルのタイトルは車両の進歩以上にラズガットリオグルという傑出したライダーの技量によって成し遂げられたと言わざるを得ません。
とはいえ、ラズガットリオグルにとって、ヤマハからBMWへの変更が無ければ今年のタイトルは無かったと言えます。ドゥカティ勢に打ち勝つにはやはり同等のパワーが必要で、ドゥカティとヤマハにはテクニックでは覆すことができないパワーの差があったのでしょう。
もう一つ、ラズガットリオグルにとって、BMWの方がヤマハよりも適していたと思われる点があります。今年のプレシーズンテストにおいて、BMWに対する初期のインプレッションでラズガットリオグルはBMWのエンジンブレーキを高く評価するコメントを出していました。御存知の通り、ヤマハはグリッド上唯一クロスプレーン直4エンジンを採用しています。クロスプレーン直4は一般的なフラットプレーン直4エンジンに対し、特に高回転域でのアクセルコントロールに長けていますが、反面、エンジンブレーキのスムーズさに欠け、ブレーキングの面ではフラットプレーンに劣るとされています。ラズガットリオグルにとって、エンジンブレーキの特性はヤマハよりもBMWの方が合っているのかもしれません。
ドゥカティ・最強マシンの座は揺るがず
ライダーズタイトルを逃したとは言え、マニュファクチャラーズタイトルはドゥカティが3連覇しました。今季のドゥカティはルーキーのブレガが開幕戦レース1を制した事に始まりバウティスタ、スピネッリ、ペトルッチ、イアンノーネと5名もの優勝者を輩出しています。さらに表彰台を逃したレースは開幕戦SPレースただ一つだけで、他の全てのレースで表彰台に登っています。このことはパニガーレV4Rが相変わらずWSBKのグリッド上で最も優れた車両であることを表しています。また、サテライトチームも含めライダーラインナップも他の追随を許さぬ物がありました。ペトルッチとイアンノーネはかつてのMotoGPドゥカティのワークスライダーで、MotoGPウィナーでもあります。MotoGPクラスでの実績がバウティスタ以上だった二人がサテライトチームにいることがドゥカティ陣営のライダーの層の厚さを物語っています(厳密にはペトルッチの所属するバーニレーシングはファクトリー扱いのチームです)。
最強のマシンにこれだけのライダーを擁しながらもラズガットリオグルにタイトルを奪われてしまった最大の要因は、当然ながらライダー込のパッケージとしてM1000RR+ラズガットリオグルを誰も上回れなかった事に他なりません。ライダーの層の厚さもかえってマイナスに働き、互いにポイントを食い合うことに繋がっていたとも言えます。さらに、バウティスタを狙い撃ちにした総重量制の導入の影響も大きかったでしょう。グリッド上最も体重の軽いバウティスタは5kg〜6kgのバラストを積んでいたと見られています。この追加のバラストによってバウティスタは昨年の理不尽と思えた圧倒的な速さは鳴りを潜めてしまいます。一部のサーキットでは昨年を彷彿とさせる速さをみせたものの、特に予選では中段に沈むことも珍しくなくなりました。周回数の多いレース1・レース2では後半燃料消費が進んでタンクが軽くなると昨年の感覚に近くなるのかペースアップして追い上げるものの、それまでに付けられていた差を取り戻すほどではありませんでした。今のところ、この総重量制を見直そうという話は出ていないので、バウティスタは来年もバラストを積んだ車両を走らせることになります。バウティスタはプレシーズンテストからバラストの搭載位置やセッティングに腐心していましたが、結局ベストな状態には持ち込めていなかったようです。先日のテストでもセッティングの洗い直しをしていたようで、来季バウティスタが復活できるかどうかはこの結果に掛かっているのではないでしょうか。
ブレガは今季2位表彰台に15回も登壇しているのですが、ブレガはこれがSBKクラス1年目、ルーキーの成績としては破格のもので、安定感は抜群でタイトル争いに最後まで残っていたのもブレガでした。ラズガットリオグルと直接対決していた印象がほとんど無く、今ひとつ影が薄い印象が残ったのですが、来年、更に成長すればラズガットリオグルと好勝負を繰り広げるかもしれません。
カワサキ・逆風からの健闘
