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食品リサイクルの課題は?あり過ぎるけど、静脈産業人として考えてみた

皆様こんにちは!
最近唐突に食品リサイクルの課題は!?なんて聞かれたんですけど、意外と自分の中でうまく噛み砕けいないことに気づきました。
そりゃ〜コストとか、分別が〜とかって課題らしい課題は出そうと思えば結構出ると思ったんですが、どの立場(視点)からなのかが結構重要だと思いました。静脈産業の人間として、廃棄物コンサルタントとして色々整理の意味も込めて書いてみました。
食品リサイクルに興味のある人、静脈産業に興味のある方は読んでみてください♪

そもそも食品リサイクルって何!?

改めて食品リサイクルって何!?って思ったので、調べてみました。
食品リサイクルは、我々が食べている食品の製造過程で出る残渣や期限切れ食品などを「飼料」「肥料」「エネルギー化」にして巡回させるものです。
代表的なリサイクル物としては「エコフィード」と言われる、家畜飼料や食品を発酵させてメタンなどを使用した「バイオガス発電」などがあげられます。

食品リサイクル法

食品リサイクル法の趣旨
食品の売れ残りや食べ残しにより、又は食品の製造過程において大量に発生している食品廃棄物について、発生抑制と減量化により最終的に処分される量を減少させるとともに、飼料や肥料等の原材料として再生利用するため、食品関連事業者(製造、流通、外食等)による食品循環資源の再生利用等を促進する。
※農林水産省資料より

食品リサイクル法の要約として
・各食品関連事業者は基本方針の達成に向けて取り組む(再生利用目標の達成、排出抑制)
・年間100t以上の排出事業者は報告義務がある
→不十分だと、勧告、公表、命令がされ、企業イメージのダウン。それに従わない場合は罰金50万円が科せられる
ざっとこんな感じです。


民間業者はなんで食品リサイクルに取り組んでいるの?


民間企業が食品リサイクルを行うモチベーションはとして基本「ブランド」と食品を捨てたくないという「人間倫理感」であると思います。
食品リサイクルに取り組まず、企業イメージを下げたくないのはもちろんのこと、CSRの観点から見ても食品事業者が食品に対して不誠実な取り組みなどはマイナスでしかありません。
最近では、食品リサイクルのループを作り新たな食品を作るブランド化をしている企業もあります。
日本人的な感覚なのかわかりませんが、自分としては食品を捨てるのって結構罪悪感ありますよね...

食品リサイクルにおいての課題は

さてさて本題の課題についてですが、3つの視点で考えてみました。
「排出事業者(食品事業者)」
「処理事業者(食品リサイクル工場、飼料制作側」
「使う側(畜産業者)」の3つです。

排出事業者側
・コスト
・分別の負担(製造業<食品卸売業<食品小売<外食産業)が大きい
・リサイクル施設が足りていない(リサイクルループに構築な土地柄の問題)
・施設があっても、容量がいっぱいで受け入れてもらえない

コスト・分別問題
一番はどこでも話題に上がりますが、コスト問題です。
製造業、食品卸売業、食品小売、外食産業で分けたときに、食品リサイクルが一番進んでいないのが、外食産業です。外食産業が食品廃棄物を出す場合、多くは事業系一般廃棄物として排出していますが、処理料金がリサイクル料金より割安のパターンがほとんどです。リサイクルに回す場合約20%程度処理料金が上がってしまうケースがあります。
一方で、製造業の場合は製造ライン上で不具合があった場合、ラインにある食品が一斉に廃棄になります。量が膨大ですが品質が安定しているため、物によりですが食品リサイクル業者が買い取ってもらえるパターンがあるので、製造業ではあまりコスト問題は発生しません。
分別についてはかなり弊害になっていると思います。特に「食品卸売業、食品小売、外食産業」の3業種はすでにパッケージになっているものは、これらを除去する必要があるため、コストや負担に直に関わってきます。
「分別が多く必要=コスト」と言っていいと思います。
排出事業者側で分別ができれば単純にリサイクルコストを低減できるケースが多いですが、外食産業などはそんな余力がないところが多いので、食リが進んでいない理由の大きな要因です。

