沖縄では、柔術技法(投げ技・関節技等)のことを取手(とりて、方言でトゥイティー)と呼ぶ。
さて、真境名安興・ 島倉竜治共著『沖縄一千年史』(大正12年)に「唐手の起源」という節があり、そこに以下の文章がある。
上記の文章は文語で書かれており、内容も専門的なので難しいが真境名等が言いたいことは以下の通りである。
上記の文章では様々な主張が展開されており、中には空手史を研究している人でも初めて聞く説があるだろう。もう少し整理すると、以下の要点が述べられている。
・唐手(空手)の起源は陳元贇が伝えた柔術と同時代、つまり17世紀半ばである。
・しかし、柔術は慶長時代にすでに「トリテ」の名称で流行していた。
・これが事実なら、トリテとはヤワラ(柔術)より歴史の古い呼称であり、慶長時代まで遡る。
・唐手は柔術が薩摩を経由して沖縄に伝来した可能性がある。糸洲安恒もこの説を唱えている。
ちなみに、陳元贇は柔術を伝授したのではなく、ただ中国武術の話を3人に聞かせただけだという説もある。またこの3人も薩摩以外の地域の出身だったとする説がある。
糸洲先生は、いわゆる『糸洲十訓』では、唐手の起源は中国の昭林流と昭霊流が琉球に伝来したものであると述べていた。すると、上記と矛盾するが、真境名等には柔術起源説を語っていたとすると、唐手の起源についていくつかの可能性を考えていたということかもしれない。
いずれにしろ、従来、唐手への日本武術の影響は軽視されてきたが、糸洲先生は一応柔術が起源の可能性も考えていたということである。
出典:
「空手の起源は柔術?」(アメブロ、2016年3月6日)。