今年最初のサプライズは開幕戦フィリップアイランドにおけるアレックス・ロウズのダブルウィンだったのではないでしょうか。カワサキは昨年低迷しており、その黄金期の立役者ジョナサン・レイが2年契約を1年残して解除、ヤマハに移籍するという逆風からのスタートで、今年は1勝もできないどころか表彰台すら危ういのではないかと言われていました。ですが、昨年の低迷はカワサキにここ数年に渡り行えなかった大規模なアップデートをもたらすことになりました。これによって昨年よりも大幅に戦闘力が強化されたことは、ロウズにとって大きな武器となっていたでしょう。ロウズ自身も昨年までよりも安定感が増し、ランキングこそ2019年の3位を下回る4位に終わりましたが今年こそが自身のベストシーズンだったとロウズは述べています。
一方、ジョナサン・レイに代わって加入したアクセル・バッサーニは正直言って期待外れのシーズンでした。時折シングルフィニッシュしたものの、大半のレースはポイントを獲得するのがやっとで、特に予選やSPレースで苦戦していた印象があります。ランキングはモトコルサドゥカティで走った昨年の6位から今年は14位と大きく後退しています。ZX-10RRには最後まで馴染めなかった感のあるバッサーニですが、来年乗るビモータbyカワサキKB998とは相性が良さそうで、レース後のテストでは2日目のトップタイム、2日間総合でもブレガから0.3秒落ちの2番手タイムを記録しているので来年は飛躍の年となるかもしれません。
カワサキとしては、2025年からビモータとの共同参戦になることもサプライズの一つだったと言えるでしょう。このことが発表された直後はむしろネガティブな捉え方をする向きが多く、モータースポーツ関連のニュースサイトでも「カワサキのWSBKからの撤退」と報じていましたが、先日のテストを見る限り、これは撤退ではなく、勝つための一つの戦略だと言えるでしょう。カワサキとしてもプセッティをワークスチームに昇格させて参戦を継続しています。
ヤマハ・こんなはずでは・・・
ヤマハは今年、マニュファクチャラーズランキング4位に沈みました。昨年はラズガットリオグルの活躍もあって、マニュファクチャラーズランキングは2位だったので大きな後退です。この低迷の最大の要因は、何と言ってもカワサキから移籍したジョナサン・レイの不振でしょう。プレシーズンテストではそこそこ上位のタイムを記録しており、これならすぐに上位争いに加わりタイトル争いにも絡んでくるのではないかと思われましたが、1月末のポルティマオで行われたテストの頃から様子がおかしくなり、開幕直前のテストではハイサイド転倒を喫しタイムは12位と低迷、迎えた開幕戦は3レース全てノーポイントと最悪のスタートを切ります。その後もなかなか浮上できず、終盤ようやく上位争いに参加するようになるものの終わってみれば10位前後に終わるレースも少なくありませんでした。表彰台もウエットコンディションで行われたドニントンのSPレースのみに終わり、ランキングは昨年の3位からなんと13位に後退してしまいました。この結果はヤマハにとって期待外れという他なかったのではないでしょうか。
ジョナサン・レイ以外のライダーもあまり活躍できたとは言えない状態でした。ロカテッリは2023年、3位6回、2位1回、表彰台に登壇していましたが、今年は2位は2回に増えたものの3位が2回に減少、ランキングも4位から7位に後退しています。GRTヤマハの二人もガードナーが初表彰台を獲得したものの欠場もあってランキングは後退(9位→10位)、エガーターも精彩を欠き長期欠場もあってランキングは大幅に後退しています(8位→16位)。
ヤマハはクレモナからシーズン途中で参戦車両を新型に変更しましたが、これも悪く言えばウイングレットが付いただけで、特に大きな効果があったようには見えません。ヤマハがこれだけ苦戦したのもある意味ラズガットリオグルの残した負の遺産のせいだと言えます。ヤマハはラズガットリオグルが昨年健闘したためコンセッションパーツのオフシーズンのアップデート権が得られませんでした。そのためエンジンのアップデートが制限されており、出力面では最も劣っていました。エンジンの非力さに失望してヤマハからBMWへ移籍したラズガットリオグルが前年活躍していたことで、ヤマハのアップデートが阻害されてしまったのですからなんとも皮肉な話です。
ホンダ・ドン底から這い上がる
