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落語とモーションアクター

先日、落語に連れて行ってもらいました。
よく現場でご一緒させていただく、尊敬する先輩アクターに誘っていただきまして。

恥ずかしい話、このような仕事をさせてもらっているのに落語というものを生で見るのが人生初めてで。
とても勉強になりましたし、モーションアクターとの共通点もあったので書かせてもらおうかと。


当初その価値が分かってなかったのですが、立川談春さんや柳家花緑さんといった、いきなり最強レベルの方々を見せていただき衝撃を受けました。 とても感動しました。

落語初心者の自分が落語のことを語るなど烏滸がましいにも程があるので、あくまでモーションアクターからの視点での見解です。

たった一人で全て解決させてしまうというところがとても似ているなと。
(実際には達人の方々は、その中でもお客様に合わせて会話するように演じられてるそうですが、今の私ではまだ片鱗も察知できません^^; すげぇ〜)

モーションキャプチャーの撮影でも一人で演じることが多くあります。
汎用モーションなどはいつも一人ですし、主に会話で進めていくカットシーンでも相手が巨大なドラゴンや小人、透明人間なんてことはざらにございますので、その場にいる体(てい)で進行していかなくてはなりません。

なんでしたら複数人でやりとりしてるときでも、実際には目の前にいる方と会話しているわけではなく、その向こうにいるキャラクターを想像して演じてるところもありますので。(ありますよね??ww)


まずスイッチの切り替えの速さに驚きました。
モーションアクターも1日にいくつものキャラクターを演じることはありますが、一つのカットの中で役が変わることはまずありません。
でも落語の師匠方は舞台上で途切れぬまま3人、4人と違ったキャラクターを演じてらっしゃる。
それでいて笑わせるとこ笑わせて、泣かせるとこ泣かせてらっしゃる。
凄いですね〜、頭の中がどうなっているのかわかりませんww


次に動きがとっても特徴的で面白いです。
それぞれのキャラクターにわかりやすいポーズや仕草、リズムなどが用意されていて、それを器用に小気味よく魅せてくださいます。以前このnoteでもポーズについて書かせてもらいましたが、落語は我々よりも素早く切り替える必要があるんだな〜と舌を巻きました。

ポーズの作り方について
https://note.com/motionactor/n/n7e0fcc3daedd


さらに衝撃だったのが目線で…もしかしたらこれは勘繰りすぎなのかもしれませんが。

落語って、目線を左右に入れ替えながら複数人の会話シーンなんかを演じられてるじゃないですか?
そのときの目線が直前に自分が演じた体勢に、反応してるように見えたところがいくつもありまして。
上下だけならまだしも(直前に体を起こして見下ろすようにした後、答える側は見上げている、など)、左右のちょっとした体制の変化までも目で追いかけてるように自分には見えました。

というのも、モーションキャプチャーの撮影でも、人数が足りてないときなんかは両方を演じることもよくあるのです。
アクションで例に出すと、1対5の戦いをするのに3人しかプレイヤーがいない。
そうすると、1の方は先に全ての動きをやっておいて、2人は同時に絡めるけれども、後の残りの3人は借りておいて、次のカットで先ほどに1の方に合わせてやられるとか。

そうすると、さっき自分はこの方向に殴ったので、つまりこの方向にやられて…など、先程の自分の動きを脳内再生をして合わせていく。そんな演技をする機会もあります。 
もし左右反対だったりしたら後の編集ではどうにもならないので、大変なご迷惑をかけてしまいます。

そういうことがありますので、我々も目線には非常に気を配っておりまして。
だからこそ思ったのですが、左右に目線を入れ替えて(おそらく頭の中では270度?くらい反転してるはず?)るのに、瞬間的に反応している様に見えて…。

「あ、これ脳内で映像流れてんだ!!」

って思いました。凄いですね落語…気の遠くなるような稽古をされてきてるのが、初心者ながらちょっとだけ感じることが出来ました。


最近はハリウッド映画のメイキングなんかを見ても、役者さんがグリーンバックの前で、宙に向かって話しかけたり演技したりしてるじゃないですか??
日本はもうず〜っと昔から、最新のテクノロジーよりも早いリズムで、同じようなことを積み上げてきたのだと思うと、なんだか誇らさを感じました。




見終わった後に先輩が教えてくれたのですが、立川談春さんの言葉に

「感情は最後の一絞り」

というのがあるそうです。

…あかん…カッコ良すぎる!!ww

感情に引っ張られることなく、個性がでないよう稽古して稽古してし尽くして。
その上で、型を突破する最後の一絞りだけを感情に委ねる…泣けます。

感情先行ではなく計算先行で、でも最後の部分は人であるところを信じる。

比べるべくもありませんが、私が演技するときも、ときにコントロールが難しく、バランスを崩してり動きが緩くなったりと、乾坤一擲絞り尽くしてもどうしてもうまくいかないときがありあます。

そんなとき、修正プランも出来ていないのに気持ちとテンションだけでとりあえずやってしまうことがあります。
そしてそれがなぜかうまくいくことが多いのです。
そんなときは、声も感情も色んなものが溢れ出てしまってて、後で恥ずかしくなりますww
再現性もないので褒められたことではありませんけどねww
(もちろん後から確実にになるまで分析します)

それが似てるのかどうかはわかりませんが、私にはめちゃくちゃ刺さりました。

どの世界でも一流は本当に凄いですね。
私がこんなレベルまで到達出来る日が来るんでしょうかね〜精進しなければ。

新たに奮起する出来事でした。
先輩ありがとうございました!

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