「お金」「通貨」はどこからやってくるのか?
ATMから現金を引き出して店頭で物を買う、通販を預金振り込みで利用する、クレジットカードで買い物をして後日口座から引き落とされる……。
私たちはこういった様々な形で、「お金」「通貨」を購買に利用しています。
しかし、我々が利用しているお金(貨幣、money)は、元々はどこからやってきたのでしょうか?
「中央銀行がすべて作ったのだ」あるいは「中央銀行がすべての源である」という主張もありますが、実はそれは大いなる誤解です。
(こうした誤解は、「中央銀行が貨幣を完全にコントロールできる」という誤った結論を導きがちです。)
貨幣がどこからやってくるか、そしてどこへ消えていくのか、……「貨幣のサイクル」について、以下のような章立てで解説していきたいと思います。
①中央銀行が作る貨幣(通貨)の起源と行く末
②市中銀行が作る貨幣の起源と行く末
③中央銀行貨幣(通貨)と市中銀行貨幣の関係
関心のある方は、是非ご購読願いたいと思います。
※※※このコラムは、望月夜の経済学・経済論 第一巻(11記事 ¥2800)、望月夜の貨幣論まとめ(5記事 ¥1000)にも収録されています。※※※
①中央銀行が作る貨幣(通貨)の起源と行く末
現在、中央銀行が市中に中央銀行貨幣(通貨、currency)を供給する方法は、いわゆる買いオペになります。現代においては、購入資産のほとんどは国債(政府証券)で、一部が民間証券、海外証券、金などとなっています。
ここで注意すべきなのは、中央銀行が発行する通貨が、なぜそうした証券等を購入することができるのか、ということです。
中央銀行貨幣(通貨)は、電子データ(中央銀行準備預金)や紙切れ(中央銀行券)に過ぎません。それ自体の実物的な価値はないわけです。
これに関しては、様々な議論の混乱がありました。「中央銀行券が出回るという共有意識が、中央銀行券を流通させている」という循環的論理を唱える人や、「『金融を安定化させる』という中央銀行の役割が期待されているからだ」と唱える人などが居て、議論が錯綜していたのです。
この参考リンク内でもすでに疑問への答えは出ているのですが、改めて説明しましょう。
ざっくりと言えば、中央銀行貨幣(通貨)が市中の資産を購入できる理由は、中央銀行貨幣が納税に用いることが出来る唯一の手段であるからです。
実際、歴史的に見ても、日本円の流通を基礎づけたのは地租改正といった金銭徴税制度の整備でした。
参考:地租改正
堅苦しく言えば「中央銀行貨幣(通貨)の流通は、租税という最終需要に基礎づけられている」と言えます。
誤解を恐れずに簡潔に言えば「中央銀行貨幣(通貨)は、最終的には納税に使えるから流通している」というわけです。
(例えば、もし日本政府の納税通貨が円から米ドルに代わるようなことがあれば、日銀の発行した円はほとんど、あるいはまったく市中資産を購入することができなくなるでしょう。)
言い方を変えれば、中央銀行貨幣(通貨)は、政府の『徴税前借』として発行されるわけです。(こうした考え方を租税貨幣論(Tax-driven monetary view)といいます)
最近では「中央銀行の独立性」というのが”ブーム”ですが、それは『行政上の縦割り化が強化される』という意味においての『独立性』であって、中央銀行と財政を本質的に分割することは(上記により)不可能である、ということは念頭に置いておく必要があります。
(中央銀行貨幣(国定通貨、ベースマネー)のイメージ)
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