ホンダは今年、参戦車両をモデルチェンジしましたが、結果的にこれが裏目に出てしまいした。シーズン前半は明らかに昨年よりも後退していた印象があり、新型に寄せた期待は見事裏切られた格好です。そういう意味では、このホンダの新型の不発も今年の数ある予想外の一つだったと言えるでしょう。それでも、シーズン後半に入ると徐々に成績が向上し始め、シングルフィニッシュも珍しくなくなり、エストリルのレース1ではレクオナが3位表彰台を獲得しています。
とはいえ、昨年も第2戦マンダリカでヴィエルゲが3位表彰台に登壇しています。また、年間通しての獲得ポイントも昨年を下回っており、それだけシーズン前半の低迷が酷かったと言えるでしょう。
ホンダは今年も未勝利に終わり、最後に勝利した2016年セパンレース2から丸8年未勝利です。もし、今年後半の勢いを維持して来年も改善し続けることができれば、未勝利にピリオドを打てるかもしれません。
各メーカーのオフシーズンのコンセッションアップデート可否
最終戦が終了し、各メーカーのコンセッションも確定しています。ここからはメーカー毎にどのようなコンセッション・スーパーコンセッションパーツのアップデートが行えるのかを見ていきたいと思います。なお、当然のことですが、コンセッションに関係なく行えるアップデートはメーカーに関係なく行なえます。
コンセッションポイントの総獲得数
ヘレスレース2、2024年シーズン終了時のコンセッション情報は以下の通りです。
下表はこれを元に各社のコンセッションポイントの総獲得数を集計したものです。
オフシーズンにコンセッションパーツをアップデートできるか否かは、コンセッションポイントの総獲得数が最も多いメーカーに対し165ポイント以上の差があるかどうかで判別されます。コンセッションポイントの総獲得数が最も多いメーカー、今年の場合ドゥカティはアップデートが行えません。それ以外の4社は皆ドゥカティに対し165ポイント以上の差を付けられているのでアップデートが行えます。
参戦各社のコンセッションの適用状況は以下のとおりです。
ライダーズタイトルを獲得したのみならず最多勝利メーカーだったBMWがコンセッションパーツのアップデートが可能なのはこのルールの趣旨から外れているように思えますが、これはレギュレーションに従った結果です。シーズン中のコンセッションはドライコンディションのレース1かレース2で2勝した時点で対象外になりますが、オフシーズンのアップデートについてはこのコンセッションポイント差以外に判定する条件がありません。なのでBMWもアップデートが可能、ということになるのです。これもマニクールの転倒でラズガットリオグルが負傷、2大会丸々欠場したのが響いたでしょう。ラズガットリオグルがあの時転倒していなければ、あるいは欠場に至らなかったならBMWのオフシーズンのアップデート権は得られなかったかもしれません。ただ、BMWは10月30日に2025年型M1000RRを発表しています。報じられている変更内容を見る限り、FIMが新しい設計と認めるに足るだけの変更がエンジンに加えられているようなので、コンセッションポイント差が165に満たなかったとしても新型車両としてカムシャフトは新規開発が行えたでしょう。
モデルチェンジによって参戦車両が新型に変わると、今季使用していたスーパーコンセッションパーツは使えなくなってしまいますが、恐らく新型には今季使用したスーパーコンセッションパーツと同じか、同等の部品・あるいは変更が標準で実装されているのではないでしょうか。
ドゥカティ
コンセッションポイントを最も多く獲得したドゥカティは今年もオフシーズンのコンセッションパーツのアップデートは行えません。ドゥカティは昨年もコンセッションポイント最多獲得メーカーだったので現行パニガーレV4Rを投入して以来3年連続で同じカムシャフトを使うことになります。来年から環境燃料の割合が60%に増えますが、これへの対応に影響があるかもしれません。なお、ドゥカティは再来年、2026年にモデルチェンジを予定しています。
ドゥカティは今年、6台がフル参戦していましたが、この参戦台数の多さとライダーの層の厚さがコンセッションルールでは不利に働いたと言えるでしょう。BMWはラズガットリオグルがライダーズタイトルを獲得したものの残る3人のライダーの成績は今ひとつで、コンセッションポイントの対象となる5位以内には特にシーズン前半はほとんど入れていませんでした。対してドゥカティは表彰台を逃したレースは1つだけで、5位以内の支配率は他社とは比べ物になりません。そのためコンセッションポイントの獲得数があまりにも多くなりすぎてしまい、ライダーズタイトルを獲得したBMWにまでオフシーズンのコンセッションパーツアップデートを許すことになってしまいました。
