ポリシーミックス、ヘリコプターマネー、政府紙幣発行論の違い
バブル崩壊以降の不況の中で、これまで数多くの財政政策論が提唱されてきました。
今回、それらの財政政策論のうち、三種類を分類&ピックアップして、その相違点を整理しながら解説したいと思います。
三つというのは、ポリシーミックス(金融政策+財政政策)、ヘリコプターマネー、政府紙幣発行論です。
これらの財政政策論は、財政拡張が前提であるものもあれば、必ずしも財政拡張が必要ではないものもあり、中央銀行の応分(同額)のマネタリーベースが行われるものもあれば、それが必要なわけではないものもあり……といった具合に、細かいが重要な違いがいくつもあります。
それに従い、効果経路も(おおまかには総需要拡張が共通目的であるとはいえ)微妙に変わってくるのです。このような分かりにくいポイントを取りほぐしていきます。
以下のタイトル構成で解説していきます。
①ポリシーミックス(金融政策+財政政策)
②ヘリコプターマネー
③政府紙幣発行論
④各政策論の検討
関心あれば、是非ご購読お願いします。
①ポリシーミックス(金融政策+財政政策)
ポリシーミックスは、その字面通り、金融政策と財政政策の組み合わせです。「金融政策を伴う財政政策」と言い換えても大過はありません。
この場合、『財政出動分のマネタリーベース供給』をするというわけではないことに注意しておいてください。
「お金」「通貨」はどこからやってくるのか?でも解説しましたが、国債発行支出による信用創造で100億円のマネーサプライ(形式は銀行預金)が増えたとしても、100億円のマネタリーベースが必要になるわけではありません。マネーサプライの増加に合わせて、現金引出需要は一定程度増加し、銀行間決済需要や納税需要なども増加することにはなりますが、それはマネーサプライ増加分(100億円)よりはるかに小さいのが普通です。
したがって、マネーサプライ増加によって事後的に増えた(しかもマネーサプライ増加量よりも相対的に小さい)マネタリーベース需要分だけ、金融緩和を行えばよいことになります。(このときは、中央銀行の存在意義と機能限界にて解説した通り、中央銀行が設定する政策金利に応じて、銀行保有国債購入によるマネタリーベース追加が行われることになります。)
長ったらしくまとめれば、ポリシーミックスとは、財政政策と、それを相殺しない程度の(金利が上がらないように調節するという前提を持つ)金融政策の組み合わせということになるでしょう。
ヘリコプターマネーや政府通貨発行論との違いとしては、ポリシーミックスでは財政政策、財政拡張が必須である一方、ヘリコプターマネーや政府通貨発行論では必ずしも財政拡張が必須ではない、というところです。
また、ヘリコプターマネーや政府通貨発行論では、マネタリーベースの追加に主眼が置かれていますが、ポリシーミックスではあくまで財政政策(拡張)による直接的総需要追加に主眼が置かれています。
主に上記二つが重要な相違点となるでしょう。
②ヘリコプターマネー
翻って、ヘリコプターマネーはどんな政策なのでしょうか?
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