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カフェでコーヒーをしばいてたら、隣の卓から情報商材の勧誘話が聞こえてきた。
カフェで隣の卓のスーツ着た人が若い子に「SNSで稼ぎたいならまず炎上しましょう。今なら女性問題がいいです。炎上は無料の広告ですから」みたいなアホみたいな説明してて、若い子は「月50万円稼いで自分らしい生活がしたい。毎日カフェに行きたい」って話しながらなんか契約してた。
— 望月もちぎ (@omoti194) September 6, 2022
最近こんなことがありましたわ。
まぁこういうことって今に始まったことじゃなくて、都市部のチェーンの格安系コーヒーショップでは珍しくない景色かもしれない。あたいも以前から某所のベローチェの前を通った時にたまに見かけていた。その時から「あれって何を売ってるんだろうな」って気にはなってた。
この手の光景はいつだって図式が決まっている。まずスーツを着た人間が一人(もしくは多くても二人)と、向かい合うように私服の若者か中年が一人でいて、決まって資料が入った薄いファイルと、MacBookではないノートパソコンまでがセットだ。最近はiPadを一つで資料とプレゼンを兼ねていることも多いかもしれない。
そこまで揃えば十中八九、何らかの勧誘だと思って間違いないだろう。たまに派遣会社の登録説明だったりするけど、それも自社オフィスじゃなく街中のカフェでやってる時点で怪しいやりとりだと思っていいだろうね。
ただ、話し合っている雰囲気は思ったよりフラットで明るいものが多い。日常的な軽い打ち合わせや、大学OBとの面談のようでもあるので、一見何の変哲の無いビジネスシーンにも見える。でも決してそうではないんだろうな〜ということがうっすらと伝わってくるような、軽薄さというか異質さがある。社会経験の無い就活生だけで日本経済を分かり切った口調で語っているような、妙な浮き方と言ってもいい。
つい最近になってようやくあたいもその現場に居合わせてしまった。
某有名大学近くの格安カフェ。席数も多く、利用者には若者もビジネスマンも多い。ただ、基本的にはスーツの人間はスーツの人間同士で、私服の人間は私服の人間同士で席についていることが多いように見受けられた。ちなみにあたいが利用していたテーブルに何故か知らないおじいさんが相席してこようとしたけど、あたいがびっくりしたら向こうもびっくりしてどっかに行った。
座ってすぐに隣のテーブルーー感染予防で立てられた視認性の悪いクリーム色のパーテーションの先では「ライター」や「フリーランス」「インフルエンサー」といった単語が繰り広げられているのが聞こえてきたので、馴染みが深いワードのせいか、つい耳を傾けてしまった。会話は時間にして30分ほどだったと思う。ずっとハキハキと営業トークをしている一方の独壇場だった。声のトーンや話ぶり的にも情報商材かなんらかの勧誘といったことはすぐに分かった。
ちらりとそちらに目をみやると、まだ若いスーツを着た人間が、さらに若い私服の人間となんかよく分からん契約を取り付け、最終的にはずっと見知った仲のような打ち解け方で会話に花を咲かせていた。
店内にはお客の数も多く、ほどほどに騒がしかったので、話に熱が出てくるほど声のトーンが大きくなって、あたいの耳にも正確に聞こえてきた。どうやらSNSで勝ち抜く秘訣とやらと、ビジネスで稼いだお金で何がしたいかなどの夢物語をしているようだった。不思議なことにどこかお互いに満足した様子で、共にほっとしたような顔をしていた。契約が済んだからほっとしているのだろうか、それとも契約した先の将来像や未来の明るさに希望を抱いて、そんな風に目をキラキラとさせているのだろうか。
この時あたいが目の当たりにした内容は、昔から噂で聞いていた大学構内での宗教勧誘や政治組織への引き込みの目撃談や、ネットで語られている詐欺被害者の体験談の通りだったので、みんなが想像するものとほとんど同じだと思ってもらっていいだろう。違うのは売られている商材の名前と、その時代ならではのワードくらいで、大概「稼げる」「人の役に立てる」「救われる」「厳しい社会を生き抜ける」ということが目的とされた、あの胡散臭いなにかだ。