処理事業者(食品リサイクル工場、飼料制作側)
・安定した品質の食品残渣の確保(混入物を減らす)
・飼料の品質保証
・飼料の受入先確保

処理事業者側の課題は、食品廃棄物を安定的に入れ続けることです。飼料や肥料を作るための「原料」がないと始まりません。また、品質についても結構シビアです。特に家畜の飼料になる場合は家畜などが病気になるリスクもあるため、品質保証をつけている企業も少なくありません。品質や安全性が担保されなければ、飼料の受入先(畜産業者)も当然購入しませんし、使用することもありません。
衛生問題は食品事業者としては絶対外せない条件です。

使う側(畜産業者)
・トウモロコシなどの価格が変動する(輸入)安い時がある
・豚コレラ 病気に対する問題

リサイクル飼料よりトウモロコシ飼料の方が安い場合、リサイクル飼料を使う大きな理由が失われます。
トウモロコシなどの飼料より「安く経済的」というのが売り文句の一つでもあるため、価格優位性を保つ必要があります。
しかし、2019年に豚コレラが発生した理由にリサイクル飼料が原因と言われています。このため、農林水産相はリサイクル飼料の安全性見直しについて着手を始めており、この見直しがコストに跳ね返ってくるため、飼料化リサイクルの今後に大きく影響してきそうです。

私が考える最大の課題

私が考える食品リサイクルの最大の課題は、「食品ロスの低減と食品リサイクルの関係性が相反」するということです。
基本的に食品リサイクル率を上げるより、食品ロスや排出量を減らすことが本来の目的であり、根本的な解決方法です。
ただ、それらがすぐに解決できないため、その受け皿として食品リサイクルが作られています。
いつか食品廃棄量が食品リサイクルがなりたたない数量になった時、食品リサイクルを生業としてきた企業は衰退し消滅する運命にあります。
なので、食品リサイクルをしてほしい排出企業がいる一方で、食品リサイクル業の会社が積極投資をしているかというとそうではありません。
食品リサイクル率をより高めるために新しい工場などは必須ですが、この相反する関係が投資を鈍らせていると私は考えています。

食品リサイクルの注目企業

いくつか注目している食品リサイクル企業を紹介しておきます。


株式会社日本フードエコロジーセンター
食品リサイクルといえば、この会社と言っても過言ではありません。
日本フードエコロジーセンターでは収集運搬業者と提携して180 か所以上の事業所から約35t/ 日の食品循環資源を受け入れ、約42t/ 日のリキッド発酵飼料を製造して、主に関東近郊の15 戸を超える契約養豚事業者に提供しています。さらに養豚事業者と協力して付加価値のある豚肉を生産し、食品廃棄物を排出した事業者でブランド肉として販売するというシステムを作り上げており、これによってエコフィードを使った「リサイクルループ(循環型社会)」を構築しています。※HPより抜粋
「ジャパンSDGsアワード」最優秀賞や2017年度経営者「環境力」大賞を受賞しており、食品リサイクルで先頭を走る企業の一社です。

ウム・ヴェルト株式会社
埼玉の加須に本社を構え、関東圏に地盤を抱える企業。
ウム・ヴェルトがユニークだと思うのは、7次産業化に取り組んでいるところです。
食品リサイクルをコアとして、自社グループでの農業・養豚・福祉・道の駅の運営を行い、食の一気通貫ビジネスを展開。静脈産業の新しいビジネスモデルを作ったと言える企業です。
直接食品を作り、さらに消費まで持って行けるところは企業の安定性を保てるビジネスですね。
2020年に農林水産省食料産業局長賞を受賞ました。今後の展開にも期待です!

中特ホールディングス
山口を拠点とする会社。ダチョウを使用したリサイクルをしている会社。
ダチョウ!?
って思うかもしれませんが、スーパーなどの食品残渣をダチョウに食べさせて卵を産ませ、その卵から飴やハウスダストに効くケア商品を作っています。
このリサイクルループの発想は流石の一言!

株式会社アルフォ
東京23区の食品リサイクルといえば、この会社と言ってもいいでしょう。
太田区の城南島に2つの工場を保有しており、飼料化及びバイオマス発電を展開しています。
アルフォミールという飼料を販売しています。飼料は直接販売せず、商社に降ろしているのも特色の一つ。

まだまだ注目の企業があるのですが、長くなってしまいましたので今日はここまで。食品リサイクルに興味ある方は上記の企業などはチェックしてみてくださいね!

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