カワサキ・ビモータbyカワサキ
カワサキは今季、昨シーズン終了時に獲得したスーパーコンセッションパーツに加え、シーズン中に2つのスーパーコンセッションパーツを獲得しています。来年グリッド上1台のみとなるZX-10RRは、これら3つのスーパーコンセッションパーツを来年も引き続き使用することができます。一方、BbKRTが使用するKB998はエンジンは共通でも新規参戦車両であり、ブランドも異なるのでカワサキが獲得したスーパーコンセッションパーツをアフターパーツとして使うことはできません。
カワサキはZX-10RRと共に、KB998のエンジンを強化するためにもこれまでに獲得したスーパーコンセッションパーツを使用していると考えられます。スーパーコンセッションパーツは通常の改造範囲では変更できない部品なので、KB998がこれを使うには市販車の時点で標準で組み込まれている必要があります。通常、スーパーコンセッションパーツが具体的に何であるかは公表されないのですが、KB998の市販車の詳細が明らかになれば、エンジンのZX-10RRからの変更点が3つのスーパーコンセッションパーツのいずれかだということになります。市販バージョンのKB998は11月のミラノショー(EICMA)で公開されるようです。ビモータのフェイスブックでは11月5日、現地時間11時45分にビモータブースで2025年のラインナップが発表されることを予告しています。
カワサキはオフシーズンのコンセッションパーツのアップデートが行えるのでカムシャフトも更新することができます。KB998は新規車両なので無条件で新しいカムシャフトを開発できるのですが、エンジンはZX-10RRと同じなのでZX-10RR用と同じ物を使用するのではないでしょうか。
ヤマハ
ヤマハは昨年までは毎戦のように表彰台に登壇できていたのでオフシーズンのコンセッションパーツのアップデート権が無く、何年もの間カムシャフトをアップデートできずにいましたが、今年は一転低迷したので過去にない規模でエンジンのアップデートが行えます。
ヤマハは今季、第8戦マニクール終了以降スーパーコンセッションパーツが獲得可能な状態でした。結局シーズン中には獲得していなかったのですが、オフシーズンのアップデートにこれを使わないとは思えません。今季のヤマハは参戦全5社中最もストレートスピードが劣っていたのでスーパーコンセッションパーツは十中八九、エンジンのアップデートに使用されるでしょう。これと合わせてオフシーズンのコンセッションパーツのアップデート権もあるのでカムシャフトも更新することができます。
ホンダ
ホンダは第3戦以降、スーパーコンセッションパーツを獲得可能な状態でしたが、これをシーズン中には獲得しなかったようです。なのでオフシーズンのアップデートに利用すると思われます。併せてオフシーズンのコンセッションパーツのアップデート権もあるので、カムシャフトも更新することができます。
今年のホンダはモデルチェンジがマイナス方向に作用してしまったようで、シーズン半ばまでは昨年以上に低迷していた感があります。車体が良くないのか、リアのトラクション不足が深刻だったようで、途中、BSBで使用するスイングアームと同じ形状の物を投入するなど改善を図ったものの、完全には解決しなかったようです。それでもシーズン後半以降次第に成績が上昇傾向になり、ポイント獲得がやっとの状態からコンスタントにシングルフィニッシュできるようになっていきました。前述の通り、ホンダはシーズン中にスーパーコンセッションパーツを獲得可能な状態がずっと続いていましたが一度も新規獲得はしておらず、シーズン中の改善は車体のセットアップや電子制御の改善によるものだったようです。
車体に関しては剛性が高すぎた旧型に比べ、かえって剛性を下げすぎたと見られていますが、剛性を高めるための補強を入れるのはコンセッションに関係なく行えます。エンジンに関しても出力面では不足があるようには思えないので、コンセッションに関係の無いアップデートにとどまるかもしれません。
次回は最終戦後ヘレスで行われたテストを取り上げる予定です。
最後までお読みいただきありがとうございました。