いわゆる情報商材やマルチ商法・ネットワークビジネスなど、あまり大手を振っては認められていないようなものの営業と勧誘の内容なんて、昔からどこの場所であっても、どんな商材であっても内容にはあまり変わりが無い。だから周知も注意喚起もされ続けている。なのに契約する人がまだいるので、これだけ怪しいと言われているオレオレ詐欺が未だに撲滅されていない現実が改めて実感できた。
きっと詐欺や勧誘の手法が変わらないのではなく、《詐欺を受け入れてしまう心理》というーー人の心理の根源的なものが、いつの時代にも変わらず一定数の人間に備わっているのだろう。
また、こういった情報商材などの勧誘や営業を実際に見て気づいたことがある。
あたいが思うに、あれらは《詐欺師と被害者》という単純明快な関係性じゃなく、詐欺師自身も何らかの大元の母体に信奉する(あるいは利用されている)信者なのだ。
だから彼ら自身も商材などを本当に心からの善意で紹介していたりする。あるいは自身の利益ーーつまり母体の役に立ちたいという忠誠心と奉公精神を持っていて、自身を詐欺師と思っておらず、他人の役に立ちながら自身も満たされるというwin-win思考を持った宣教師に近いのかもしれない。
またそれとは別に、自分こそが有能な詐欺師だと思い込んでいる人間もいたりするだろう。その場合、「ただ金銭という報酬を得たい」といった利己的な思惑のみで突き動かされていて、顧客のことを《ノルマを達成するための糧》だと見なし、自身を《完璧な営業マン》だと思っているかもしれない。でもどう見積もってもその実態は詐欺師の手先、あるいは尻尾切りのための末端なんだと思うけれど。
ただどちらにしても、おそらく大元の母体としては、実際に勧誘する人間にはそういった《善意なる紹介者》という役柄や役目に没頭させることで、罪悪感や自身の扱う商材に対する深い考慮を避けさせているような狙いがあるんじゃないかと思った。
だから、営業する側(紹介者)にはスーツの着用を、そして相手にはラフな私服で訪れるように指定もしているのかもしれない。そういう見て分かりやすい役割や衣装は、使命感や《ちゃんとしたことをちゃんとやってる感》というものを生み出してくれる。自身を有能な営業マンだと思えるようにラッピングしてあげているのだ。それが営業実行部隊の良心の呵責を軽減させ、手軽に兵隊化できて、母体のビジネスの裾の尾を広げることに寄与しているのかもしれないね。
また、実行部隊の詐欺師同様、商材を売りつけられている被害者側も自分が被害者だとはつゆほども知らないーーいや、そういう懸念があっても、「詐欺は世の中に存在するけど、これは詐欺じゃない」といった風に巧みに誘導されているか、あるいはそういう思考に至らないほど、はなから追い詰めらている人間なのかもしれない。
例えば就活がうまくいっていない焦りや、学歴や職歴や資格など分かりやすい指標を持たず、周りとの競争にも能力や生まれの時点から遅れをとっている。正規の競争では勝ち目が無い。それでも「自分は何者かになる・何者かになれるはず」という強迫観念と根拠の無い自信から、努力の要らない(あるいは決断や金銭が要求されることで努力してるふりができる)ショートカット的な方法で他人を出し抜くことでしか活路を見出せなくなったーーそういう追い詰められた人間の焦燥感があるのかもしれない。
それが怪しくも甘い汁というものに引き寄せられる原因になっているのであれば、それをおバカだとか咎めるには心が痛む。あたいにはそんな人たちが泣きっ面に蜂の被害者だなぁと思えてしまう。病気の人や貧乏な人や孤独の人に、不安を煽ってからカルトを与えて、逃げ道をふさぐようなシチュエーションと似通ってると思うのよね。強者から一気に大量の富を奪うより、多くの弱者から搾り取りやすいものを搾り取った方が、トータルの利益は多くなることを、詐欺師はよく知っているのだ。
ちなみにあたいが働いてきたゲイ風俗やゲイバーの業界にも「今さら他の仕事なんてできないよ」と不安と閉塞感を煽って、逃さないように従業員を飼い慣らす店はある。「ゲイとセックスワーカーと水商売は、世間一般には受け入れられていない社会の汚点的な存在」だと唆すだけで、簡単に《ゆるい絶望感の手綱》が完成ってわけ。いや無いはずの透明の柵を立てているという表現の方が適切かもしれない。学習性無気力の利用なのだから。
多分、若い頃のあたいもそんな風に煽られてたら、じわじわと挫折して、どっかで燻り続けたかもしれないね。あたいも弱い人間だからわかる。
