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作家業、きみに決めた!

 午前6時39分、わたしは雨に歓迎された。

 マンションを出てすぐの屋根のない裏道に出た途端、ザーザーというオノマトペ界の大谷翔平に祝福されたような気がした。季節ハズレの大雨か?いや、今は2023年の皐月である。しかも下旬、「6月6日に雨ザーザー降って来て🎵」とか「雨雨降れ降れ母さんが🎵」などと言った歌が真っ先に頭に浮かぶのだから、日本や日本人というのは雨が多いし、慣れているのだろうと思う。何より、好きなんだよなきっと。その割になんでこんなにみんな傘差すの?答えは簡単、ベタベタして乾きにくいからです!

 早朝だから、空から舞い降りる液体、即ち雨におはようのあいさつをした。小雨だった彼女は、わたしの問いかけにわかり易い笑みを浮かべ、その速度を速めた。純粋で一途な素敵な女性だなと虜になった。いや、ここは「純水」とでもいうべきだっただろうか。不覚。お笑い界の大谷翔平への道は果てしなく険しいな。

 とにかく、私は雨にキスをされたのである。それがたとえフレンチキスの類いであれ、本当に心から望むキスであれ、わたしにはどちらでも良かった。この強い雨の中でもわたしは外に出て、緑茶を1本買いに行き、戻って来たのだ。もし、『早朝買い出し日本代表』があるのなら、満場一致で大将を務めるだけの気品と速さと正確さを有していると、胸を張って言える。だのにないんだから、世知辛い世の中だよね。

 そう思った次の瞬間、傘を差した男女と目が合った。「あー朝帰りでございましたか!結構なことで!」と言いたい気持ちをすんでのところで堪え、わたしは軽く会釈しながら、「おはようございます」ならぬ「おはしゃすしゃしゃち…」みたいな独特な言葉で挨拶を交わした。そうしたら「誰だあれ?うーん…いいや挨拶しなくて。」といった感じで軽くあしらわれた。良いもん!目が合ったから気さくに挨拶しただけだもん!こちとらオノマトペ界の大谷翔平がついとるわ!

 知らない人に反射的に挨拶を交わすこと自体、大分Americanizedされちゃってますよね。そうなの。もうこれね、抜けないの。アメリカにいったのが13歳、帰国したのが18歳。それでもまんだ抜けねぇのよねこれが。不思議でたまらないよね。世界三大、七不思議の一つに数えたいぐらいだよね。でも挨拶すること自体、悪いことじゃないし、なんなら返してくれる紳士やご婦人もいらっしゃる。そう思うと、人生捨てたもんじゃあねぇ〜なぁ!よっ!もとし屋!

「まくらはここまでだ!」と背後から怒鳴り声が聞こえる。本当に伝えたいことは、この先にあるからぜひ注意深く読んで頂きたい。

人生、すべてエンタメである!

ところでさ、知ってた?彼女の名前スコールって言うんだぜ?

歓迎され、祝福され、キスされる人生、捨てたもんじゃあねぇ〜なぁ!

お後がよろしいようで!

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