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故郷への思い

18歳で佐賀から東京(神奈川含め)に出てはや40年。
あっという間だった。

残念ながら父は2016年に旅立ったが、2024年の今日、母も健在だし兄もいるので、今でも故郷に帰省することはある。
しかしいつからだろうか。何か居心地が悪いと思うようになり、コロナ以降は実家に泊まらなくなってしまった。
滞在も長くても一泊二日だ。
理由はいくつかあるように思う。

一つ目は私のイメージの中での故郷と現実の故郷が乖離していること。
私の故郷に対するイメージの中には私がそこにいた18歳までのものが色濃く残っている。
季節ごとの鮮やかな風景、空気、音、匂い、そしてそこで一緒に生きた人達、言葉、表情、その時に流行った音楽などなど。
しかし還暦手前になって帰省して見聞きするもの、触れるものが違っていて違和感があるということ。
そんなこと当たり前なのだとわかっているのだが、何かここは私の故郷とちょっと違うという感覚。

二つ目は、実家の特に女性達にもう自分(達)のことであまり負担をかけたくないという思い。
年老いた母は家事手伝いだが段々無理が効かなくなってるし、義理の姉も仕事でクタクタだ。兄もついでに仕事でクタクタ。
そこへ気軽に帰るよーって言われても掃除やら布団干しやら食事の支度やら場合によっては休みの調整やらでもう大変だ。
なので自分と嫁はホテルに泊まり、食事はできるだけ自分がお金を出して近所の美味しそうなレストランや場合によっては温泉旅館などに実家の家族を連れ出して接待するようになった。
飛行機代、レンタカー代、食事代、旅館代、お土産、ご仏前など諸々入れると結構な出費だが、母親達を疲れさせるよりこちらの方がはるかに気が楽で、むしろ嬉しい出費だ。
故郷にお金を落としている感もある。

三つ目は将来への準備なのかもしれない。
いつかそんなに遠くない将来、母親は旅立つだろう。
兄とは歳が近いのでどっちがどっちという感じだが、その前に故郷そのものが大丈夫か?という気もしている。
もう私の通ってた小学校は廃校となりいくつかあった小学校と統合され、昔の中学校のところが小学校なった。高齢化が著しいしどんどん人が減って空き家も増えてきている。寂しいが仕方のないことだ。
そういえばうちの墓はどうするのか。。。
兄夫婦には子供が2人いるが長男は外へ出ておりそこで世帯を持ち、長女はまだ家にいるがそのうちお嫁に行くだろう。
そう、自分にとって帰る場所がそのうち、自分が生きてるうちになくなるかもしれないという思い、そしてそれに対して心が準備を始めている。

実家を継ぐということ

実家を継ぐということはどういうことだろうか。
商売などをやっていたらその事業を継続してほしい顧客や従業員がいるからまだ分かるが、全員勤め人だとしたらそこに居続ける理由とはなんだろうか。
先祖代々の土地、先祖が眠る墓、年老いた親、地域との深い繋がり、色々あるが、私は、もしかしたら自分が家系を途絶えさせてはいけないという思いや最後まで親の面倒をみるという覚悟と誇りのようなものが根底にあるような気がしている。
決してそんな言葉は父親からも兄からも聞いたことはないのだが、私はそう感じる。

実家を離れた者の勝手な希望、現実、そして辿り着いた結論

私達夫婦には子供はいない。でも都会で幸せにやってる。
実家のみんなは幸せだろうか。
私は家系を繋ぐということで貢献はできなかったが、実家を継いだ長男である兄からその先ずっと血が繋がって家が繁栄していってほしいなーという希望を持っている。
もっと言えば、日本という国の隅々まで、全国各地の故郷がこの先ずっと平和で豊かで自然が美しく食べ物が美味しい、そして人が優しい処であって欲しいと思う。
その為に自分ができることは何か?そんなことを考えたりする。

しかし、現実はそんなに薔薇色ではないだろう。
まず少子高齢化からくる人口減少、過疎や限界集落の問題、移民受け入れと古き良き日本の文化の消失などということを考えると現状維持は難しいと思う。(勿論、たとえば古い価値観は無くなり新しくもっと素晴らしいものが生まれる可能性はある。)

その時に実家の人達は何を最優先に考え自分達の生活を組み立てるだろうか?

私は少なくとも自分の母、兄、田舎の家族には、自分達の幸せを最優先に考えてほしいと思う。
それが、例えば先祖代々住んだ地域を離れることになったとしても、そして墓じまいをすることになったとしてもだ。
また子供達も孫も、結婚できなかったり、結婚したとしても子供ができなかったり、結果として、家系が途絶えることになったとしてもそのことを深く背負わないでほしい。
自分達なりに一生懸命生きた結果なのだから。

それなりに歳を取ったからなのか、故郷を思う時、最近そんなことを考えるようになった。

車で少し行った所



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