電子の器

夜のゴミ集積場に、うず高く積まれた電子部品。その頂上に、少年はうずくまっていた。

彼の下には、無残な姿の人間の頭部…否。ドロイドの頭部があった。人工皮膚は剥がされ、頭蓋も破壊され、脳メモリを抜き去られて。

少年は己の首筋からケーブルを伸ばし、脳メモリ接続口に差し込んだ。微弱な電気が流れると、頭部は痙攣したように震えた。

彼は心の中で謝罪し、パルスの流れを読む。…伝わる。物理的にも電子的にも抹消されたはずの想い。この…少女の心が。

それは無念と、怒りと、愛情で構成されていた。少年はその中から、彼女の『親』の顔を見出す。彼女を棄てた男の顔を。

結婚はしたくない。でも子供は欲しい。進化するドロイド技術は、その欲望に答えた。人道的な問題に答えが出ぬままに。

必要な情報を己の脳メモリに保存し、少年はその場を離れた。住所。氏名。容姿。そこまでは分かる。セキュリティ。これは調べねばなるまい。

報いを受けさせるために。

【続く】

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餅辺
それは誇りとなり、乾いた大地に穴を穿ち、泉に創作エネルギーとかが湧く……そんな言い伝えがあります。