また、ここまで情報商材やネットワークビジネスというものが加害者も被害者も全て大元の手中の駒でしかないような取り上げ方をしてしまったので、ややもすれば両者を無責任に断罪して「哀れな人たち。救いのない人間」というような非難しているような書き振りに見えてしまっているかもしれない。
そういう単純な切り捨てこそ、被害者救済を許さず、被害者たちの孤立化・分断を許してしまう。それこそ詐欺師集団のような賢しい人たちの思う壺となってしまうので、あたいにそういう意図は無いことはここで表明しておきたい。
また被害者をただ馬鹿にしてる人間は、詐欺師からすればターゲットにしやすい人間だと見做されていることはここで注意しておきたい。人を馬鹿にする人間は、自分のことを馬鹿だと思っていないので操りやすいのだ。
また、これだけ批判的に書いているものの、あたいは身近に勧誘ビジネスの関係者がいない為、具体的にどういうものが勧誘ビジネスの範疇なのかは分からない。確か情報商材やカルト的な商材だけじゃなく、化粧品や不動産や貴金属もあったはずだし、食材もあった覚えがある。それらを一概に全てを詐欺だと断じてしまうのもやや短絡的な感じがする。きっと有用な情報や商材もあるのだろうし、購入者が満足しているケースも多いとは思う。まぁ満足してても詐欺は詐欺やけど。
ましてやnoteやエッセイなどを出版しているあたいが棚上げして、それらを無思慮に批判した場合、「お前だって教祖みたいに偉そうに信者騙して文章売りつけてるやんw」みたいな大雑把な決めつけで、それら共々揶揄されることも予想できる。あたいはネット民と思考回路が近しいのでよくわかる。
いわゆるnoteなどの有料記事は、以前から有料メルマガやオンラインサロンと同様に「形のないものにお金を払う理解できない媒体」と白眼視されることがあった。
例えばオンラインサロンなどでは、心酔する対象である運営者に入会している人間がほぼ無償で労働力や金銭を提供するケースもあったので、そういう偏見が培われる背景もよくわかるし、一部はあたいも同感ではある。あたいに投げキッスしてもらう権利が20,000円で売られていたらマジでアホやとみんなも思うやろ? え? それは適正価格って? もう……バカ👄チュッ(20,000円)
(余談だけど、ついでに言えばネットゲームやソシャゲ、電子書籍やサブスク・音楽配信などにも同じような声が向けられることはある。電子的な絵やデータにお金を使っても手元に残らないので価値が無い・運営次第で利用できなくなるから信用できないという声だ)
そういう声に対して「あたいは誠心誠意書いてますよ。お金いただくだけの情報や読み物として自信あるも〜ん」と言い返しても、詐欺師も自分が詐欺してますよとは言わないので価値の証明にはならないし、なんならますます胡散臭くなるし、そもそも価値を感じない人には響かないだろう。
だからと言って「購入者が満足しているから批判は受け付けない」と跳ね除けたら、それは「霊感商法や怪しい健康法も本人が満足してるなら、周りが仲裁したり、止めに入るべきじゃない」という声を支持してるようにもなる。
あたい自信が情報商材ビジネスに対する違和感を覚えるものの、あたいも同じようにネットを媒体に物を書いてお金をいただいている以上、一度線引きを再考する必要があると思った。
「何に価値を感じて、何が無価値に思える」という個人の価値観の範疇を超えて批判されるべきものーー何が紛糾して無くすべきビジネスなのか。そもそもそれはビジネスなのか。
ただ、一つ言えるのは、今回目撃した情報商材の勧誘をビジネスと見なすのならば、他のビジネスと同様に社会秩序の責任からも逃れず批判されるべきだと思った。あたい自身がSNSという形ないもので仕事をする以上、その価値を自身の仕事ぶりで証明する責任があるように。
というわけでここから今回目撃したケースを例に、あたいなりの考えを書き残していく。
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天然温泉旅館「もちぎの湯」
ここはあなたの宿であり、別荘であり、療養地。 あたいが毎月4本以上の文章を温泉のようにドバドバと湧かせて、かけながす。 内容はさまざまな思…
今ならあたいの投げキッス付きよ👄